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292.他人のふりしないで

「マズいぞ、トルト! 粘銀種のヤツら、アレを乗っ取るつもりだ! 早く浄化を!」


 レイが焦りの声を上げる。


 だけど、大丈夫、ハニワナイトはパンドラギフトから取りだした特別製だからね。僕の元いた世界の素材で作ってあって、汚れにも強いんだ。


「レイ、見て! ゴーレムが粘銀を弾き飛ばしてるわ!」

「何!?」


 ミルの言葉に、全員の視線が再びハニワナイトに向かった。そちらでは、必死に取りつこうとする銀饅頭たちと、それを引き剥がして踏み潰そうとしているハニワナイトの攻防が繰り広げられている。攻防と言っても、ハニワナイトが圧倒的に優勢だ。銀饅頭の体はハニワナイトに触れる度に焦げ付いたように表面が黒くなる。少しずつだけど浄化されているんだ。


「あれは……いったい?」

「それはね、レイ。ハニワナイトは抗菌仕様なんだ」

「抗菌仕様……?」


 言葉がピンとこなかったのか、みんなが一斉に首を傾げる。だけど、醤油造りとかのときに菌の存在は伝えてあるので、菌を防ぐって意味だよと言えば、何となくは理解してもらえた。


「えっ? それじゃ、銀の敵って菌なの? 全然、ちっちゃくないのに?」


 ハルファが首を傾げる。僕も釣られて首を傾げた。おやぁ?


「そう言われてみれば、菌じゃない……ね?」


 僕の中でいつの間にか、銀の異形はばっちぃものというイメージができていた。なんとなくバイ菌みたいな存在と認識していたけれど、それはあくまでイメージであって、実際には違う。


「じゃあ、なんでハニワナイトは銀の敵を弾いてるの?」

「さぁ……なんでだろ?」

「「「えぇ!?」」」


 素直に答えたら、凄い勢いで驚かれた。レイたちだけじゃなくて、周囲で聞き耳を立てていた冒険者たちからも。


 何でそんな状態かというと、実はもうダンジョン前の戦いは概ね決着がついているからだ。土ゴーレムの出現は完全に止まっていて、そのほとんどが土に還っている。個体の能力は大したことがないので、もうほとんど脅威ではない。ダンジョン内部から補給を受けているせいか親玉の銀饅頭はまだ健在だけど、ハニワナイト相手に有効な手立てを取れず完封されている状態。魔道具による範囲浄化にも晒されているんで、かなり縮んでしまっている。完全に萎んでしまうのは時間の問題だと思う。


 というわけで、僕らには銀の異形が菌か否かを話し合う余裕があった。


「そういえば、トルト君、キノコも菌の仲間だって言ってなかった?」

「ああ、うん。そうだよ」


 スピラがあごに指を当てて言う。確かに言ったね。


 闇魔法のディコンポジションで腐敗をコントロールできると知ったから、菌類を操ることもできるんじゃないかと考えたことがある。菌類といえば、キノコだ。何となく植物的なイメージもあるので、スピラにもキノコ作りについて相談したことがあるんだよね。流石にほいっとできるようなものじゃなかったからまだ実現できてないんだけど、その話は覚えていたみたい。


 ただ、その言葉で話の流れが変わった。


「じゃあ、銀の敵ってキノコってこと?」

『そうなのか!? 焼いたら食べられるのか?』

「駄目だよ! キノコには毒があるものが多いんだから! あんなの食べたら、絶対にお腹壊しちゃうよ」

『大丈夫だぞ、スピラ。毒くらい、トルトが何とかしてくれるぞ!』

「流石にそれは……いや、だが、トルトなら……?」


 何故か、銀の異形を食べるって話になってる!?


 発端はいつも通りシロルなんだけど、ローウェルまでもが真剣に検討してるのがおかしい。決して食べたいと思ってる表情ではないんだけどね。むしろ、絶対に止めなくてはって顔だ。


 いや、僕だって食べようとは思わないよ!

 僕にどういうイメージを抱いているの、まったく!


「あいかわらずのようだな」

「シロルの食いしん坊もね」

「ハルファちゃんが元気そうで良かった」


 騒ぐハルファたちをレイたちが優しげな目で見守ってる。


 優しげ……だよね? ちょっと苦笑いが入ってない? 心なしか、少し距離があるような?


 ふふふ、逃がさないよ。だって、レイたちは仲間だもんね。


「改めてになるけど、レイ、ミル、サリィ、助けに来たよ。無事で良かった」

「ああ、救援感謝する。助かったよ、トルト」

「ううん、気にしないで。だって、僕らは仲間だから。三人も含めて『栄光の階』なんだから!」


 素直な気持ちだ。だけど、レイたちの反応は鈍い。というか、他人のフリをしようとしている……!


「き、気持ちは嬉しいぞ……」

「そうね。でも、私たちは引退しているし……」


 レイとミルは及び腰だ。逃がさないように、がっしりと手を掴んだ。


 いや、握手だよ? 再会の握手。ぶんぶんと手を上下にふると二人は観念したかのように項垂れた。


 えぇ?

 銀の異形をキノコ扱いしたことに引いてるのはわかるけど、そこまでがっくりしなくても!


 僕が困惑していると、サリィが凄く曇った表情でおずおずと申し出た。


「あの……トルト君。私、粘銀種を食べるのはちょっと……」

「食べないよ!」


 思わず突っ込むと、三人の表情はビックリするほど明るくなって、再会を喜んでくれた。どうやら、本気で銀の異形を食べるつもりだと思われていたみたい。流石にちょっと酷くない?


 これ以上、誤解が広がるのは勘弁して欲しいので、銀饅頭はささっと全部浄化した。ああいうデカいのは範囲浄化じゃなく、単体浄化の方が有効みたい。一体につき、二、三度浄化すれば消滅させることができた。また新たに出現するかもしれないけど、ハニワナイトに見張らせておけば問題ないはずだ。



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