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続々)生き物係ですが、船が難破して辿り着いたこの星を守り抜く覚悟です。  作者: 培尾舛雄
【カミラ編】 第一章 太陽フレア
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その4 作為の証明

タローが口を開いた。「ここまで磁気嵐が深刻になると、何らかの対応が必要になる。このところ、特定の太陽黒点の活動が活発化しているのだ。」


「だいたい一ヶ月間隔だよな。」これはマーコット姉さんの右腕ゾットだ。日々の現場作業で、通信障害が身に染みているらしい。

「そうだ、太陽の自転とこの星の公転周期の兼ね合いで、この星がその黒点と向き合うのは一ヶ月弱の周期になる。そして記録を遡れば、回を追うごとに磁気嵐の威力が増しているのが分かる。太陽フレアの規模が大きくなっているわけではないぞ、放出された荷電粒子(プラズマ)の位置が、地球の公転軌道に重なるようになってきている。」


驚いた。「そんな! 毎回重なるなんて、おかしいわ!」

続くタローの発言は、聞く者を驚愕させるに十分だった。「まるで徐々に合わせてきたように見える。そう、これは作為的(さくいてき)と言っていい。」


作為的(さくいてき)だと? 確かなのか?」父様(ちちさま)が聞き(とが)めた。

「太陽フレアを利用して、この星に害をなそうとしていると?」カズラ兄貴も、事の重大さに気付いたようね。

「そうなのかも知れない。詳細に調べたいところだが、間もなくその黒点は太陽の裏側に回る。また地球から観測できるようになる時点まで、待たねばならんだろうな。」タローが言う。


「次に、その黒点が視野角に入ってくるのは、いつかしら?」

「二週間後だな、その頃にできれば搭載艇を上げる準備をしておきたい。」

「地上からでは、観測できないんだな?」これは父様だ。多分、この分野に(うと)い者たちを代弁したのだろう。


「そうだ、外気圏から常に太陽を見ているのが望ましい。太陽フレアによる赤外線や可視光は、角度が合っていれば、つまり昼間なら地表からでも観測が可能だ。光速で伝わるから、八秒後には判る。だが地上の観測点が夜になれば、月の反射で見るしかないからな。」

「夜だと、月が明るく輝くわけだ。無常の月だな。」とカーク、あんたにしては詩的な言葉を吐くじゃないの。


「だから外気圏にいて、常に太陽を向いている必要がある。大型ボットでも観測できるが、もし電波障害が発生すれば情報を共有できない恐れありだ。誰かが搭載艇で上がるのがいいだろう。」


「うーん、その時に太陽フレアで放出された荷電粒子(プラズマ)の量と方向性と広がり、それと地球の軌道との相対関係を測定するのね。本当に地球を狙っているのか、そして被害の大きさも予測できる。」私が、父様からの質問の答えをまとめた形になった。


「八秒後に判れば、だいたい二日後に届く荷電粒子への準備ができると言うことね。」うん、アカネも理解している。流石にあの娘も理系女子(りけじょ)だわ。今の話を完全に理解できたのは、私とアカネだけね。


ここで父様の提案だ。「カミラは、よく分かっているようだな。通信障害もあるので船には誰かが乗ったほうがいい。二週間が過ぎたらお前たち四人で、船で上がってくれないか?」

「えっ、四人?」それって、私たち最初の子供たちのこと?

そうしたら、カークの声が控え目に流れてきた。「残念だがオヤジよ、俺には宇宙で出番がない気がするぞ。」


「そうか? お前が一緒なら皆も頼もしいと思ってな、」って言ったけど、ちゃんと考えて言ってるの、父様!

カズラ兄貴は指揮官として頼りにならないこともない、ワタルの賢者としての魔法の腕は使えるかも。今のところ科学的に事を理解しているのは私、だけど脳筋のカークは宇宙空間では使えないわよ。


 ◇ ◇ ◇


結局、カークが辞退したので私たち三人、そしてワタルがマイカちゃんを連れて行くと言い出した。私が行った方がいい気がする、とかワタルの横で口説いたらしい。

あの歳で、魔法の腕前はかなりのものだと聞くし、クレア母様の指導で高度な技も使えるとか。まあ、可愛いから許すわ。

魔法ならサホを連れて行った方がいいと思ったけど、ワタルが不在の治療院には回復術師が必要なんだって。


あと二週間は、地上で工事に専念しよう。

私たちが搭載艇で上がったら、戻るまで鉄塔の工事は中断。獣人族の技術者には、街の地下配線工事を手伝わせることにするわ。


次に地球を磁気嵐が襲うまで、今度は事前に太陽風の十分な解析ができる。本当に作為があるのか、それを証明しなければ。そしてこの際だから、あの可愛いマイカちゃんと一緒に仕事をして、お友達になれたらいいなって思ってる私だった。

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