うぃんぷ
あの血闘会議から数日後、サイバーヘブン内に存在する、とある個人サーバーに存在するとある城の中を歩く男がいた。
その男は城の中をスキップするようにルンルンと歩きながら鼻歌を歌っていた。そしてその男は城の門を開き広い城下町へ足を踏み出した。
僕の名前は佐藤宗二。大学に通いながら『うぃんぷ』という名前でサイバーヘブンに存在するゲームをプレイしているただのゲーマーである。更に言えば僕や僕の友達がゲーム内で生活する生活サーバー『エターナル』の運営主でもある。
僕の知名度?知っている人なら知っているといった程度かな。
だが、それも今日までの話。
今日は何と…超大手事務所に所属しているゲーム配信者チームであるフラワーズととあるゲームでクラン戦を行うことが決定しているからだ。
しかも僕達がこのゲームでフラワーズに勝てば、フラワーズが作り出した人気ローカルゲームのゲームMODの権利と使用権を譲渡してくれるという話だ。これは受けるしかない。
この事は僕の生活サーバーの利用者達であるプレイヤー…通称『同居民』達に通達済みだ。
そんなこんなで僕は意気揚々と同居民達との集合場所であるモアイ像広場に足を踏み入れた。
「さぁ皆んな、今日は他配信者さん達との大切な勝負なんだから気合い入れて頑張るんだよ」
元気いっぱいにモアイ像広場に足を運ぶと同居民の何人かは死んだ魚の目をしながら空を見上げていた。そしてその内の三人ほどこっちに近づいてくる。
「いや…今日でこの生活サーバーとおさらばかと思うと…流石に気分が乗らないでござるよ」
僕の運営するエターナルの同居民の一人、シュウさんが落ち込みながらそう言ってくる。
そう…何故、僕のようなただの個人サーバー運営者が有名配信者とコラボ動画を取ることになっているかというと…この生活サーバーを勝負の賭けに出したからだ。
サイバーヘブン個人運営サーバー
サイバーヘブン内では特定の料金を払うことでサーバーの一部をレンタル…もしくは購入することが出来る。
メリットとしてはそのサーバー内のプログラムを自由に書き換えることが出来る点と仲の良いプレイヤー達と触れ合える場が手に入るという点だ。
配信者と呼ばれるプレイヤー達の中にはこの個人運営サーバーで通称『生活サーバー』と呼ばれるものを作り、自分達のリスナーと触れ合い一緒にゲーム空間を作っている人達も存在する。
負ければここにいる全員、ここまで作り上げたサーバー…エターナルから追い出されるということだ。
「戦う前から弱気な発言は良くないな。勝てば何も問題ない。それに僕達が勝てば、逆にあちらさんが運営しているゲームMODが手に入るんだよ。もっと気合いを入れるべきだよ」
「勝てばって相手はサンク2のシナリオ攻略組ですゾ?そんな相手にサンク2のクラン戦を挑むなんて…無理ゲーすぎますゾ…」
今度はゴン君と呼ばれる同居民が泣き言をあげている。
だが、実際その通りだ。相手はサンクチュアリーゲート2というゲームのガチ勢チーム。
更にそのリスナーも恐らく選りすぐりのメンツを選んで連れて来て戦いに望むつもりだろう。
正面から殴り合えばこっちの陣営は全滅するのはほぼ確定かな?
「数モ足リテナイシネ」
こっちの変な喋り方の男はウチの運営するローカルゲームのプログラミングやプラグイン担当のボークンだ。
このボークンが言う数が足りてないというのはこのサンク2のクラン戦の対戦人数が足りてないという意味だ。
サンク2のクラン戦では最大1000人まで出場することが可能だけど…ウチの生活サーバーにいるプレイヤー数は602人である。つまりこっちの陣営全員が出場したとしても1000対602で戦うことになってしまう。
更に言えば一人一人にも予定があるので当然全員が集まる訳がない。何人来るかは分からないけど、500は最低来て欲しいところだなぁ。
ま、これに関しては向こうから助け舟を出してくれたし何とかなるかな。
「大丈夫大丈夫、親切なあちらさんがこっちに何人か人を回してくれるそうだから。人数の心配はしなくてもいいよ」
何と…桜花さん達がこっちの足りない人数分をカバーしてくれると申し出てくれている。本当に親切な人達だなー。
「いや…それ絶対全てあちらのスパイでござるよ…」
「内側ニ敵ガ増エタダケ」
確かにそういった思惑も存在するだろうけど…半分くらいは多分舐めているだけだと思うな。スパイ400人以上送るとか現実的じゃあないと思うからね。
「何人かはそうだろうけど。殆どは何も知らないただのリスナーだと思うよ。多分、戦力外通告を受けたただのヨワヨワリスナーさ」
数が多ければいいと言う話でもない。ま、なんとかなるでしょ。
「その情報を聞いても何も安心出来ないですゾ」
「もぅ…皆んなは心配性だなー。大丈夫だよ。僕達には幸運の悪魔と…伝説のプレイヤーがついているんだから」
そう…僕らはただゲームを楽しめばいいのさ。
一方その頃、リアルではとある女子大生が講義から自宅に帰ってきていた。