非効率
高校の校門に赤いワンドを持った7年生ぐらいの少年が立っている。
「やめろ!」
そのままの勢いで突っ込む。つむじ風に巻き上げられるように少年が上空に打ち上げられる。少年はワンドを振りかざすと「浮遊」と叫んで軟着陸した。
「ボブだな!裏切り者め!」
「どんな話になってるか知らないが、ボクは誰も裏切ってないぞ!」
少年はやたらめったら火球をばらまくので、丁寧に空中でそれを握りつぶす。生徒たちが騒ぎに気づいて集まってきた。
「ボクにはパワーがあるんだ!なんだってできるんだ!!」
少年が激昂している。
「そんなことは無い!力に溺れるな!」
姿を見せないまま少年に向かって叫ぶ。
「ボブの声?」
集まった生徒達の何人かが姿は見えなくともボクの存在に気づいたらしい。
「お前は卑怯だぞ!なんでお前だけ特別な力を持ってるんだ!なんで転生してまで世界の主役にボクはなれないんだ!!裏切り者!!」
肩で息をしながら少年は火球を打ちまくっている。少年を観察しながらその火球を潰していくと、急に別の事が見えた。
「やめろ!魔法を使うな!命を落とすぞ!この世界にマナはあふれてないんだ!お前の魔法はお前の生命力を削ってる!!」
怒りに我を忘れてワンドを振るう少年の命が消えかかっている。
「誰か!酒を持ってるヤツはいないか!誰でもいい!頼む、フタを開けてくれ!」
ボクは自分が泣いていることに気づいた。ボクだって英雄になりたかった。英雄だって勘違いした瞬間もあった。でも、実際には自分の世界に戻らされて中学生のおもりをしている。
「あるぞ!ここだ!」
校長室の窓から校長が酒瓶を掴んで身を乗り出している。ボブはガラにも無く大声で呪文を叫んでいる。校長は自分の手の中の瓶がグリーンに輝いて驚いているが、掲げたビンは放さない。祈る気持ちでアルコールを抽出し、術の力で少年の中枢神経にアクセスする。狙うのはアルコールによる酩酊状態だが、適量を超えれば即死する。ボブは自分の薬屋としての術の精度を信じるしかなかった。酒瓶から緑の光が放たれて少年の顔面を直撃する。
「かかった!」
ボクは我を忘れて姿を現した。倒れる少年を抱きとめる。
「誰か、何でもいいジュースでもスポーツドリンクでもチョコレートバーでも、お願いだ、ボクたちを助けてくれ。」
校門の前に煙が集まったかと思うとボブが現われた。泣きじゃくりながら脈を取っている。生徒たちは勢いに気おされて、急いでカバンを開ける。ボブは手渡されたそれらを右手で掴むと、端から緑色に輝いて生徒に吸収されていく。
「戻って来い!!やっと帰れたお前の世界だろ!?」
ボクは思い出した。薬屋には取るに足らない禁術があった。
「ヒール!!」
ボクの右手が沸騰しそうなほど熱い。元は手だった緑の閃光を少年の心臓目がけて打ち下ろした。




