ひと段落
ボクは言うだけ言うと、警察にマイクを返した。ここでいさかいを起こしている転生者たちは分別のつかない中学生ではない。結構な大人たちだ。マイクを返したけどもう一言言いたいことを思い出した。何となく警察の人を見るとマイクをもう一度貸してくれた。
「さっきボクを襲ってきた中学生は助けたけど、今後は手加減しませんからね!ボクだって命は惜しいんです!」
あと、どさくさに紛れてベンチコートを脱いで警察に渡した。
「これ、現金。拾ったんで。」
ルイスが車の助手席のドアを開けてくれたので、素直に乗り込んだ。背中に視線を感じながら、市庁舎前を後にする。
「あとはカウンスの連中がザワを上手いこと攻略してくれるといいんですがね。」
ルイスはガムをかみながら両手でハンドルを握っている。バスタードソードは後部座席に放り込まれている。
「聞いてみましょうか?」
「聞けるんっすか!?」
「実は…向こうと会話できます。」
ボブは集中するとシーナに声をかけた。
「なに?ボブ?」
「キミのおじいさんは何してる?」
「今、キスタラに向かってる最中。タカシの町にすら着いてない。」
「ああ、そうか、ノームの集落から帰ってるんだっけ。」
老シーナは孫娘のところに駆けつけるのは早かったが、孫娘を連れて戻るのは人並みの速度になってしまう。この状況だと仕方がないかもしれない。ルイスにそのように伝えると「そんなに遠い所だったんですか」と気のない返事が返ってきた。
「ほほう転生者の賢者はキミか。」
「はい。え?」
ボブは急に後部座席から話しかけられた。
「え!?誰!?」
ルイスが焦ってハンドルをきり間違えそうになる。対向車にクラクションを鳴らされる。
「わかんないかなあ?わかんないよね?」
ルイスが路肩に車を停めた。今度は後続車に鳴らされる。ルイスは「うっせぇ!こっちは今大変なんだよ!!」と怒鳴り返している。
「賢者さま?ですよね?」
後部座席に急に現われた男性は肌が妙に青白い。
「あなた…生きてます?」
男性は首を横に振った。
「ずいぶん前に死んじゃった。」
「ですよね?」
ルイスは「わー!きゃー!」とコワモテに似合わない情けない声を出している。
「ボクね、ポーって言うの。」
思い出した。白太子の元師匠だ。




