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動機不純ヒーローズ  作者: 古川モトイ
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丘の上

 夜の丘陵地帯をひたすら歩く。ボブとタカシの横に並ぶ屈強な男が時折手で制止する。その面倒見の良さそうな男は、時折夜の闇に響く獣の声や鳥の鳴き声の中には盗賊の暗号が混ざっていると小声で教えた。


「暗号の内容はギルドのトップシークレットだ。そして魔族は特に警戒していないようだな。」


そう話しながら進んでいると、前の方で動きがあるようだ。微かな光を頼りに目を凝らすと小屋に何かを投げ込んでいる。突入のようだ。2人にはタオルのようなものが無言で渡された。見ると全員が口元を何かで覆っている。2人もそれに従う。小屋の中からはシューシューと音が聴こえていて何やら煙が出るようなものを投げ込んだらしい。小屋の中からズルズルと引きずり出されてくるものは眠りこけた人間のようだ。同時に一回り大きい影も引きずり出される。魔族だろう。煙によって眠らされたようだ。幾本かの松明が灯る。引きずり出したモノの顔を見るためだ。ボブとタカシがはじめてみる魔物の姿だ。


「家族は全員いるがトンコロがいない!」


誰かが鋭く小さく声をあげる。


「足跡を探せ!」


ギルドマスターの号令に盗賊たちが地面を照らす。間も無く数人の盗賊が松明を消して一方向へ足跡を消して移動し始めた。ボブとタカシはその間も始めてみる魔物の形相に慄いていた。青みがかった浅黒い肌。下向きにつぶれがちな鼻。濃そうなヒゲは剃られている。全体的に太目の体格でずんぐりとして、暗くてよく見えないが禿げ上がった頭には申し訳程度に髪が生えているところもあるようだ。スネまである生地の厚そうなズボンを穿き、襟に毛皮が使ってあるチョッキのようなものを着ているようだ。引きずられた途中には浅めの布のキャップが転がっていて、途中で脱げたのだろう。


「こいつは下っ端の日和見魔族だ。こいつらだけで何かをすることは無い。」


誰かが持参したロープで眠りこける魔族を縛り上げながら言った。


「あー、チクショウ…クセーな…漏らしてやがる。」


睡眠薬が効いた事によって失禁したのだ。ロープを操る盗賊は何度もえずきながら作業を続ける。周りにいた盗賊は少し間を空けてその様子を見ているが風向きが変わると何人かは咳き込んだ。そうしているうちに鋭く笛が鳴った。足跡を追跡しているほうからだ。盗賊の一団の大半をトンコロの小屋の前に残してギルドマスターと御付きの数人、ボブとタカシは笛の合図のほうへ移動した。松明に照らされてみすぼらしい盗賊が死んでいる。ボブとタカシはこの世界にきてから幾度か斃れた冒険者を見てきたが、やはりあまり気持ちのいいものではない。


「ここで殺されたか。…時間がたっている。魔族の足跡を追え。」


ギルドマスターの号令に、その場に残った盗賊が「兄貴たちがすでに追ってます」と答えた。


 キスタラの街に帰ったのは夜が明けてからだった。


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