表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
季節の巡る彼女と少年の物語  作者: 山神賢太郎
4/4

同じ景色

 今日の予報は快晴だった。

 そんな中エーデルは図書館の帰り道、土砂降りの通り雨が降ってきた、あの時と同じように。

 エーデルはまた、あの神社へと逃げ込んだ。

 本を入れているカバンは防水加工されており、何とか大事な資料は雨に濡れることはなかったが、彼女の服はびしょ濡れだった。

 またかと、彼女は思った。

 この通り雨はいつまで続くのだろうか。そんなことを考えながら鳥居と空を見ていた。

 そこにピチャピチャと足音をたてながら、遠くを黄色い傘を差しながら歩く少年が目に入った。

 その少年は神社の鳥居の前でピタリと足を止める。

 そして、鳥居の前で傘を少し傾けてエーデルを見た。

 それは護だった。

 護はまた鳥居をくぐると、エーデルの方に向かって歩く。

 何かを喋っているようだったが、エーデルの耳には雨の音のせいで何も聞こえなかった。

 そして、声が聞こえる距離まで護は進んだ。

「お姉ちゃん。また、傘を忘れたの?」

 護はエーデルの目の前できて歩みを止めた。

「うん。予報では晴れだったから傘を持ってきていなくて」

「ここはあそこに大きな山があるから、結構天気予報はあてにならないよ」

「そうなんだね。じゃあ折りたたみ傘をカバンに入れといた方がいいね」

「そうだ今日は僕の家まで一緒に帰ろうよ。家だったら傘がいくつかあるからそれをさして帰ればいいよ」

「まもる君ありがとう。じゃあ一緒に帰ろうか」

「うん」

 護は小さな傘にエーデルを入れた。

 護は傘を持ち少し背伸びをしながら、エーデルは少ししゃがみながら歩こうとした。

 そこで二人は目を合わせた。

 エーデルと護は同時に笑った。

「まもる君。これだと少し無理があるね」

「そうだね」

「私が傘を持つよ」

「うん!」

 小さい傘に二人は少し密着しながら歩きだす。

 それでも無理はあった。

 小学生の小さな傘では大人と子供二人が完全に入ることはできなかった。

 そのため、エーデルは護側に傘を少し寄せておいた。

 それに気付いたのか護は傘の柄を少しエーデルの方へと押した。

「僕は家が近いから大丈夫だから、お姉ちゃんがちゃんと傘に入って」

「ありがとう、まもる君」

 エーデルは護にそう言われながらも、ほんの少し護に気付かれない程度に護の方に傘を傾けた。

 そして、護の家まで着いた。

 穂高家の玄関前まで着くと護は傘立てから一つ傘を取った。

「はい!お姉ちゃん傘」

「ありがとう、まもる君」

「来週から夏休みだから今度遊びに行こうよ」

「うん。わかった」

 護はエーデルから黄色い傘を受け取ると傘立てにいれた。

 そして、二人は手を振りながら別れた。

 エーデルは帰路につきながら少しまた微笑んでいた。傘を忘れたことが少し良かったような気がしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ