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俺の彼女はダンジョンコアッ!  作者: やまと
1章
25/78

鬼人 天一翔奏

 あぁあああ、激痛が走る!


 俺は魔物風情の一太刀を浴びてしまった。口惜しくも見事な一太刀だと言える一撃だった。

 深々と袈裟に斬られた身体から生命維持に必要な何かが抜け落ちていく。

 立ち続けることができず俺は倒れた。

 深い傷から大量に流れ出す熱い血液が大地に広がっていく。


 痛みに必死に耐えていると、いつも俺の周りをウロチョロしている連中の叫び声が聞こえた。


 ――煩わしいッ!


 俺を気遣い叫ぶ周りの声、しかしそれはまやかし。

 奴等から感じ取れる感情の中には、俺を心配するモノも確かにある。だが、それだけではなかった。

 それは怒りだったり、殺意だったり、焦りといった負の感情。あまつさえ妬み、失望など俺へ向けたものまであった。


 数多の感情が俺の身体に絡みつきく、そして痛みの質が激変した。

 それは全く別種の痛み、骨が砕け身は焼かれ筋が裂け、血が沸き脳がかき回される。そんな感じの痛みが全身を駆け巡っている。


 ――鬱陶しいッ!


 身体に纏わりつき離れない負の感情が鬱陶しい。

 自分の意志に関係なく負を吸収していく。

 ねっとりと身体に付着して離れない。ドロドロとしたものを少しずつ吸収していく。

 その度に身体の痛みが増し変貌を遂げていく。まるで俺が俺ではなくなっていくようだ。

 吸収が止まらない!


 ――やめろッ!


 やめろ、負の感情を俺に押し付けるなッ!

 どんなに願っても痛みは止まらない。

 頭の中で何かが響き渡る。視界は狭まり真っ赤に染まっている。

 そんな中、霞む視界に無数の文字が浮かんでいるのに気づいた。

 猫人や犬人、豚人に翼人、狭まっている視界には収まり切らない程の種族の名前だった。

 その中に一つ、気になる種族名が。


 ――鬼人ッ!!! 


 鬼人の名を認識した直後、身体の痛みが激増した!

 ドロドロの感情はいつの間にか綺麗に吸収し終わっていた。

 代わりに何か熱いエネルギーの塊が俺に注がれていくのが分かった。

 それは暖かく力が湧き上がってくるような、希望に満ちたモノだった。

 意識を失いそうなほどの痛みだったが、ようやく痛みが引き始めた。


 嗚呼、気分がいい。

 まるで別人に生まれ変わったかのようだ。

 先の深手はいつの間にか癒えていた。代わりに俺の周りにはウロチョロと鬱陶しかった連中が転がっている。

 何だ死んでいるのか?

 誰だったか? もう名前も思え出せないな。

 俺が吸収したものの中に、奴等の生命に必要な物も含まれていたってことか?

 悪いことをしたと思わなくもないが、俺には俺の目的があり、その為には誰を犠牲にしても厭わない。

 ふと前を見れば敵である鬼人が立っていた。


 魔物は殺す!


 鬼人が小さく見える。俺の力がそれだけ高まっているのだろう。

 力が湧き上がってくる今なら、この手に持つケルトハルルーンの真の力を発揮できるかもしれない。であれば鬼人など敵ではない!


 ケルトハルルーンの穂先からは常に毒液が滴り落ちている。

 これは本来の力を封じる為の封印だ、本来の姿は毒など関係なく綺麗なものだ。

 封じていなければ俺自身がコイツにやられてしまうからだが、……試してみるか。

 俺は毒液を払うがために強く柄を握り一振り。

 毒液から解放されたケルトハルルーンがその真価を示す。

 穂先から順に熱を帯びてゆく。次第に熱により槍全体が赤く染まった。


 この姿こそがコイツの真の姿だ。槍の全身から熱を発し続ける魔槍ケルトハルルーン。

 その熱は地に着ければ大地を溶かし、水に浸ければ忽ちに蒸発させ水上爆発を起こさせる。

 使い手すらも焼き殺すが、今の俺ならば耐えられると自覚している。


 この力で魔物を殺すッ!


 俺は仲間内で口論していた鬼人に熱する槍を振るう。

 この鬼人の属性が火だと言うが、そんなものは関係ない。

 俺の魔槍が奴の耐性を上回ればいいだけの話だ。


 俺達は激し攻防を重ねる。

 途中人間の邪魔が入ったが、今の俺の敵ではないようだった。

 膨大な力を手にして少々扱いが難しい。それも徐々に慣れてきた。

 人間の持っていた剣を焼き切り大技を叩き込んでやった。


 一度の【暴熱狂渦衝(ヤケタダレテシネ)】では死ななかった。

 俺は再度暴熱狂渦衝(ヤケタダレテシネ)を放ち止めを差す。


 が、愚かにも鬼人が避けもしないで人間を庇い傷ついたようだ。

 こんな決着とはな、少々拍子抜けだ。

 止めをさそう。


「あ、天一……、テ、メェは……、じ、自分の、事を……良く……見、るんだ……」


 あの人間は何を言っている?

 俺を見ろ?


 …………ナンダコレハッ!!!


 ふと見た俺の手は、俺の手じゃなかった。

 俺は俺の身体を見る。


「ア、アァアアアアアアアアアアァァァァァ――――――」


 違う、これは俺の身体じゃないッ!

 何だコレは! 何なんだこの身体はッ!!! これは俺じゃないッ!


 俺の身体は嘗ての身体と似ても似つかないほど変貌していた。

 身体は大きく太く、手足は伸び、額からは二本の鋭い角が生えていた。


 ――ウソダッ!!!


 俺は俺自身がぁ、あれ程憎んだ魔物に成り下がったと言うのかッ!


「ガァアアアアァァァァ――――――」


 混乱する。頭が考えを放棄している。

 魔槍を出鱈目に振り回しても俺の変貌は無かったことにはならなかった。

 魔物は殺す。だが、俺自身がその魔物に成り果てた。


 俺は俺を、コロスノカ? 


 分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない!

 どうしたら良い?どうしたら良い?どうしたら良い?どうしたら良い?どうしたら良い?


 ド――スレバイイィ――ッ!


 陽葵(ひなた)、陽葵、陽葵、陽葵ぁー!

 俺は…、俺は、お前を殺した魔物になってしまった。殺すべき魔物になってしまった!

 陽葵、俺はお前を殺した魔物に復讐する為に今まで生きて来た。

 だが、その俺までお前の仇になってしまった。

 俺はどうしたらいいんだ!?

 教えてくれ陽葵、誰か俺に答えを教えてくれッ!


 ………………

 …………

 ……


 ソウダ、コノヨスベテヲコロセバイイ


 陽葵の居ない世界に意味など無い。

 なら、俺がこの手で世界を殺す!

 最後の一人になるまで殺し続け、そして、そして最後に俺は俺を殺すッ!

 それで復讐は果たされるんだ。

 そうだ、それこそが俺が望んだ復讐だ。

 先ずは手始めに眼前の生物の息の根を止めてやる!


 決意を固めた俺の視界に鬱陶しくも点滅するモノがあった。



天一翔奏(あまいちかなた)が吸収したオドを元に、天一翔奏の役割(ロール)を改編します。


 ……………………【英雄】から【復讐者】へと改編しました。


 更に、天一翔奏の決意を受け更なる改編を行います。


 ……………………【復讐者】から【魔王】へとロールを改編しました。


 尚、【魔王】のロールの影響を受け、(ジョブ)が変更します。


 【槍聖】から【槍魔】へと変更します。


 大幅な変更により多くのスキルも改変します。


 変更:

 【槍術】→【槍魔術】

 【槍聖術】→【上級槍魔術】

 【身体強化】→【身体大強化】

 【肉体強化】→【肉体大強化】

 【思考加速】→【高速思考】

 【熱耐性】→【熱変動耐性】

 【毒耐性】→【毒耐性・大】

 【治癒能力向上】→【超速再生】

 【火魔術】→【火炎魔術】

 【地魔術】→【大地魔術】


 追加:

 【魔闘気】【魔物喰】【人喰】


 更に固有(ユニーク)スキルが与えられます。


 固有スキル追加:【憤怒之王】


 以上で全ての改変が終了しました≫


 ハッハハハハッ――ッ!


 神が俺の願いを叶えてくれたのか?

 魔王、俺の望みに相応しい役割だ!

 いろいろと調べたいところだが、今は戦闘に専念しよう。

 

 俺は眼前で膝をつく鬼人へと魔槍を突き付けた。




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