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133.ゴーレム式飛行船、お披露目

 ここ最近、魔法とゴーレムの研究しかしていなかったので、そろそろ冒険者活動を再開することになった。といっても、最初にやるのは鉄鉱石探しだけど。ゴーレム強化の素材集めだね。


「じゃじゃーん! 今日はこれで移動します!」

『おお、浮かぶゴーレムの奴だな!』


 さて、いつもなら下り階段まで歩いて行くところだけど、今日は別の手段で移動するつもり。ここ数日の研究の集大成――ゴーレム式飛行船をお披露目するんだ!


 飛行船を飛ばす上で障害となったのは巨大なヘリウムゴーレムを作ること。たくさんのヘリウムを留めておく手段がなかったので、実現が難しかったんだ。


 それを解決したのが、魔法の同時起動みたいな技術だ。本当に同時起動しているかはわからないけど。発想の起点はクリエイトウォーター。この魔法は何もないところから水が生成できる。ということは、クリエイトウォーターとクリエイトゴーレムを同時に使えれば、素材の準備無しでも水のゴーレムが作れるんじゃないかと思ったんだ。


 結論から言えばできた。例えば、クリエイトゴーレムの呪文を唱えながら、クリエイトウォーターの発動を意識すれば、素材無しで水のゴーレムが作れる。同じように、エアジェットを意識しながらクリエイトゴーレムを使えば、風のゴーレムが作れるんだ。あと、ついでに気体に混ぜ物を意識することで色をつけることにも成功している。視認できないのは不便だからね。


 ここまでできれば、話は簡単。エアジェットでヘリウムを噴出しながら可能な限り巨大なゴーレムを作ればいい。もちろん、浮かんでいかないようにする必要があるけどね。


 船体は前にベッドを作ってもらった家具職人に突貫工事で作ってもらった。飛行船と言ったけど形状は熱気球に近いかな。僕たちが乗り込む部分はゴンドラ。天井や側面は軽い素材で骨組みが組まれた上で丈夫な布で覆ってある。



「これで移動するって……どうやって?」

「わかった! ゴーレムに運んでもらうんだよ!」


 スピラはこれに乗って移動する光景が想像できないみたいで首を捻っている。一方で、ハルファは答えを言い当てた。でも、たぶん想像している運び方とは違うだろうね。空を飛んだとき、みんながどんな反応をするのか楽しみだよ!


 飛行船の天井部分には余裕を持って空間が確保されている。ここにヘリウムゴーレムが収まるんだ。エアジェットによるヘリウム噴射を意識しながらクリエイトゴーレムを使う。普通なら目の粗い布から少しずつ漏れてしまうところだけど、ゴーレム化した状態ならその心配はない。


 船体の重さに、僕ら全員の体重が加わるとかなりの重量だ。風魔法のレベル的に全力発動でヘリウムゴーレムを作っても、船体を浮かすには至らない。だけど、それでいいんだ。今回のゴーレムボディはある程度自由に体積を変えられるように作っている。


「プチ一号、思いっきり膨らんで!」


 指示を出すと、カランと鐘の音が鳴った。プチ一号による了承の合図だ。


 実は最近、身体を振動させて覚えた音を真似することができるようになったんだ。僕の声で言葉を覚えさせれば、その声を反復することはできるみたい。喋るゴーレムまであと一歩ってところかな。


「あっ!」

「浮いているよ!」

「まさか、こんなことが……?」


 プチ一号が膨れあがったことによって十分な浮力を得た飛行船が、ついに宙に浮かんだ。その瞬間、みんなから驚きの声が上がる。実験に付き合ってくれたシロルは驚いてないけど、自分が乗り込んだのは初めてだから、激しく尻尾を振りながら興奮している。ゴンドラの床からだと外が見えないから、僕の頭の上で。とてもくすぐったい。


 プチ一号が膨張を続けているのか、飛行船はぐんぐん高度を上げていく。すでにアイングルナの大部分が視界に収まるほどの高度だ。そろそろ上昇を止めてもらおうと思った瞬間、ドンと鈍い衝撃が走った。


「な、なんだ!?」

「たぶん、ダンジョンの天井にぶつかったんだと思う」

「そうか……、ここはダンジョンだったな」


 慣れない環境にローウェルが顔を青くしている。女の子二人がきゃっきゃっとはしゃいでいるのとは対照的だ。どちらかというと、ローウェルの反応が一般的な気もするけど。


 天井にぶつかった状態だと都合が悪いので、プチ一号には少し高度を下げた状態で維持してもらう。


「じゃあ、出発するよ!」


 推進力はちょっとアレンジしたエアジェットを使う。アレンジ内容は、噴出した風の反動を正しく生じさせるといったものだ。通常使用のエアジェットはちょっと物理法則を無視していて、すごい勢いで風を噴出しているのに術者に反動が一切無いんだよね。この場合、外に向けて噴射しても推進力は得られない。内部に向けて噴射すれば飛行船は進むけど、中が猛風で大変なことになっちゃう。というわけで、反動ありのエアジェットを進行方向の逆側に噴射することで前に進むことにしたんだ。


 とはいえ、意外と操縦が難しい。真っ直ぐ後ろに噴射しないと船体がくるくると回ってなかなか前に進めないんだ。無駄に時間を使ってしまった。そのせいもあって、移動時間は歩くよりは少し早い程度だったかな。もうちょっと改良が必要だね。


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