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147.人形工房

 マナ切れの影響もなくなり、ハルファの体調も回復してきたようだ。少し街を散策するというので、僕も付き合うことにした。シロルも一緒だ。ついでに言えば小型ボディのプチゴーレムズもいる。一号から三号までは僕の服のポケットに収まってるけど、四号だけはシロルの上だ。モフモフの毛に埋もれて姿が確認できないけど、ちゃんといるはず。


 実は僕、あんまりアイングルナの街を見て回ってないんだよね。ゴーレムの研究なんかで街の外に出てることが多かったから。


 先日の巨鳥の騒動があったばかりだというのに、街はそれにしては落ち着きを取り戻している。情報収集を買って出てくれたローウェルによると、酒場なんかだと噂にはなっているみたいだけどね。ただ、街の人たちから見れば、よくわからないうちに上空でドンパチやって相打ちになったという認識らしい。大きな被害が出ることなく事態が収まったので、危機感を覚えてないみたい。


 洗脳された人たちについての噂は出ていない。一応、ギルドも導師会も特殊な魔物を倒すと洗脳を受ける可能性があるという情報は流しているんだけど、すでに洗脳を受けた人が街に潜んでいることについては伏せているみたい。


 邪教徒側を追い詰めすぎることを警戒しているのかな? もしかして、導師会では何か掴んでいて、作戦前に派手な騒ぎを起こさないように気をつけているとか? だとしたら僕たちのやった飛行船大作戦は導師会にとって迷惑だった可能性もあるけど……。今のところ怒られてないから、大丈夫だよね、たぶん。


「あ、そうだ! トルトに見せたいお店があるんだった!」

「え? 見せたいお店?」

「うん、プチゴーレムズもきっと気に入るよ!」


 プチゴーレムズが気に入る?


 なんだろう、全然想像がつかない。話を聞いていたのか、プチ一号も胸ポケットから顔を出した。だけど、心当たりはないようで首を傾げている。


 よくわからないまま、ハルファに連れられて訪れたのは、何の変哲もない建物。ぱっと見た感じではお店には見えない。看板らしきものがないから、そう思うのかな。


「おじゃましまーす!」


 ハルファは躊躇なくお店のドアを開く。その先で僕たちを迎えたのは、無数の人形だ。ほとんどは木彫りかな? 綺麗にペイントされている丁寧な作りだ。大きさも色々あって、幾つかの人形は腕や足に可動域があって動かせるようになってるみたいだ。


「おや、久しぶりだね、お嬢ちゃん。今日はもう一人の子じゃなくて、坊やと一緒かい。あと、その子はわんちゃん……じゃないね。なんだろう?」

「わふ!」

「シロルだよ! 一緒に見てもいい?」

「んー、まあ、イタズラしないなら大丈夫だよ」

「わふ!」


 声を掛けてきたのは、髪の毛が真っ白なおじいさん。それなりの老齢に見えるけど、その姿勢はピンとしている。


「まあ、好きに見ていきなさい」

「え、あ、はい。ありがとうございます」


 おじいさんの言葉に、わけもわからず頷いた。それを見て、おじいさんはにこりと笑顔を浮かべると、手元に視線を落とす。木ぎれにナイフを当てて、削っているようだ。


 ハルファはお店って言ってたけど、ここはたぶん人形工房だね。オーダーメイドなんかは受け付けてるかもしれないけど、直接人形を売ったりはしてなさそう。


 まあ、それはいいんだけど、なんでハルファは僕にここを見せようと思ったのかな。それにプチゴーレムズが気になるっていうのは?


 疑問を込めてハルファを見ると、彼女は僕の両肩に手を乗せると言い含めるような口調で言った。


「トルトはお人形の作り方を勉強した方がいいと思う。プチゴーレムズが可哀想だよ!」


 すっごく真剣な駄目出しが来た!


 いや、自分でもセンスがないなとは思ってるよ。なんで埴輪って、何度思ったことか。でも、最近ではすっかり見慣れたし、愛嬌があるんじゃないかなと思ってるんだ。これはきっと、プチゴーレムズも同じ気持ちのはず!


 プチ一号をポケットからつまみ上げて、同意を求めようとしたんだけど……何でだろう、視線が合わない。目を合わせようとすると、つつっと逸らされる。二号、三号も同じリアクションだ。四号だけは、意味が分かっていないのか首を傾げていたけどね。


 ぐぬぬ……埴輪ボディだって愛嬌があるのに!


 とはいえ、興味深そうに……いや、羨ましそうにかな? そんな感じで人形を見るプチゴーレムズを見ると、何だか申し訳なくなってくる。


「おや? なんだい、この子たちは?」


 気がつけば、おじいさんが僕たちのそばに立っている。どうやら、プチゴーレムズに興味を引かれたみたいだ。


 しまったね。おじいさんへの説明も無しに、プチゴーレムズを自由にさせてしまった。こんな小型のゴーレムなんて見たことないだろうし、きちんと説明しておかないと。


「この子たちは僕の作ったゴーレムです」

「なんと!? こんなブサ……独特な造形のゴーレムが存在するとは!?」


 ブサ……?

 ……いや、現実を直視しよう。この世界の一般的な感性からすると、埴輪型は不細工みたいだ。価値観の違いはしょうがない。しょうがないんだ。


 というか、驚きポイントはそこなんだ。手乗りサイズのミニミニゴーレムなんて珍しいと思うんだけどな。そこよりも衝撃的なの、埴輪型って。


 まあ、いいさ。そんな風に言わせておくのは今日までのこと。ここで人形の造形を学んで、プチゴーレムたちを格好いいボディにしてみせる!


「よし、プチゴーレムズ! 自分たちが理想とする人形を見つけてきて!」


 ここにはたくさんの見本があるからね!

 真似するくらいなら、僕にもきっとできるはず!


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