表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

143/173

143.冒険者ギルドに戻る

 巨鳥を倒した後、ハルファの回復を待って僕たちはアイングルナに戻った。街はいつもよりざわついている。まあ、空に浮かぶ謎の飛行物体から歌が聞こえてきたと思ったら一部の住人がばたりと倒れたり、街中から魔物が現れたと思ったら飛行物体と戦闘を始めたり。いくらダンジョン内の街とはいえ、なかなか見ない光景だろうから、仕方がないよね。


 冒険者ギルドへ報告に行くと、まずはバッフィさんにお礼を言われた。街の人のこともそうだけど、ラーチェさんのことでだ。


「このねこじゃらし……じゃなくて、信念のかんざしがなければ大変なことになっていました」

「面目ないニャ……」


 実は飛行船から、鎮めのうたが聞こえだしたときに、ラーチェさんが暴れだしたみたい。ラーチェさんには何度か鎮めのうたを聞いてもらってるんだけど、それだけではあの黒い靄を浄化しきれてなかったようだ。


「歌が聞こえだした瞬間、また変な声が聞こえたのニャ。しかも、前よりも強力だったのニャ! でも、なんかちょっと余裕がなさそうな感じだったニャ~」


 というのがラーチェさんの感想だ。

 おそらくだけど、ゴーレムによる音声増幅は鎮めのうたの浄化効果まで増幅したんじゃないかな。そのせいで、今まではラーチェさんの中に潜伏してやり過ごしていた黒い靄も消滅の危機に瀕した。それで最後の抵抗とばかりにラーチェさんの身体を乗っ取ろうとしたんだろう。


「もう大丈夫なんですか?」

「今回の鎮めのうたで完全に浄化されたみたいニャ。身体が軽いニャ!」


 ラーチェさんはぴょんぴょん飛び跳ねて、万全であることをアピールしてみせる。元気なことは伝わってくるね。だけど、本人に自覚がない可能性もあるんだよね。ちょっと前のラーチェさんがそうだったわけだし。


 クリーンでもう一度浄化しておいた方が確実かな。巨鳥をまるごと浄化できたんだから、黒い靄がラーチェさんに潜んでいても逃さず浄化できるだろう。事情を説明した上でラーチェさんにクリーンを使う。魔法が発動しても、様子に変化は見られなかった。どうやら、完全に浄化されているみたいだね。良かった。


「ところで、ねこじゃ……信念のかんざしがどうのっていうのは、どういう話ですか」

「実は――」


 今のところ、信念のかんざしが話に関わってこない。尋ねると、バッフィさんが説明してくれた。


 ラーチェさんが暴れ出したとき、彼女を止めることができる人間がギルドにはいなかった。考えれば当たり前で、ラーチェさんはAランク冒険者でしかも近接格闘タイプ。まともに止めようとするならば、同じAランクの近接アタッカーじゃなければ難しいんだ。


 ラーチェさんが暴れたなら、ギルドの中はぐちゃぐちゃに壊されていただろう。その事態を回避するのに一役買ったのが、信念のかんざしみたいだ。


 ラーチェさんが暴れ始めたとき、ポケットからこの信念のかんざしがこぼれ落ちたらしい。その瞬間、彼女の動きがとまった。視線は信念のかんざしに釘付け。正気を失ってなお、抗えない魅力があったようだ。


 そのことに目敏く気付いた冒険者がかんざしを拾い上げ、ゆらゆらと振ってみせた。ラーチェさんに取り上げられそうになったら、他の冒険者にパスして、気を引き続けることでラーチェさんが暴れるのを防いだらしい。そうこうしているうちに鎮めのうたの効果でラーチェさんは正気に戻った。結果として、被害はテーブルと椅子が少し破損しただけみたいだ。


 本来は精神攻撃耐性のために預けたアイテムだったのに、なんだか違う使われ方をしてたみたいだね。役に立ったのなら問題はないけど。


 ラーチェさんがそんな状態だったので、街の状況は把握できていないみたいだ。まあ、そもそも街の治安を守ること自体は冒険者ギルドの仕事ではないんだけどね。とはいえ、騒ぎが大きくなれば街の治安組織から依頼という形で協力要請がくるから普通は事前に情報を仕入れておくものらしいけど。


「まあ、あれだけの騒ぎニャ。きっと導師会から何らかの報告があるニャ。問題は街の中から魔物が現れたってことだニャ~。トルトたちが倒したので終わりとはかぎらないニャ」


 その問題もあるよね。あの巨鳥、ガロンドで遭遇した邪竜に雰囲気が似ていた。やっぱりゴドフィーが街に潜んでいるのかもしれないね。増幅した鎮めのうたで洗脳が解けているならいいんだけど……あんまり期待しない方がいいかな。上空から歌を届ける作戦は中断しちゃったから。巨鳥が出現したあたりは、まだ飛んでない場所だったしね。


 その周辺は調査した方がいいと思うけど、それはこの街の治安維持組織の仕事かな。まあ、たぶん何も残ってないと思うけどね。あんなに目立つ形で出現した以上、証拠になりそうなものは消してるだろうから。


 さて、僕らの方針は……冒険者活動を再開して早々だけど、またちょっと休暇かな。予想外の大物との戦いで、みんな疲れてる。飛行船もボロボロだから、修理しなきゃ駄目だし。それに、プチゴーレムズのボディを作り替えるために、鋼の精錬もしなくちゃいけない。


 ゴドフィーの足取りを追ったり、特殊個体の討伐したりとまだまだやらなければならないことは山積みだけどね。でも、巨鳥討伐で邪神側の思惑を挫くことができたんじゃないかな。ちょっとくらい休んでも大丈夫大丈夫。たぶん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ