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222.草人の商人たち

 次の日。僕らはアルビローダに関する情報収集をすることにした。さすがに、ガルナの把握していないダンジョンについては捨て置けないからね。


 ローウェルとスピラ、そしてガルナが冒険者ギルドを担当。ダンジョンのことならば冒険者たちの間で情報共有が成されている可能性が高い。彼らにはそれを探ってもらう。プチゴーレムズも協力してくれるから、彼らは街の噂を集めてもらおう。ピノは「カフェ巡りだ!」って言っていたけど、きっと真面目に仕事をしてくれるに違いない。


 僕とハルファ、シロルが向かうのは商業ギルドだ。レブウェールは商業国家だけあって、商人の力が強い。彼らは多くの情報を握っていることだろう。情報を得るには対価が必要かもしれないけど、それは交渉次第だ。とりあえず、探りは入れてみないとね。


 街の中央にデデンとあるのが商業ギルドの建物だ。国の規模を考えると相当にデカいね。草人だけじゃなくて、色々な種族が出入りしている。僕らも、それらの人の流れに紛れ込むようにして、建物の入り口をくぐった。


「どうやって情報を集めるの?」

「やっぱりダンジョン産のアイテムが欲しいという(てい)で話を聞いていくのがいいんじゃないかな?」


 ハルファが首を傾げて聞いてくるので、僕の考えを話す。

 相手は商人だ。やっぱり、買い手を装うのが一番だろうね。商品に関する情報ならこちらから聞くまでもなく話してくれるだろうから、アルビローダから流れてくるというアイテムを取り扱っている商人を見つけよう。


 方針も決まったので、適当な商人に声をかけようとしていたら、その中に見覚えがある草人がいた。それも最近ではなく、それなりに昔に見かけたような。


「あれ、君は前に僕のお店に来てた子供じゃない? その外套だし、間違いないよね」


 思い出そうとしていたところで、向こうから声をかけてきた。その言葉で僕もはっきりと思い出す。この人、僕に恩寵の外套を売ってくれた草人だ。


「こんにちは! まさか、こんなところでお会いするとは思いませんでした」

「僕もだよ」


 あははと笑う草人の男性。僕らと同じ年頃にしか見えないんだけど、これで子供もいるっていうんだから不思議だよね。


「ええと、トルトの知り合い?」

「ああ、うん。キグニルでお店を開いている人だよ」

「ええ!? そうなの?」


 キグニルと聞いて、ハルファは驚いている。僕とハルファが出会ったのもキグニルだからね。まだ半年くらい前のことだけど、ずいぶん前のことのように感じる。色々、あったからね。


 草人の男性は、ブエダと名乗った。今は里帰り中みたい。僕らが去った後のキグニルの話を聞いていたら、すっかりと時間が経ってしまった。


「ところで、君たちはどんな用事で商業ギルドに? 商談なら、僕が話を聞くけど?」


 ニッコリと笑うブエダさん。屈託のない笑みだけど、全く油断できない。草人の商魂のたくましさは嫌と言うほどわからされているからね。とにかく押しが強いんだ。


 とはいえ、詐欺とかぼったくりとかする人ではないと思うけど。恩寵の外套は今でも使っているほど性能の高い装備だ。それを金貨三枚で譲ってくれたのだから、今思えば相当良心的な価格だったのだと思う。


 まあ、今回は商談というわけじゃないんだけど。


「ちょっと、アルビローダのダンジョンについて知りたくて」

「ああ、その話か。僕らの間でも話題にはなってるよ。でも、最近のことはさすがに僕も詳しくはないなぁ」


 新ダンジョンの話題は、冒険者だけじゃなくて商人にとっても儲けの種だ。商業ギルドでも話題にはなっているみたいだね。商業ギルドに情報収集しにきたのは間違いではなかったみたい。残念ながら、ブエダさんは詳しくは知らないって話だけど。


「詳しそうなのに心当たりはあるけどね。どうせだったら、話を聞いてみる?」

「いいんですか? お願いします」

「別に気にしなくて良いよ」


 ありがたい申し出に一も二もなく頷くと、ブエダさんはひらひらと手を振った。だけど、その顔には苦笑いが浮かんでいる。


「まあ、素直に話すかどうかはちょっとわからないけど。がめつい奴だからなぁ」


 どうやら心当たりというのは癖の強い人みたいだね。ちょっと早まったかな……と思っていたところに、背後から覚えのある声が聞こえてきた。ごく最近に聞いた声だ。


「誰ががめついんだ? お前だって人のこと言えないだろ」

「心外だな。僕は君ほどじゃないよ。あ、トルト君。こいつが心当たりの奴ね。さっきから、こそこそ話を聞いてたみたいだから、事情は把握してると思うよ」


 ブエダさんが紹介してくれるけれど、それを聞くまでもなく、僕はその人を知っていた。声の主は、なんとベエーレさんだったんだ。しかも、アルビローダに詳しいというのも、彼らしい。


「こんにちは、ベエーレさん」

「昨日ぶりだね!」

「よ! まさか、あんたらがブエダと知り合いだとは思わなかったよ」


 僕とハルファが気安く挨拶しているのを、ブエダさんが目を丸くして見ている。


「あれ、ベエーレもこの子たちのことを知ってるの?」

「まあな。ほら、昨日、話したろ。ティラザを狩ったっていう冒険者の話」

「えっ!? この子たちのことなの? はぁ……僕のお店に来たときは駆け出しって感じだったのになぁ」


 恩寵の外套を売ってもらったときは、本当に駆け出しのときだったものね。その僕がBランク相当のティラザを狩ったと聞いて、ブエダさんは驚いているようだ。それだけ僕らも成長したってことだね。


 一方、そんなブエダさんをよそに、ベエーレさんはニヤリと笑った。


「さて、アルビローダの話だったか。俺はなかなか詳しいと思うぞ。話してやってもいいが……情報には対価が必要だよな? ふふ、聞いたぜ? あんた、最近ウェルノーに出店したハンバーガー店のオーナーって話じゃないか。他にも、何か儲け話があるんじゃないか? んん?」


 対価かぁ。たしかに、必要だろうけど、切り出し方がちょっと露骨だよね。やっぱりブエダさんに比べるとベエーレさんの方ががめつく感じるかな。


 それにしても、ウェルノーにまでハンバーガー屋さんが出来てるんだ……。


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