風林火山
「師匠!師匠!」
ボクは移動しながら師匠に呼びかける。
「お前、気持ちは分かるが、声がする場所が悪趣味なんじゃ。」
師匠が苦言を呈する。
「ボブ、本当にどこで喋ってるのこれ?」
シーナの声がする。
「キスタラと国境線の交渉を終えました。地図はキスタラの市長室にあります。ボクはザワを北進中だと思われる魔族を追います。」
「うむ、シーナを安全な場所まで連れたらワシが取りに言ってもええぞ。」
ボクは話をしながらドラゴンの飛び方を少し掴みかけていた。速い。
「そういえばボブよ、お主、どうやってこっちの世界に帰ってきた?」
「ああ、言うの忘れてました。ポーという賢者に連れ帰ってもらいました。」
「なんと!?魔族にそういう名前の賢者がいることは知っておったが…名前しか聞いたことが無かった。どんな人物じゃ?」
「アンデッドでした。」
師匠が唸る声が聞こえる。
「自分の体を何体も持っていて。改造して、胴体に小物入れとか作っちゃうタイプの。」
「凄いな。」
師匠はまた深く唸った。
「そのポーが教えてくれたんですが、ポーしか知らない賢者がいるそうで。ザワはその賢者がやったそうです。」
「それはまずいぞ。ザワにはカウンスから討伐軍が出ておる。魔族と衝突する。」
ボブは少し進路を西に修正した。カウンスよりに方向を変えてカウンスと魔族の軍勢の間に割って入ろうというのだ。そしてしばらくすると魔族の軍勢の侵攻が速い理由が分かった。
「師匠!巨人です!ものすごい大またで凄い速度で歩いています!何人も!」
ドーンドーンと地響きを立てて数十人の巨人が小走りに走っている。遠近感が狂いすぎて身長がどれぐらいかつかめないが、5階建ての建物ぐらいあるだろうか。その頭上を翼の生えた魔族が飛んでいる。
「魔族だと勝手に思っておったが、ザワを潰したのは巨人族か!」
「巨人族は魔族じゃないんですか?」
「はるかに東の地に住んでおるが、西に攻め入ったと言う話を聞いたことは無い。神話の時代からこの地にいるとされる強力な種族じゃ。」
「他に翼の生えた魔族もたくさん飛んでいます。」
「そっちはわからん。翼が生えた魔族なんぞ掃いて捨てるほどおる。」
そう話していると巨人たちが止まった。こちらを見ている。
「え?見えるの?」
思わず口に出た。巨人たちの中でもひときわ大きな巨人がこちらを指差している。
「若い賢者。」
急に呼びかけられた。体が大きいだけあって凄い声量だ。先ほどの足音もそうだったが世界が揺れている。
「こちらへ参られよ。」
言われなくても向かっている。
「話がしたい。」
そのつもりだ。




