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十三遊戯  作者: 紅白饅十
8/50

爆発してどうぞ

 聖域うぃんぷキングダム(エターナル)966人VS聖域桜のフラワーズ1000人 クラン戦(フラッグ戦)試合開始。



 うぃんぷ陣営


 敵の聖域から三部隊が移動を始めたのをユウと僕、うぃんぷは見ていた。


「動き始めたな」

「部隊を三つに分けての攻撃…用水路と北門と南門の三方向から同時に攻めてくるみたいだね」


 正面からこちらの北門に近づく部隊、こちらの聖域を回り込むように移動を始める部隊、用水路方向へと進む10人ほどの部隊を確認した僕は伝音水晶に近づいた。


「じゃあ予定通り敵が接近してくるまでフラワーズのリスナー達を防壁魔法で守ってあげてね」

『了解ッス』

 伝音水晶を通して僕は同居民の一人イヌマ君にそう通達した。さて後は上手くいく事を祈るしかないね。




 そして数分後。フラワーズの攻撃態勢が整い。三方向から同時に攻撃が始まったおり、北門城壁前ではラン率いる部隊が攻撃を開始していた。


「魔法を打ちこんで相手の陣形を破壊するぞ」


 魔法で相手の陣形を乱す為にランが仲間にそう指示を出したが、そのタイミングでうぃんぷ陣営の高レベルプレイヤー達が対魔法の結界の展開を始めた。


「ランさん、敵は結界魔法で対魔法の守りを固めてきています」

 正直、ラン達にとって予想外の展開だった。


(てっきりウチの低レベルプレイヤーだけで北門前を固めていると思っていたが、まさかそれなりに戦える奴らが出てくるとはな…)

「おもしれぇ、なら接近して白兵戦で攻めてやるよ」


 ラン達が白兵戦に切り替えて突っ込んできたことを確認したうぃんぷ魔法部隊は…。




「来た来た、じゃあ予定通り防壁魔法を解除して用水路側に向かうッスよ」

「そうだニャ、巻き込まれないうちに早いところ離脱するニャー」

 そう言いながらうぃんぷ魔法部隊は結界魔法を解除し用水路方向に逃げて行った。




「はぁ!?」

 驚愕の声をランは上げていた。これから戦おうとしていた高レベル魔法部隊に自分達が近づいた瞬間、一目散に逃げ出したからだ。


「防壁魔法が解除されていく。キモオタ共、白兵戦から逃げやがった…」

「と…とりあえず逃げた奴らを追いますか?」

 戸惑いながらも若干キレ気味のランに問いかけるフラワーズリスナー。


「いや…このまま突入するぞ。あんなカス共構うだけの価値はねぇよ」

「それもそうですね」

 呆れたようにそう言うランに対してもリスナー達の同感だという雰囲気になっている中。うぃんぷ陣営のフラワーズリスナー達が武器を構えながらやってきた。


「ランさん、今日は敵対関係ですが容赦しませんよ」

 それなりの装備をつけていたからランには判断がつかなかったが、その発言からフラワーズが押しつけた低レベルリスナー達だと分かる。それに気づいたランはその瞬間、自身の顔を営業スマイルへと切り替えた。


「おう、今日は俺も容赦しないからな。全員かかってこい」

 こんな風に身内とはいえ、今は対戦ゲームで敵対関係であることをしっかり理解しているリスナーもいれば。


「キャァァ、ランさぁぁん握手してくださぁぁい」

 試合中にも関わらず、ゲーム無視で握手を求めてくるマナー違反なリスナーも存在した。


 さっきの逃げて行ったプレイヤー達とは違う意味で呆れたランは一応、大人の対応で接するが内心では荒れていた。

(は?何だこのクソ女。ゲーム中に何言ってるんだマジで。ゲームマナーも知らねぇのか?)


 アバターの見た目では判断がつかないがその発言から恐らくは低年齢層のリスナーだと分かる。ランはこの手のマナーを守らない子供が昔から嫌いだったこともあってかどうしても冷めた目で見てしまっていた。


(中学生以下の年齢層の低レベル帯のリスナーをあっちの陣営に押し付けたとはいえ、ここまで空気を読めない連中だったとはな。こういう連中は俺様の無双プレイでさっさと成仏させるに限るな)




 うぃんぷ陣営は北門上からラン達が自分達のリスナーであるフラワーズリスナー相手に無双する様子を見ていた。


「北から攻めてきたプレイヤーのステータスをアナライズで確認したところ、レベル44のプレイヤーが先頭になって攻めてきているようですゾ」

「南ノ方カラモ同ジ報告ガキテタヨ」

 目の前の光景と水晶を通して受け取った各所の情報を報告するゴン君とボークン。


「フラワーズのメンバー達だね。流石はシナリオ攻略組」

 当たり前だけどフラワーズの主要メンバーが全員レベル40以上であることは事前に調べていたらしい。このゲームのレベル上限が50である事を考えるとかなりの高レベルプレイヤーだね。確かに、シナリオ攻略組と言われるだけのことはある。


 因みに今、同居民の中でレベル40を超えているのは三人しかいない。フラワーズが運営する聖域『桜の國』の上位1000人の平均レベルが約35、うぃんぷキングダムの566人の平均レベルが約24である。プレイヤースキルでレベル差をカバーする事も可能だが、圧倒的に不利と言わざるを得ない。


「大変ですゾ。用水路から攻めてきたプレイヤー10人がガチでヤバいですゾ。全員、レベル40以上の高レベルプレイヤー。しかも対トラップ用のスキルも持っているようですゾ」

 用水路から入った緊急の連絡をゴン君が僕に伝えてくれる。


 レベル40が10人か。それは確かにヤバそうだ。用水路は細い道が多い。大勢が入れないが故に少数精鋭で攻めてきたみたいだ。


「なるほど、やっぱりそこが主力だね。クロさん?行ってくれる?」

「…(コクン)」

 ずっと僕の後ろに隠れていた全身黒鎧の西洋騎士の格好をしたプレイヤーが僕の返事に頷き、黙って用水路へと向かって行った。敵の主力が何処か分からなかったからクロさんを待機させていたけど分かったならそこに向かわせるまでだ。


 このプレイヤーはこの陣営…というより同居民最強のプレイヤーである。プレイヤー名はクロヤギで通称クロさん。この人なら敵の主力にぶつけても何とかなるはずだ。ここにいる全員もクロさんの実力を知っているのでその僕の判断に異論を唱える者はいなかった。


「うーんあと今現在、南門周辺にいるフラワーズリスナーはどんな感じかな?」


 南門付近の千里水晶を見ていたユウに現状の様子を聞きながら僕は近寄っていく。


「北門外と同じだ。一応、応戦してくれてるが殆ど接待ゴルフ状態だな。あとレベル差もかなり離れているせいで戦いになってない」


 千里水晶に映し出されていた南門外の光景は北門外同様、フラワーズにフラワーズリスナーが蹂躙されるものだった。憧れの桜花メンバーに倒されるなら本望と言わんばかりのやられっぷりである。


「まさに一騎当千だね。じゃあそろそろ北門と南門でアレを始めようか。ボークン準備してね」

「リョウカイ、皆ンナ魔法ヲ撃ツ準備シテー」

「はーい」「りょーかい」

 ボークンをはじめとしたウチの魔法職のプレイヤー達が北門上から下を見下ろせる位置に移動を始めた。


「南門ノ方ニモ20秒後、撃ツヨウニ言ッテネ」




 乱戦の中、ランは北門上から魔法攻撃が飛んでくることを察知する。

「!?城壁上から魔法攻撃が飛んでくるぞ。全員、かわすか防壁で防げ!!」

「「はい!!」」


 全員に号令を出したが、撃つつもりの魔法の種類を確認し、ランは少し拍子抜けした。

(何だ?低レベルの火炎魔法じゃねーか。そんな攻撃で俺をどうにか出来ると思っているのかよ。)


「「『アグニ』!!」」


 複数の火炎玉がラン達に飛んでくる。


(まぁ、俺のレベルなら当たっても大したダメージにはならないだろうな。ここは動画映えを考えて華麗に避けてやるか…)

 双剣を構えながら火炎玉を避け続けていると…。


「きゃ!?私達にも当たって…」


 火炎玉に当たっていたのはラン達にとっては相手陣営で戦っていた自分達のリスナー達だった。そしてその瞬間、リスナー達が輝き始める。


「ん?ちょっ!?」



 その輝きにのまれたランはそのまま爆発で吹き飛ばれていった。


 ドゴォォォォォォォン!!ドゴォォォォォォォン!!



 二ヶ所の爆発によってうぃんぷキングダムを攻めていた北と南のフラワーズ部隊が同時に吹き飛んだ。


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