表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/136

23.楽しい野外活動

 ハルファは冒険者登録したあと、すぐに『栄光の階』に加入した。これで僕らも五人パーティー。前衛二人に、後衛二人。僕は中衛、かな? 結構、バランスの良いパーティーだよね。


 冒険者登録が終わったら、お次は職業神の加護を授かる。銀貨10枚は、パーティー加入お祝いということで僕が出しておいた。たぶん、レイたちも装備面で色々と世話を焼くことだろう。なにせ、ハルファは現在一文なしだからね。仕方がない。


 ハルファが職業神から授かったのは魔弓士の加護。『魔弓』の使い手ということではなく、魔法と弓、両方を使う人向けの加護だね。歌唱魔法は魔法分類なので一応、恩恵はあるみたいだ。ちなみに、歌に特化しようと思えば、ミンストレルという加護も選択肢にあったそうだけど、そうなると弓技能に恩恵が得られないので魔弓士を選んだんだって。積極的に弓も使っていくつもりみたいだね。


 その後、数日を使ってハルファは装備を整えたり、弓技能のギルド講習を受けて活動の準備をしていたようだ。そちらにはミルとサリィが付き合っていた。


 僕はというと、久しぶりに薬草採取に励んでニーナさんに感謝された。僕以外に採取する人がいないのですぐに不足状態になってしまうみたい。ダンジョンに潜る前に、それなりに採取したはずなのに驚きだよね。


 それと、空いた時間を活かして、ついに料理の訓練もはじめた。訓練といっても、山猫亭でブラスさんの手伝いをするだけなんだけどね。それでも、ぼちぼち調理技能が上げるのが、【調理の才能】のありがたいところ。それに、一応お手伝いしたということで、僕とハルファの食事代を無料にしてもらっている。ハルファは駆け出し冒険者ということで宿代も割り引いてもらっているので大助かりだね。


 そんな風に数日を過ごして、いよいよ本日、ハルファが冒険者としての活動を開始する。


 といっても、最初はダンジョンではなく、近場の森で様子見だ。ついでに僕の薬草採取の腕前も披露しよう。自分で言うのもなんだけど、結構熟達の域に達してると思うんだよね。


「トルト、これは薬草でいいの?」

「あ、そうそう。その葉っぱは採取依頼出てるやつだよ。一応、あとでサリィにルーペで確認してもらおう」

「はーい」


 僕はハルファとペアを組んで薬草を採取している。レイたちは三人組だ。僕はもうたいていの薬草を見分けることができるから、ルーペはレイたちが使っている。ハルファも物覚えがいいみたいで大変優秀。この分だと、採取エリートになる日も近いね。もっとも、キグニル冒険者ギルドにおける採取エースの座を譲るつもりはないけど。


 変なライバル心を発揮しつつ、採取を続けていると、すぐ近くの草むらでガサゴソと音がした。


「ハルファ」

「うん!」


 ハルファに声をかけると、彼女はすぐに反応した。揺れる草むらに向けて弓を構える。ブレのない堂々とした構えだ。待つことしばし。草むらから顔を覗かせたのはホーンラビットという魔物だった。魔物と言っても、角が生えただけのウサギ。油断すれば角の一撃で思わぬ傷を負うものの、脅威度は低い。


 ホーンラビットを確認した瞬間、ハルファは躊躇なく矢を放った。矢はホーンラビットの胴体に深々と突き刺さる。急所を貫いたのか、ホーンラビットはその一撃で動かなくなった。


「凄いね! 一撃だ!」

「えへへ、そうでしょ?」


 思った以上の腕前だった。素直に褒めると、彼女ははにかんだ笑顔を見せる。感情に連動しているのか、背中の翼がピコピコ動いているのがちょっと面白い。


「待っててね。今から、解体するから!」

「え、解体までできるの?」

「うん!」


 わぁ、思ったよりもワイルドだね。たくましいし、頼もしい。解体用のナイフを使って、あっという間に肉を切り分けてくれた。


「せっかくだから、お料理してよ!」

「ここで?」


 ホーンラビットの肉を受け取ってから、ハルファに〈クリーン〉をかけてあげると、そんなことを言われた。そういえば、もうそろそろお昼の時間だ。


 一応、長期探索を見据えて、調理器具や食材は買ってあるんだよね。とはいえ、現地で調理するつもりはなかった。収納リングがあるから、完成したものを温かいまま鍋ごと保管とかできるからね。


 だけど、今日はピクニック気分で野外調理してみるのもいいかもしれないね。かまどが作れるかどうかはちょっと心配だけど、そうやって苦労するのもそれはそれで面白いかも知れない。


「だったら、合流場所にいこうか。あの辺りなら、ひらけてるから火を使っても大丈夫だと思う」

「うん! わぁ、楽しみ!」

「外で調理するのは初めてだから、うまくできないかもしれないよ」

「大丈夫だよ! 私もお手伝いするね」


 大きめの石を拾いながら、森の広場まで歩いた。拾った石を適当に組んで、かまど……というには貧相だけど、鍋をおく台のようなものを作る。その頃にはレイたちも戻ってきたので、事情を説明して協力してもらった。


 ホーンラビットの肉に、適当な野菜、そして、塩と胡椒を適量。出来上がるのは、煮込みスープ? こんな適当調理でも、それなりのものが出来上がるので、調理技能は偉大だ。香辛料が豊富にあったらカレーが作れるかも、なんて妄想してみたけど、さすがに難しいかな。


「へぇ、トルトって料理も上手なのね」

「ありがとう。まだ練習中だけどね」


 出来上がった料理は概ね好評だった。正直、山猫亭の食事に比べると数段落ちるけど、みんなでワイワイ作ったから、その分、美味しく感じるのかもしれないね。レイたちが普段食べているものに比べると、素材の品質なんかはずいぶんと落ちると思うんだけど、その点はあまり気にしていないようだ。まあ、冒険者をやるなら、そんなことを気にしてられないんだろうけど。


「ダンジョンでも作ってくれるの?」

「いや、収納リングがあるから、ダンジョンでは調理済みのものを出すよ」

「それはありがたい……が、いいのか?」

「せっかくの技能なんだし、伸ばしたいからね」

「大丈夫、私も手伝うから!」


 結局、午後からは薬草採取もせずに、みんなと話して過ごした。たまにはこんな風にのんびり過ごすのもいいかもしれないね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ