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巨人の長だろうか、ボクを見つけたということはこいつが賢者だ。
「若い賢者、私はゲボー。名は?」
「ボブ。」
ボクはとりあえず姿を現そうと思ったが、ゲボーに止められた。
「我々にとってお前は小さすぎる。下を見て話すのは面倒くさい。そのままでいい。」
ゲボーは真っ直ぐボクのいるあたりを見ているが他の巨人はきょろきょろしている。彼らは腰布のようなものを身につけて上半身はハダカだ。見る限り全員が男性に見える。
「ボブ、何をしにきた。」
「戦いを止めようと思って。」
ゲボーは手で低木をなぎ払うとその場に座った。周りの巨人もそれに倣う。近くで見るとますますでかい。
「人間と我々の戦いか?我々のほうに向かってきているのは人間だ。」
「あれは、ザワの街を討つための軍です。」
「そうか。我々ではないか。」
どうも巨人族は恐ろしく目がいいらしい。ボクにはまだカウンスの軍勢は見えない。
「人間はそんなに遠くまで見えません。北から来る彼らはあなたたちが進んでいることに気づいてません。」
ゲボーは表情の読めない顔で息を吐いた。
「ボブが話をしてくれ。」
「そうします。」
ボブはカウンスの軍勢が進みそうなルートに注意しながら北へ向かった。見つけた。
「カウンスの皆さん。」
姿を見せずに語りかけると動揺が走った。適当な木陰を選んで降りる。姿を見せて軍の前に出た。
「皆さん、ザワは陥落しました。戻っていただいて結構です。」
ざわついている。
「お前は?」
「ボクはボブです。老シーナの弟子で賢者です。」
その後、少しやり取りがあったが、最終的には信じてもらえた。カウンスの軍勢はカウンスに向かって引き返し始めた。ボクは取って返すと巨人が待っているところに戻った。
「人間たちは引き換えしたな。」
「そうですね。うまく行きました。」
ゲボーが立ち上がると巨人たちが一斉に立った。凄い土ぼこりだ。いつのまにか焚き火を囲んでいた翼のある魔族も焚き火の始末を始めた。
「あの方たちは?」
ゲボーに聞くと「自分で聞け」という。
「すいません、あなたたちは?」
翼のある魔族のリーダーらしき人間が進み出る。
「空の民だ、お前は賢者だな。」
「はいボブです。」
リーダーは頷いた。
「さっき聞いた。」
調子が狂う。
「空の民は先祖伝来の土地を奪い返しに来た。」
「はあ。」
「昔、人間に肥沃な農地を奪われた。」
「なるほど。」
後ろからゲボーの声がする。
「お前たちが農耕をしたという話は過去にも現在にも聞いたことが無いぞ。」
空の民のリーダーは嫌そうな顔をしている。
「…とにかく、我々はこの土地に正統な権利を持つ。」
要するに巨人族の金魚のフンだ。強そうにも見えない。
「そいつらは、ついこの前、ザワから南進した人間の軍勢に追い出された。」
ゲボーではない巨人が注釈してくれた。
「そして、オレたちにくっついてきたんだ。」
空の民は威厳を損なわないように胸を張っている。
「なるほど、南進したザワの連中は?」
巨人たちは全員一致で「知らない」と言う。
「まあ、モノのついでにあとで見てみますか。」
空の民は再び焚き火を始めた。巨人たちは自分たちの荷物から食物を取り出して食事を始めた。




