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264.食いしん坊、集結

 巨大埴輪で石鎧たちを倒したことによって、教団は大いに混乱した。石鎧たちを操ってたあの二人――ドムダンとダムロスは教団の大幹部とも言える存在だったみたい。ユーダスを筆頭に一大派閥を結成し、教団を実質的に牛耳っていたんだって。


 その大幹部が討たれたんだ。混乱するのも当然なんだけど、実は理由は別にもあったりする。最大派閥の長ユーダスが主立った者を連れて行方をくらましたんだ。教団が急成長した要因である銀の力も彼の失踪とともに失われた。そこに巨大埴輪を引き連れた僕らが訪れたので、教団はあっさりと降伏を申し出たんだ。


 そのあとのことは、モルブデン組の優秀なモヒカン秘書ファルコさんに任せたから詳しくは知らないんだけど、噂に聞いたところによると、教団は解散を命じられたみたいだね。


 まあ、銀の力を得る前から危険思想を持った集団だ。存続させても良いことはなさそうだし、妥当な判断だと思う。


 教団と一緒にアルビローダを牛耳っていたバンデルト組も大きく力を失った。大勢いた部下も旗色が悪くなると多くは離反。主要メンバーは山奥に逃げて山賊紛いな生活をしながら抵抗しているらしい。まあ、今までと変わらないといえば変わらないかな。


 とはいえ、以後、彼らに付き従う人は減ると思う。彼らの力の源泉となったダンジョンはモルブデン組で接収したから。


 教団によって作られたダンジョンは銀の力の影響を受けている。一見すると普通のダンジョンと変わらないけれど、放置するわけにもいかなかった。というのも、これらのダンジョンを起点に銀の異形たちがこの世界へと侵蝕しているみたいなんだ。放置していると、じわじわと銀の神がこの世界への支配権を強めていくそうだ。それは困るから、いくつかの神様たちがダンジョンの支配権を塗り替えようと奮闘している。


 本来なら、それはガルナの役割なんだけど、彼女は世界を混乱させた罰として神の力を制限されているからね。代理の神がダンジョンの支配権を塗り替えてるってわけ。


 僕らはというと、バディスさんに市長を任せたダンジョン都市に戻ってきた。この街、何故か、名前がゴッドトルトになっちゃってる。もちろん異議は唱えたけど、すっかり定着しちゃってどうにもならなかったよ……。


 まあ、名前はともかく、冒険者が集まって活気が溢れる街になっている。隣国レブウェールとの商取引なんかも始まっているから、これからますます賑やかになりそうだね。


 バンデルト組、エルド・カルディア教団。銀勢力の残党なんかはまだ残ってそうだから、それらの排除はやっておきたいのだけど……それにはちょっと時間がかかりそうだ。というわけで、少しの間、この街で骨休みでもしようと思っている。


 そんなある日のこと。マジックハウスの自室でゆっくりしていたら、突然、ハルファがやってきた。


「ねえ、トルト。新しいお菓子を教えてよ!」

「え、急にどうしたの?」

「急じゃないよ。アイスクリーム屋さんとしては十分に経験を積んだんだから」


 ハルファが腰に手をあて、胸を反らせる。ニコニコ笑顔で誇らしげだ。


 実際に実績はある。以前、料理コンテストでは優勝していたし、それ以来、色んなところでちょくちょくお店を開いている。大抵は無料提供なので、お店と言っていいのかはわからないけど。


「教えるのはいいんだけど……どんなお菓子がいいかな?」

「それはもちろん、甘いの! お菓子はやっぱり甘くないと駄目だよ!」


 両手の拳を突き上げ、ハルファが主張する。


 まあ、わからないでもないけどね。お菓子と言えばイメージは甘い物。アイスクリーム以外にも食べたいものは色々ある。ケーキでしょ、パフェでしょ……和菓子もいいかもね。どら焼きとか食べたいなぁ。


 でも、個人的にはスナック菓子も捨てがたい。お煎餅とかもいいね。醤油はあるし、よく考えればダンジョンからお米も採れる。頑張れば、作れそうな気がするなぁ。


「トルト? トルト、ねえ、大丈夫?」


 気がつけば、ハルファが僕の顔をのぞき込んでいた。食べたいお菓子に思いを馳せていたらぼうっとしていたみたい。


「ごめんごめん。何がいいかなって考えてたら、色々思い浮かんじゃって」

「ホントに! じゃあ、作り方、教えてくれるの?」

「もちろんだよ」

「やった!」


 請け負うと、ハルファは僕の手を取ってぴょんぴょんと跳ねた。連動するように背中の羽がぱたぱた動く。


「じゃあ、食堂に行こう! スピラちゃんも待ってるから!」

「うん……って押さなくても歩くよ」

「いいからいいから!」


 ご機嫌なハルファに背中を押されながら食堂に向かう。そこには当然スピラがいたわけだけど、それだけじゃなかった。食いしん坊たちが待ち受けていたんだ。


『話は聞かせてもらったぞ!』


 シロルがテーブルの上に立ち、凜々しい顔つきで告げる。隣に立ったピノも自分の胸をぽんと叩いた。


「味見役なら任せてよ!」


 ピノだけじゃなくて、アレン、ミリィ、シャラもいる。ピノが目立って見えるけど、プチゴーレムズは全員食いしん坊だ。他三人は少しだけ遠慮があるけど、それでもこういうときにはちゃっかり参加している。「いや、ピノには困ってるんです」みたいな顔してるけど、目がキラキラしてるし、食欲が隠し切れてないんだよね。別に、隠す必要もないんだけど。


「新しいお菓子を作るって話したらこうなっちゃって……」


 スピラは苦笑いだ。でも、シロルとピノに話したらそうなるよね。


 もちろん、彼らを仲間はずれにするつもりもない。試作したら、味見はしてもらう予定だったし。


「でも、これだけ人数がいるなら、いろいろ作ってみるのもありかもね」

『おお、色々食べられるのか!』

「やったね~! どんなお菓子が食べられるんだろう~」


 僕の言葉に、シロルとピノが歓声を上げる。“作る”って言ったのに、すっかり“食べる”に変換されちゃってるのが二人らしい。作るのも楽しいんだけどなぁ。


「で、何を作るの、トルト!」

「ふふ、楽しみだねぇ。どんなお菓子なのかな?」


 ハルファとスピラは食べるのも好きだけど、作るのも好きだ。二人は、新しいレシピに興味津々みたい。


「色々考えてるけど……その前にせっかくだから、材料を取りにいかない?」


 ここのダンジョンは神様たちの合作だ。第一階層は大地神様の影響を受けて、様々な食材が手に入る。せっかくだから、確保しておきたいよね。


「うーん、そうだね。確かに、ちょっと素材が心許なくなってきているし」

「卵も確保しておきたいよね!」


 二人にも異存がないようだ。


 食いしん坊たちにも働いてもらおう。料理は作れなくても、ダンジョンから素材を集めるのはできるからね!


 というわけで、いざ、ダンジョンへ!


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