黒竜の背中にて
てっきり、黒い竜は過去に乗せてもらったシンギュシティかと思いきや、違った。いたって無口なドラゴンで、恐らくボクがドラゴンが喋れることを知らないと思っているのだろう。緑のドラゴンの先導でボクとシーナの乗るドラゴンは飛んでいた。最初、シーナはあまりの高さに怯えていたが、表情に出すのは悔しいらしく、ずっと華奢な体を強張らせていた。しかし、途中から慣れたらしくしばらくは空からの景色を楽しみ、さらにしばらくすると飽きた様子でブラックドラゴンの後頭部を見ていた。
「シーナ、結婚してよ。」
シーナがそうしている間、ボクは貯めに貯めた一言を言った。恐らく一時間ぐらいかかった。葛藤し続けた上でやっと搾り出した。シーナは黙っていた。
「…うれしい。」
ひときわ低い声。
「…なんでそんな低い声になるの。」
「喋りにくい。」
そういうとポロポロ泣き出した。
「ずっと一緒にいるのに。ボクのことは遊びかなって思ったら、急に皆の前で『愛してる』って言って元の世界に転移しちゃうし。恥ずかしかったし。」
「ごめん。」
そういうとシーナのほうからボクにすがり付いてきた。
「うれしい。」
今度は普通の声だけど泣き声だ。そしてそのままズビズビ泣き続ける。ボクは他に出来ることもなくて何度も「ごめん」と言いながら恐る恐るシーナの頭を撫でていた。シーナがすごく小さく感じた。
「ちょっと!アンアタらぁ!!人の背中でやめてくれないかなぁ!?こっちは真面目に仕事してるんだけど!!」
ブラックドラゴンが怒った。ちょっと口から火が出ていた。




