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続々)生き物係ですが、船が難破して辿り着いたこの星を守り抜く覚悟です。  作者: 培尾舛雄
第三章 躍進! マーコット商会
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その3 変革の波

会議は輸出品談義から、ボットの利用に話が進んでいた。


「ボットの利用と言えば、まずは(あか)りではなかろうか、夜を迎えた街路にも家の中にも、灯りは必要じゃ。あのボットは、そうした灯りを作れたのう。電気の力といったか。」これはサホロの街の(おさ)、マサミ様だ。既に高齢だが、皆の信頼が厚い優れた指導者としていまでも街を治めている。そして今ではオヤジが、マサミ様の補佐のような仕事もしているのだ。


サホロの街の学校と治療院、そして騎士団の建物と周辺には、夜でも灯りがついている場所がある。ボットから給電して照明器具を光らせていて、マサミ(おさ)はそれを言っているのだ。


全てのボットには、動力源として超小型融合炉(マイクロ・リアクタ)が内蔵されていて、必要な個所にマイクロ波でビーム送電できる。

しかし、街中どこでも、或いは多くの一般家庭でも明かりが必要になれば、ビーム送電では限界がある。とすれば有線送電、つまり電線が必要だ。少なくとも銅線と絶縁体を用意しなければならない。


つまり銅山の開発から金属精錬加工の技術、片や可塑性のある高分子重合体の産業をこの星に起こさなければならなくなると言うことだ。いや、この星の今後の発展を考えた時、そもそも産業構造(インフラ)の基礎となる金属(メタル)高分子重合体(プラスチック)の産業は必須だ。


これは生き物係のオヤジにしてみれば、苦手な分野のはずだ。

さあどうする、オヤジよ。俺は期待と不安を込めて、ボットからオヤジの顔を眺めていた。


 ◇ ◇ ◇


しばらく沈黙があった。これはオヤジがタローと相談しているな。オヤジは、頭の中でタローと会話できる。どんな仕組みなのか、俺は知らないけどな。


やがてオヤジが口を開いた。「今日のところは、ここまでとしたい。まだ意見のある者、或いはこれから思い付く者のために、一週間の猶予(ゆうよ)(もう)ける。都度にボットからタローに意見を聞かせて欲しい。」


「いつでも、どこからでも構わない。何か言いたいことができたら、遠慮なくボットから話しかけてくれ。」と、タローが補足した。


「一週間が過ぎたら、再度この会議を開催する。その時には、この星からの輸出品、そのために必要な事柄、そして譲り受けたボットの利用方法と配布計画について、タローから皆の意見を取り入れた原案を示そうと思う。皆、忙しいところ有難う。」


これで今日の会議は終了となり、俺も会議から退出してボットの前から立ち上がった。

上手くまとめたなオヤジ。流石は長生きしてただけあるよ。


俺のオヤジは三人の母様やギランさんと同じ年恰好に見えるが、実はその倍くらい生きている。これは知る人ぞ知る秘密だ。


この星で仲間を待っていたので、若い体を保っている必要があったからだ。その仲間がこの星にやって来て、そしてオヤジをこの星に残し母星に帰って行った。その時からオヤジは、船の治療ボットによる若返り措置をやめた。母さんたちや俺たち子供と一緒に、この星で歳をとる事を選んだのだ。


そしてこの星に、これから大変革の波が来る。

社会が大きく変わるだろう、新しい仕事もいろいろ生まれそうだ。俺の第二の故郷 魔王国にも、その波が届く。民主化に向けて大きく舵を切ったアビオン様、先見の明がありましたね。


マーコット姉さんの配下たちの生活も、新しい仕事を得て安定すればいいな。そして、俺の婚約者アカネが学ぶ冶金(やきん)の道にも、大きな目標ができるだろう。そんな会議の余韻を、俺は楽しんでいた。


 ◇ ◇ ◇


数日して、俺はボットからタローを呼んだ。

「ワタル、何か提案(アイデア)が浮かんだか?」俺が喋る前に、タローが聞いてきた。

「そちらこそ、どうなのさ? 意見は集まっているの?」俺は、逆にタローに質問してやった。


「アカネとは何度か話したぞ、彼女は金属の分野が得意だからな。魚や肉の容器には、鉄と(すず)とクロムが必要だ。製造工場には、鉄でできた機械を並べる。そして機械を動かすのは電力、これは銅の電線を使って給電することになる。」


やっぱりか。「金属の精錬と加工の産業を興す必要があるな、これは遣り甲斐のある仕事だ。アカネも喜んだろう。」

「そうだな、興奮して夜も眠れないほどだと言っていたぞ。」

そう、アカネは物事にのめり込むタイプだ。


「ワタルは、何を考えた?」

「俺は、治療院と学校の情報連絡網(ネットワーク)を構築したい。つまり医療と教育の高度化だ。」

「なるほど面白い、話を聞かせてくれ。」


それから(しば)し、俺はタローとの意見交換に没入した。

(続く)

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