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273.僕たちって、もしかして……

「このまま待つか?」

「うーん」


 ローウェルが聞いてくるので、ちょっと考える。


 目の前にあるのは普通の鉄格子。とはいえ、さすがにただの鉄ってことはない。この世界だと、高レベルの人間の力はとんでもないからね。ただの鉄の棒だと素手でぐにゃりとやれちゃったりするんだ。でも、その代わり、魔法加工された金属はとんでもなく硬かったりするけど。きっと、この格子もそういう加工がされているはずだ。


 それでも、脱出しようと思えばできる気がする。ローウェルの【刃通し】なら魔法加工された金属でも斬れちゃうと思う。シャドウリープで鉄格子の向こう側に跳ぶこともできるし、何なら鉄格子をゴーレム化したっていい。


 とはいえ、僕らには捕まえられる理由がない。だから、何かの誤解があるんだと思う。となると脱獄は、話がややこしくなるよね。


「しばらく様子を見ようか」


 というわけで、しばらく待機時間になったわけだけど、何もない牢獄だから暇を持て余すことになる。マジックハウスに戻ってもいいんだけど、誰か見に来たときに困るかもしれないしね。


『それなら、ご飯を食べるのがいいと思うぞ!』


 シロルの提案にプチサイズのプチゴーレムズがこくこくと頷く。こんな状況なのに、いつも通りだ。


 でも、まあ、確かにお腹も空いてきたころだ。


「じゃあ、食事にしようか」


 収納リングから、テーブルと椅子を取りだし、牢獄内に配置していく。テーブルクロスを敷き、その上に料理を並べていく。


「今日はこれだよ」

「わーい!」


 ふわふわ卵でチキンライスを包んだオムライスだ。特にハルファが気に入ってくれたみたいで、いつもよりもニコニコでスプーンを握りしめてる。


「ソースはどうする?」

「私はデミグラスがいい!」

『僕もだぞ!』


 ソースは三種類用意している。シンプルなケチャップソースと、デミグラスソース、あとはキノコのクリームソースだ。一番人気はデミグラスソースみたい。他の二つも悪くないけどね。


『呑気じゃのう……』


 ガルナが呆れたように呟く……けど、しっかり自分のオムライスは確保していた。おせんべいを気に入って以来、彼女は少しずつ他の料理にも興味を示し始めたんだよね。着実に食いしん坊の仲間入りしつつある。ようやく旅の仲間として馴染んだってところかな。


 みんなで賑やかに食事を取っていると、バタバタという足音でにわかに騒がしくなってきた。いや、アラームは鳴りっぱなしだから、さっきから充分に騒がしかったけれども。


「捕まえたぞ異界の者ども! お前たちの――――なんだこりゃ?」


 現れたのは兵士みたいな人たちとちょっと立派な格好なおじさん。おじさんは険しい表情で何かを叫んでいたけど、すぐにポカンとした表情に変わった。きっと、牢獄内が想像していた光景と違っていたからだね。


「すみません、すぐ食べ終わりますから」

「あ、ああ、落ち着いて食べなさい」

「ありがとうございます」


 理解のあるおじさんで良かった。お言葉に甘えさせてもらおう。


「あの……いいんですか? ラングさん」

「……は!? いや、だが、ほとんどが子供じゃないか?」

「それはそうですが……いや、でも……」

「……危険そうに見えるか?」

「いえ……」


 おじさんたちが何かぼそぼそ言ってるけど、止められないからまあいいかと食事を続ける。うん。トロトロの卵がおいしいね!


「ごちそうさま!」

「おいしかった!」 


 ハルファとスピラが満足げにスプーンを置く。結局、僕らは、おじさんたちが見守る中、オムライスを食べ終えた。でも、それで満足できない食いしん坊もいる。


『デザートは? デザートはないのか?』


 シロルがデザートを要求してくる。とはいえ、これ以上おじさんたちを待たせるのは問題じゃないかな。ローウェルは今更じゃないかという風に笑ってるけど、やっぱり限度ってものがあるし。とりあえず、シロルの口にはあめ玉を放り込んでおこう。


「ええと、お待たせしました。その、もしよければどうですか?」

「あ、ああ、いや、お気遣い無く」


 待たせたお詫びにあめ玉を差し出すけれど、おじさんは遠慮しているみたいだ。二人でぺこぺこ頭を下げていると、兵士の一人がこほんと咳払いした。


「ラングさん。もうぐだぐだですが、一応、ちゃんとやらないと」

「そ、そうだな!」


 おじさん――ラングって名前みたい――は、はっとしたあと、少しだけ表情を険しくする。けど、またすぐにへにょりと眉が下がった。


「ああ、ええと、君たちは異界の者……なのか? 検知装置が強力で異質な存在を検知したので、こちらに隔離されてもらったわけだが」


 ラングさんが気まずげな表情で、僕らを見てくる。いつの間にか止まってるけど、あのうるさかったアラームは、異界の者を探知したときの警告音だったみたい。


 僕らは顔を見合わせる。


「もしかして、ガルナの邪気に反応したのかな?」


 今でこそ和解したけど、ガルナは邪神として扱われていた。異質な存在として検知されてもおかしくないと思う。だけど、僕の意見にガルナは呆れた様子を見せる。


『馬鹿者。私はこの世界の神じゃぞ。異質な存在なわけがあるまい。どう考えてもお主の方が異質じゃ』

「そんなわけないよ。僕はちょっと運がいいだけの普通の人間だよ」

「「「……ちょっと?」」」


 僕の言葉に、ハルファたちが首を傾げる。まあ、ちょっとっていうのは少し盛ったかもしれない。いや、盛ったっていうか過少申告したっていうか。こういうときは何て言うんだろう。


 そんな僕らをよそに、兵士のひとたちがこそこそ喋ってる。


「猫が喋ってるんだが……」

「さっきは犬が喋ってたぞ。しかも、角が生えてる……」

「あの小さな人形は何だ? 勝手に動いてる」

「いきなり牢獄に飛ばされて、呑気に食事って……普通じゃないよ」

「全体的におかしすぎてどこから突っ込めば……」


 あ、あれ?

 すっかり慣れちゃったから自覚がなかったけど……僕たちって、あんまり普通じゃない……?


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