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動機不純ヒーローズ  作者: 古川モトイ
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分配会議

フェーンは前回も使った塔の発着場のようなところで出迎えていた。


「ようこそ賢者ボブ様。なんかずいぶんみすぼらしい格好に…あとお連れの方は何で泣いてるのですか?」


ボクは自分が未だに使い古しの雨合羽あまがっぱだと気づいて、王宮に呼ばれるような服ではないなと反省した。シーナはまだ泣いているし、ブラックドラゴンは不機嫌そうに鼻から黒い煙を吹いている。


「アリオーチ、鼻から煙を出すのは控えたまえ。わが国の賓客なんですから。賢者さまもお連れの方もこちらへどうぞ、お座りになって。お口に合うか分かりませんが飲み物が用意してあります。侍従長!」


フェーンは気が利くし、イケメンだし、王子だし、しかもそれを鼻にかけないし。それに比べてボクはと思い落ち込みそうになるがシーナが「うれしい」と言った妙に低い声が耳にこびりついて離れない。小躍りしたい気分だ。でも、あれはただ嬉しいだけで「OK」ではないのかもしれないと思うと、小躍りしたい心はピタッと着地した。アリオーチと呼ばれたブラックドラゴンは役目をとかれたらしく塔から転げ落ちるように消えた。人間には分からないドラゴンの言語でギャイギャイ言っている。


「なんかアイツら今日に限ってうるさいですね。すいません。」


そういうとフェーンは窓に身を乗り出して「来客中である!」と叫んだ。


「失礼しました。」


フェーンが言うとドラゴンの世話を担当していると思われる兵卒まで頭を下げた。


「いや…構いません。なんかこちらが悪かった話なので。ちょっと失礼してしまって。」


なんだかボクのせいでドラゴンや世話係まで怒られているような気持ちになって恐縮した。フェーンが首を振る。


「こちらこそ、お呼び付けして申し訳ない。北東の元『ザワ』と呼ばれた街が、東方の巨人族に潰された一件は聞きました。北方の警備隊から残党に襲撃されたと報告が入ったので。」

「あーなるほど。」


フェーンは慎重に言葉を選んでいる。


「実はあの土地を取れと言う声が我が国で膨らんでいまして。…正直、抑えきれません。」

「でしょうね。」


ボクはキスタラの市長と話した時の話をフェーンに語った。キスタラ的にはザワ領を通る通商路が確保されればいいだけだ。


「実際にはどの辺りでしょうか?」


フェーンが地図を開く、あまり正確ではなさそうだが話し合いに支障はない。


「多分この辺?」


元ザワの城があったところよりもだいぶ北だが、ザワがなくなった以上、無理にザワを通る必要もないだろう。


「その北の辺り、ボブ様が治められては?」

「ボク?」


そんなことは考えてもいなかった。


「人間の呼ぶところの『魔族』でボブ様に盾突こうと言うものはいません。前にこられた時に王都内の怪我人を治療していただいた一件は『賢者ボブの奇跡』と呼ばれて語り継がれています。ですから、タカシの町に薬屋の修行に行く者も多いのです。」

「あー沢山いるわ。」


それまで無言だったシーナが口を開いた。


「はい、ですからボブ様のお名前を借りれるだけでも、皆は大人しくなるでしょう。我々が今一番欲しいのは狩猟地と水源、そして農地です。」


どう返事するべきか悩んでいるとシーナが突いた。


「なに?」

「やれよ。」


泣き腫らした赤い目でボクを見る。


「やるならいいよ。」


そういえばシーナは反骨心の塊のような人間だったことを思い出した。両親、祖父とギルドとカウンスの実力者で、親の七光りが嫌で放浪していたのであって、よくよく考えたらシーナは政治好きな親の血を引いている。


「タカシの町はもう大丈夫だよ。しばらくはじいさんも居るだろうし、任せて離れよう。」

「やる…やるよ。」


フェーンが立ち上がった。嬉しそうに飛び跳ねる。


「やった!失敬!いや、これを喜ばずにおられようか!衛兵ー!!…違う、衛兵じゃない、侍従長?違うぞ?」


最終的にフェーンは「父上ー!」と言って部屋を走って出て行った。


「『いいよ』って…『いいよ』ってこと?」


シーナは顔を伏せたまま頷いた。

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