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298.ヘンテコ壁の新種魔物

 ダンジョン踏破は順調に進んで、僕らは今、第十二階層にいる。


 キグニルダンジョンは迷宮タイプのダンジョンだから、基本的にはそれほど広い空間というのが存在しない。それにともなって、出現する魔物も小型から中型サイズがほとんどだ。だというのに、僕らの目の前にはとんでもなくデカい何かが鎮座していた。


「また珍妙な魔物だな……」


 レイが呆れたような声で呟く。


 まあ、実際にその通り。珍妙と言うしかないくらい変な魔物だ。通路の幅が4mくらいの場所で遭遇したソイツは、その通路をすっぽりと覆うほどの横幅を誇っている。高さは天井に届くくらい。だからまあ、ほとんど壁みたいなものだ。


 ただ、材質ははっきりと異なる。周囲の壁はゴツゴツとした天然石っぽい見た目だけど、その魔物は表面だけみるとつるんとしていて磨かれた大理石みたいなんだ。だけど、ときおり表面を波打たせて、その波紋をかき分けるように何かが出てくる。出てくる何かは毎回違っていて、人の形をしていたり、動物の形をしていたりとバリエーション豊かだ。


「あれも新しいタイプだよね?」

「少なくとも、僕は聞いたことないな」

「俺もだ」


 ハルファの問いに、僕とローウェルは首を横に振る。あんなおかしな魔物、冒険者ギルドの資料でも見たことがない。


「もちろん、俺もない。新種だろう」


 レイも同意する。キグニルの代官として、ギルドからの情報にも目を通しているレイが言うならきっと間違いない。第十二階層はまだ他の冒険者によって踏破済みの階層だ。もちろん踏破済みだからといって全ての情報が出回るわけではないんだけど、あんな奇妙な魔物が噂にならないはずはないと思う。だからアレはきっと新種だ。


 新種の魔物が発見されるのは、あり得ないことではない。野生の魔物が進化したりで新種になることもあれば、人知れず存在していた魔物が今になって発見されたなんてこともある。とはいえ、本来ならば珍しいことなんだけど。


「またなのね……」


 ミルがうんざりとした様子で首を振る。そう、また、なんだよね。


 第十階層を超えて、そろそろ銀の異形たちによる襲撃があってもおかしくはないんじゃないかと思ってるんだけど、今のところ、それらしき動きはない。むしろ銀に寄生された魔物は、ほとんど見かけなくなった。代わりに遭遇するのが、新種の魔物。一つ前の階層と合わせて、両手の指では足りないくらい遭遇している。これは普通ではあり得ないことなんだ。


 もっとも、僕は経験したことがあるんだけど。神様たちによって作り替えられたダンジョン。そこでは初めてみるヘンテコな魔物たちがたくさんいた。そのときと状況がよく似ている。


『ダンジョンの制御権が少しずつ奪われているせいだな! あの銀のうねうねしたヤツらのいやーな感じがあちこちからするんだ!』


 僕にはわからないけど、シロルが言うには、ダンジョンに漂う気配が変わってきているみたい。それはつまりダンジョンの制御権が、銀勢力に掌握されつつあるってことだ。ガルナも含めて、神様たちが制御権を奪い返そうとしているのに、その力が通用していないってことでもある。


「あんまり良い状況ではなさそうだね。ここまで、異形を見かけてないのが不気味だし……」


 懸念を口にすると、スピラが小さく首を傾げた。


「トルト君の活躍で、力を失ったってことはないのかな?」

「それならば神々がダンジョンの制御権を取り戻していてもおかしくはない。だが、現実は逆だ。ヤツらはまだ力を保っている。銀のヤツらに出会わないのは、俺たちを迎え撃つために戦力を集中させているせいだろう」


 ローウェルがスピラの意見を否定する。スピラも、それに異を唱えることなく頷いた。一応、意見として述べてみただけってことなんだろう。まあ、銀勢力がすでに反抗する力を失っているというのは、流石に楽観的過ぎるよね。


 襲撃から生き延びた冒険者の話によれば、このダンジョンには教団の幹部と思われる数名の人物が関与しているはずだ。だけど、今のところ、ソイツらの姿は見ていない。もっと深層で僕らを待ち受けているんだろう。


「差し詰め、コイツらは時間稼ぎってところかしらね」

「それなら急がないとね」


 ミルとサリィが戦闘態勢に入る。等身大ボディで準備バッチリのプチゴーレムズも武器を構えた。


「まあ、向こうは動かないみたいだし、まずは遠くから攻撃してみようか。アレには……ハルファのショックボイスがいいかな?」

「やってみるね!」


 彼我の距離は20mくらい。普通の魔物なら、こちらを認識した時点で襲いかかってくるんだけど、ヘンテコ壁に動きはない。それならと、ハルファにショックボイスで先制攻撃をしてもらうことにした。


 大きく息を吸い込んで、ハルファが叫ぶ。


「こ~わ~れ~て~!!」


 指向性のある衝撃波だから、ターゲットとの直線上にいなければダメージはない。それでも、はっきりとわかるくらい空気が揺れた。かなり気合いを入れたみたいだね。見えないけど、強力な振動がヘンテコ壁を襲ったはずだ。


「壁がぐちゃぐちゃになってるよ!」


 サリィが杖でヘンテコ壁を指す。言われるまでもなく、僕もそれを見ていた。ヘンテコ壁の表面が激しく波打ち、乱れている。


 そして――波をかき分けるように、何かが出てくる。


――ギャガァァァアアア!!


 ヘンテコ壁から首を出したのは巨大な爬虫類のような生き物。いつか見たような上半身だけ這い出したようなドラゴンがそこにいた。

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