無心
久しぶりのキスタラに到着すると、ボクはとりあえず元の姿に戻った。マントかローブが欲しい。薬屋に駆け込むとお金を貸してと頼んだ。
「ボブ!?…様…なんでここに!?」
なつかしい。オイデンさんだ。
「サマなんてつけなくていいからお金貸してよ、いつか返すから。」
ボクのお金は多分、移動中のシーナが持っている。
「お…おう、久しぶりに会って金の無心か…意外だな、金持ちになったかと思ってたのに。」
オイデンは腰に提げた自分の財布からお金を数えて「どれぐらい?」と聞く。
「マントかローブが欲しいんだ。」
「それなら、これ持ってけよ。」
オイデンは壁にかけてある雨合羽を下ろして出した。
「あ、これでいい!お金要らない!借りてくね!じゃあ!」
ボクはそいつをひったくるようにして着ながら走る。こういう時は両腕欲しい。
「やるよ!返さなくていいから!」
背後からするオイデンさんの声に、「ありがとう!」と答えながら微かな記憶を頼りにキスタラの市長のところを目指す。
「あ、ここだ。通して。」
2人の衛兵に阻まれる。
「市長さまになんの用だ。」
「こっちは賢者サマだよ。ザワの件について重要な話が…めんどくさいな。」
やっと着た雨合羽を脱いで、衛兵の頭上から奥へ投げ込む。
「お前何して…あっ!」
2人の気が逸れた瞬間にボクは姿をくらまして、雨合羽の中で再び人間の姿に戻った。
「え!?ま…待て!!」
ボクは衛兵に追われながら市長宅を走る。どこにいるのか全く見当もつかないが、途中、酒瓶を見つけたので壁に叩きつけて割る。栓を抜く道具を持っていなかったのだ。
「ちょっと眠ってて。」
衛兵の一人はすぐに眠ったが、1人はケロッとしている。高級そうなお酒だったが流石に2人眠らせるにはアルコールが足りなかったってことか。
「いや、でもアルコール直接作用してるから…こいつが異様に強いのか?」
「術に抵抗したんだよ!」
「あーそうか。」
市長の衛兵ともなるとなかなかしぶとい。
「もういい、下がっておれ。賢者さま市長にございます。」
市長がやってきたらしい。
「ザワの難民がタカシの町にやってきたんですが、タカシの町ではとてもあんな人数受け入れられないのでキスタラに向かうように説得しました。」
市長がため息をついた。
「なるほど。」
「あと、カウンスの老シーナがタカシの領地とキスタラの境界線をはやくハッキリしないと、逆にタカシに領地を切り取られると警告していました。」
市長は苦い顔をしている。
「ヤソヒネはどこへいった。この件はヤソヒネに任せたはずだぞ!」
ボクが走り回ったことで騒然としていた市長宅内はいつのまにか静かになっていた。
「…ひとまず賢者さま、市長室へ。」
ボクは雨合羽のまま市長についていった。




