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俺の彼女はダンジョンコアッ!  作者: やまと
3章
49/78

首都防衛

「ウソだろ! なんで文月さんも蔦絵様も居ない時にこんな事になるんだよッ!」


 現在首都の周りに数十体の魔物が跋扈している。

 っと、言い忘れたが俺はこの国の王をやっている鳳凰國俊(ほうおうくにとし)という。

 運悪く、そう()()()国王なんぞになっちまった哀れな20代の男だ。

 え? なんで王の運が悪いんだって?

 それはな、ハッキリ言って自由がなく息が詰まりそうな程面倒くさいからだ。

 密かに楽しみにしていた冒険なんて一切できず楽しみがなく、毎日毎日来る日も来る日も書類整理ばっか。

 更に国民の安心安全を保障しなくちゃならんから外出もできない、息抜きができない。責任が半端なく、重圧がスゲェの何のって、やってらんないよ!


 【王】の権能により俺の治める都市には魔物は入って来れず、天災もない。つまり俺が居ればこの首都は安全だ。逆に言えば俺が居なくちゃ安全じゃないってこと。その所為で冒険できないって訳。

 【聖女】の聖域とやらと違い、俺の持つ権能、【不可侵領域】は俺が内部に留まってなくちゃ発動しない。だから王城に監禁状態が続いているのは仕方がない。わかっちゃいるんだけど、それは忙しいのに退屈という複雑な心境になるんですわ。


「陛下っ!首都の周りの魔物をどうにかしてください! このままじぁ民の安全は兎も角、安心が得られませんッ! 精神的苦痛ですよこれっ、何とかしてくださいよお!」


 一人の優男君が情けない声を出す。この男は俺の秘書っぽい立ち位置の第一秘書モドキだ。現在、上空にでっかいダンジョンの入口らしきものが現れてから時折ボトボトッと魔物が落ちてくる。俺が居る都市に魔物は侵入できないんで周囲に集まりつつあるんだ。

 コイツはその魔物を討伐しろって言ってる。


 この都市、元々国の首都だった場所だが、ここは別に要塞都市に作り替えたって訳じゃない。一応は都市の外周に高さ2m程の防衛壁を設置してはいるけどそれ程重厚なものじゃない。だからか、外壁の外に魔物の姿が見えると不安を駆り立てられちゃうんだな。

 じゃあなんで高く頑丈に作らないのかって?それは必要なかったからだよ。だって、この都市に害を及ぼすものは俺の不可侵領域で一切の立ち入りができない、精神衛生上の問題で目隠し程度の壁を作っただけなんよ。


 第一秘書モドキええい、めんどろくさい! もうコイツは秘書1でいいや!

 その秘書1に続いて筋骨隆々な第二秘書モドキの秘書2が続く。


「早急に対処しなくては王への信頼は失われてしまいます。対処は早めにお願いします」


 【王】のロールの不可侵領域にも欠点がある。それは民達の信頼が力の源であり、失えば領域の範囲が狭まっていくってもんだ。

 今現在でも1500平方キロメートルを少々切る首都としては狭い範囲だ。この領域を広めてくのが俺の使命になる。

 誰からも信頼されなくなれば、俺の周り僅か半径1mという極めて狭い範囲になってしまう。

 俺だけが魔物からの攻撃を防げても意味が無いよな。ってことで何とかしないと。


「よし、何とかしよう! ……ってどうすればいいんだ?」

「陛下、先ずは魔物討伐が優先です。天空ダンジョンの攻略は二の次です。目に見える危険は民達の精神を揺さぶりますので、できるだけ早く討伐の意思を示す必要があります」

「陛下の力で被害は皆無なんですけど、目に見える魔物は怖いんですよお」

「お、おう、そうだな。よし、第一から第三守備隊を出動、あと、剣魔混合部隊も出そう。第四第五守備隊は何時でも出れるように準備させといて、遊撃部隊は自由に攻撃を仕掛けてくれ」


 とゆうことで出撃です。と、思ったんだけど。


「剣魔混合、第三守備隊は損失が激しく正しく機能するとは思えません。遊撃部隊も損耗しておりますが、彼等は役割を考えれば何とかなると思います」


 そういやそうだった。少し前に【傲慢・色欲の魔王】にやられて大きな被害を出したからな。

 遊撃は狙いを定めないから、少人数でも無理のない位置取りをしてくれれば問題ないんだろう。

 勿論損失した兵を補う努力はしたんだ、けどさこんな短時間で使い物になる兵はそうはいないよな。


「異変を感じ取った各地の実力者達がこの首都に向かっています。が、それよりも速く対処したいところです。剣魔混合と第三を予備に回し、第四守備隊を代わりに出し魔術師部隊も前面に出すことを提案いたします。更に近衛で彼等を護るのです。後に集まった実力者達に不足部分を補ってもらいましょう」

「おう、そうしてくれ。俺よりあんたの方が王様っぽくねぇか?」

「はははっ、それは当たってるかもお」


 秘書1が笑ってやがる! こいつに笑われるとイラッとするからやめてもらいたいね。


「私などはその器にありません。精々が指揮官止まりです。やはり王は陛下以外には有り得ません。

 それでは第一第二第四守備隊、及び魔術師部隊と近衛を動かします。残りの第三守備隊、剣魔混合の生き残りを待機、第五守備隊を何時でも出れるように戦闘態勢を取らせておきます。遊撃は状況に応じて出撃させます」


 臨機応変に動くのが遊撃たる所以だ。

 魔術師部隊には一人の切り札が存在しているから安心ちゃー安心だけど、不安もある。

 この切り札のカリスマ性は王である俺を上回っちゃうんだよな。けどまあ、


「よろしく」

「陛下は此処から皆に指示を出してください。皆、通信機を携帯させています」


 大地震の直後から世界では電波の類は一切使えなくなった。強力な妨害電波でも出てんのか?

 だが今のこの首都周辺では、不可侵領域周辺での電波が使え通信機器が使用可能になっている。つまり無線通信が可能で離れているこの場所からでも指示を飛ばせるんだ。

 まあ、俺のロールやジョブには意思疎通の権能が有るが、部下同士ではそうはいかないから助かってる。


「よし、では出撃せよ!」


 ってな訳で戦闘開始、俺は数多くのモニターの前に座って指示を飛ばしている。

 ちなみに此処は王城や城塞等ではなく、また司令室ですらない。只の高層マンションの一室に過ぎない。そこからモニターを確認しながら指示を飛ばしていく。

 このモニターには都市の周りでの戦闘が一部始終表示されている。

 ようやっと出撃させた首都自慢の部隊だけど、一体の魔物を倒すのも大変そうだ。魔物のレベルが高い。そうなると連携が必須になってくるよな。

 でも、


「ばっ、バカ! 第四守備隊、右翼下げれ! そうじゃない、左翼はもうちょい前へ! 一歩前へ! 魔術師部隊なにしてんの!? 相手の弱点を見極めてから魔術をつかえよ! だぁ〜、近衛は魔術師から離れんじゃねぇよ!!!」


 ダ、ダメだ、連携がまるで取れてないじゃん!

 このままだと無駄な犠牲が出かねない、一旦退かせるか? いや、でもなぁ。


「へ、陛下! 押されてます、押されてますよ!」

「言われんでもわかっとらぁ〜! 少し黙っとりん!」


 い、いかん、冷静になれ、俺は彼奴等を指揮して犠牲を最小限にしなきゃならんのにッ!



 ◇◇◇◇◇



 私は魔術師部隊に所属する女魔術師。

 自慢じゃないけど私の魔術の腕前は高い、部隊でも十指には入るんじないかな? そんな私でも目の前の化物共には恐怖する。一体一体が常識外れの強さを見せてるから。鉄壁と名高い守備隊が軽々と宙を舞い吹き飛んでいってる。

 守備隊の連中が成す術無く蹴散らされているのを見ると、背筋に冷たいものが流れる。


 でも、私達には逃げ道が残されているから危機感がイマイチ。何故って、すぐ後ろに下がれば陛下の力による不可侵領域になってるから。そこまで逃げ込めば安全だから私達にはイマイチ危機感がない。

 その所為か私達にはここぞという時の力に欠ける。死力を尽くす一撃ってのがないんだ。

 だからって直ぐに逃げ込む訳にはいかない。目に映る脅威は民の不安を煽るから、そうなれば不可侵領域も危うい。


「隊長、このままじゃヤバいですよ! 何か考えはは有るんですか!?」


 私が話しかけたのはこの部隊の隊長をしている男。いつも偉そうにえばり腐っては部下達を無茶な任務に放り込む鬼の様な男だ。只、実力だけは確かだったりする、実力だけは。


「ええい、奴はまだ来とらんのか! 奴さえ居ればなんの問題もないわぁ~」


 はぁ~、私はこの男の実力だけは確かって言ったけど、あくまでもそれは個の力の話、部隊を統率出来る力はまるでない。皆無と言っても良いかな、なんで隊長やってるんだろ?

 この男の言う奴とは、魔術師部隊最強の女ジャネット・ラ・ピュセルのこと。


 ジャネットは見事な銀髪をショートカットした少女で丁度二十歳ぐらい。白銀の鎧を身に纏う姿は、凛とした立ち居振る舞いの彼女によく似合う。訓練を受けた騎士、或はキチンと教育された王侯貴族のようだ。

 端整な顔立ちは美しく、金の瞳は一目見てしまえば吸い込まれ二度と抜け出せずに溺れてしまいそう。一言で言えば超が付く程の美人さん。


 とても力持ちには見えない細身の体から捻り出されるパワーは、ムキムキな守備隊の隊長など比べものにならない程強く、繰り出す剣戟は武神を思わせる。

 そんな彼女が魔術師部隊に所属するのには訳がある。それは、彼女は武芸百般だけど、それ以上に魔術を得意とするから。彼女の内に秘めるマナ量は計り知れないの。


 先に彼女が魔術師部隊最強と言ったけど、ジャネットはその程度では収まらない。私は彼女こそがこの都市の頂点に君臨するべき女性だと思っている。

 目の前のこの男など問題にもならず、どの部隊の部隊長よりも強く、王よりも聡明で、誰もが尊敬し憧れを抱く。

 剣の腕も魔術も使いこなし前線に立ち、指揮官としての実力も兼ね備えてる。訓練で見せた彼女の指揮は見事だったな。


 端的に言い、彼女は天使だ。この世に天使が居るのならば彼女こそがそうなんだと思わせる。その姿は光輝を纏っているようにすら見える。気がする。そんな女性なの。


 非の打ち所の無い女性。そんな彼女が何故隊長でないのか? それは単純に彼女が入隊したのがつい最近の事だから。実力を知ったのもついこないだのこと。

 彗星の如く現れて、瞬く間に皆を魅了した。彼女は、神様が私達を救おうと遣わされた救世主だと言われても不思議じゃない。

 隊長がジャネットを頼るのは彼女の実力を認めているだけじゃなくて、彼女にデレデレにデレているから。ホント、なんなんだろうこの男、ちゃんと仕事をこなして欲しい! 隊長の座をジャネットと交代してくんないかなぁ。


 そんなどうでもいい事を考えてたら後方から歓声が上がった。

 見なくても分かる、彼女が来たんだ。戦場を駆ける戦乙女、ジャネット・ラ・ピュセルが!


「よっしゃ来たか! これで勝ったな」


 隊長がそんな事を言ってる。浮かれてんなぁ~、と思わなくもないけど実は私もそう思う。

 心なしか皆の気力が向上してるような気がする。かく言う私も。


「皆恐れることは有りません! 私の後に付いて来てください。主は常に我々を見守ってくれています。皆、恐れずに進めぇ――ッ!」

「「「おぉおおおおおぉぉぉ!!!」」」


 魔術師部隊の皆を煽動して敵中へと駆けるジャネット。


「おいッ! ジャネットッ! 突っ込むなッ! 魔術師を突っ込ませるなッ!」


 あ、近衛の隊長が叫んで慌てて追いかけてる。

 近衛は私達魔術師部隊の護衛役として同行してるから突っ込まれると困るんだよね。

 でも心配はご無用、だって、指揮してるのはあのジャネット・ラ・ピュセルなんだよ。彼女の指示に従ってれば勝てるんだって!

 確かに魔術師が前に出るのは非常識だとも言える。でも、魔力障壁を持つ魔術師が前へ出て壁役を買って出ても悪くないんじゃないかな?

 非力な魔術師が前に出ても物理攻撃力は皆無なんだけど、その点は後に続く守備隊や遊撃部隊に任せる。そして至近距離からの大火力で敵を殲滅する。悪くないと思うけどなぁ。


『お、おい! なに魔導士部隊が突進してんの! 戻って、戻ってくれッ!』


 おお、王様も焦った声を出してる。でも心配はいらないんだって、ほら、魔物の群れに亀裂が入った。ジャネットが駆け抜けた場所に道が出来てる。



 ◇◇◇◇◇



 私はジャネット・ラ・ピュセル。

 君主の命を受け、首都を護るべく魔導師部隊に入隊した者です。その後数日で己が絶大なる力を衆知させました。


 教会にて日々の日課である礼拝をしていると、皆が慌ただしく動き始めました。

 察するに、都市の周りに群がりつつある魔物の討伐命令が出たのでしょう。

 群がる魔物達はかなり強力で並みの戦士では太刀打ちできません。このままでは犠牲は甚大となり、都市の不可侵領域が著しく狭まることが予想されます。無視するには危険な状況でしたので仕方がありません。

 ですが、


「はぁ、何も祈りの最中に命令を下さなくとも……」


 日課の祈りを邪魔されたことに多少の苛立ちを感じなくもありませんが、無視する訳にはいきません。

 それでも神への祈りを疎かにはできず、出来うる限り早く終わるよう祈りを捧げます。

 この祈りの間にも犠牲者が出てしまうかも知れませんが、神は皆を見捨てることなどはありません。善人であるならば神がお護り下さるでしょう。


 ああ主よ、今日も健やかに子らが過ごせますように、日々の糧を得られますように。皆が無事でありますように。


 と言う訳で祈りを終わらせ、都市と戦場との境、防護壁へとやって来ました。

 ……防護壁? 街壁? 只の塀では? ……それはさておき、


「やはり苦戦していますね」


 軍は陣を敷き戦略を以て魔物と相対します。ですが、陣形は繊細さに欠け乱れ、不測の事態に対応しきれずに崩壊しています。一目で修練不足だと感じ取れます。ハッキリ言って素人の寄せ集めを急遽拵えたかのような雑な陣形。これでは勝てるものも勝てません。

 王には自らの意志を配下に共有させるスキルがあるのですが、どうやらうまく機能していないようです。でなければここまで乱れた陣形を敷く事はないでしょう。

 ちゃんとした訓練はしているのでしょうか? 私が参加した訓練ではもう少し秩序ある動きをしていたのですが……。

 やはり実践経験が足りていないのでしょう。経験は最も重要な勝利条件だとも言えますから。


 魔物は筋骨隆々パワータイプ、細身なスピードタイプ、気配を消し近づく暗殺者タイプ、火力重視の魔術師タイプ、補佐に特化したサポートタイプと多種多様のようです。

 これらと力の劣る人間が渡り合うには連携することが必要不可欠です。ですが現状連携が取れていないので勝ち目はないでしょう。テコ入れの必要があります。


 私が直接指揮をとり前線へと赴けば問題なく撃退可能です。ですが、少々様子を見ることとします。

 彼等から見れば私は絶対的な超越者となります。それ程に実力差があります。その私が容易に手を貸せば彼等の成長の妨げとなり得ます。都市を護るよう頼まれてはいますが、私が一から十まで手を出すわけにはいかないのです。

 彼等には彼等なりの成果を出して貰わなければなりません。そうでなければ何時までも私のような絶対戦力者に頼る事になってしまいますから。

 と、思っていたのですが……、


「はぁ〜、やはりムリなようですね。完全に陣は崩壊、領域内へと逃げ込む者も多数出てきましたね。仕方がありません、私も出ましょう」


 彼等に褒めるべき所は有りませんでしたが、様子見は終わりとします。これ以上は無駄に犠牲者しか出ないでしょうから。

 ここまでくれば彼等なりに自らの欠点が見えたはずです。欠点の改善方法などは後ほど考えるとして、今は目の前の敗戦濃厚な戦況を打開するとしましょう。


 数十体群がる魔物を前に、本来なら陣形を立て直すのが先決でしょうが素人に急な立て直しは不可能です。完全に崩壊していますしね。

 既に敗けを受け入れ士気はガタ落ち、先ずは圧倒的な力で相手をねじ伏せ士気を高めることとします。

 私は自慢の白馬に跨り、群集の隙間を素早く駆け抜け、出会い頭の魔物を銀光一閃のもとに斬り伏せます。

 断末魔すら上げることなく宙を舞う魔物の首を見た者が喚声を上げています。

 いくら攻めても倒せなかった魔物を、私が一振りで倒したのです、彼等には私が希望に見えているのでしょう。

 これで上手く士気を上げることができたようです。このまま魔物群のど真ん中を突き進み二分しましょう。

 普通はそんなことをすれば敵に囲まれてしまいますが、私にとってそれは何ら問題になりません。


「皆恐れることは有りません! 私の後に付いて来てください。主は常に我々を見守ってくれています。皆、恐れずに進みなさいッ!」


 真っ先に後に続くは魔術師部隊……、って、あ、あれ、え? 魔術師部隊!?

 魔術師が真っ先に先頭に立つのは間違っていませんか?

 魔術師とは後援部隊、背後から援護するのが役目。その魔術師が護り手が居るにもかかわらず先頭に立つなんて聞いたことがありません。

 い、いえ、確かに私の所属は魔術師部隊なのですが、正確に言えば私は()()剣士なので何の問題もありません。ですが彼等は純粋な魔術師です。まさか魔術師が先頭に立つ私の真後ろに続いてくるとは誤算でした!


 魔術師には魔力障壁なるものがあります。

 魔力障壁とは物理、魔術共に防ぐべく物質化したマナで障壁を創り出すものです。

 強度は使い手の魔力量や操作技術に依存します。そして魔術師部隊の面々の持つ魔力量も操作技術もまだまだ未熟、逆に魔物側は生まれ持つ才能があり、且つ魔力量は膨大です。並の魔物より遥かに上位に位置する存在でしょう。

 魔物の攻撃は此方の障壁を突破し得るものですが、此方の魔術師に魔物の障壁は突破できません。

 ……仕方がありませんね、私が魔物の魔力障壁を砕きながら進むとしましょう。彼等を護りながら戦うとなると少し面倒ではありますが……


 私は片っ端から魔物の障壁を砕きながら進んで行きます。そのおかげか後に続く魔術師部隊の魔術で魔物達に多少のダメージを負わせることができているようです。

 更に続く近衛部隊により魔物を押し留めることに成功しています。

 私は左右に別れた魔物の群れの片側に強力な魔術を放ちます。

 放つは『浄化の接受、聖女の厳正』、これは聖人や神人と言った者専用の第四位階の神聖魔術。術者の視界内で効果範囲を定め、範囲内に収まる魔を秘めた者に対して絶大な浄化の光を足元から浴びせる魔術なのです。

 魔物達は大地から放たれる光に呑み込まれるとその輪郭を崩し、次第に小さくなり最後には消えていきました。これで片側が一気に片付いたことになります。


 残りは皆さんに任せましょう。それぐらいはやって貰わなければなりません。何故なら彼等が街を護るからこそ王の威厳が保たれるからです。それは不可侵領域を維持するに必要不可欠なこと。

 私もこの都市の軍に所属してはいますが、あくまでも派遣されているにすぎません。


 天空に現れたダンジョン、そこから排出される魔物はどれもが強力なものばかりです。恐らく、システム上の魔王に迫る力を持っていると予想されます。

 それでも皆さんにはそれらを退けるだけの力を身に着けてもらわなくてはならないのです。


 ですが問題は有ります。それは世界の抑止力と揺り戻し、これらの現象は世界を大きく変動させる力に対して起こる現象です。世界が生まれ持った自己防衛システムであり最強のセキュリティなのです。

 世界を変貌させる程の強い力が生じると抑止力が働き変貌を抑え、そして変わってしまったものには揺り戻しにより戻されるのです。

 あまり力を付けすぎるのも問題となるのです。


 ところで疑問が一つ、世界にダンジョンを創り出し変貌させた力には働かなかったのか?


 結果を言えば働いています。

 神が人類に与えたシステムはこの世界の抑止力と揺り戻しの力を利用しているものなのです。

 魔物側にも与えられたシステムだと聞き及んでいますが、それでも人間が魔物に対抗し得る力を与えているのはシステムなのです。神が二つの世界の自己防衛システムを変質させ利用しているのです。


 ですがそれは完璧なものではありませんでした。1つの誤算が有ったのです。

 それは魔物側にもシステムを適用した代わりに、魔物側の世界の力が流れ込んでいるということです。

 微々たるものですが、魔物をこの世界から追い出そうとする強い力に働くようなのです。

 この世界の管理神はこれを放置、面白がって見物しています。

 そのせいもあり、強大な力を持つ私にも抑止力が働く可能性があるのです。


 あっ、ほら、目の前に厄介な相手が……




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