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動機不純ヒーローズ  作者: 古川モトイ
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誤射

「何で撃った!?あいつはただの片腕のガキだし、あれはただの青いペンキじゃねえか!?」


ボクは目の前に滴るペンキを見ながら、弱々しく振り向いた。


「大丈夫、当たってないよ。警察には言わないから…早く逃げて。通報されちゃうかも。」


ボクを目がけて発砲した男は「恩にきるぜ」と言いながら、仲間に小突かれながら走っていった。ペンキを気にしながら上を見上げると、同級生達はとっくに逃げていた。発砲に驚いたのだろう。ペンキまみれはいやだったので、ペンキを全て振り落とした。


「シャツに穴開いちゃった。」


お気に入りの赤いチェックのシャツの背中の真ん中に拳銃で撃たれた穴が開いてしまった。


「また怒られるかな。」


ボクは自分が着ている服がずいぶん大きくてブカブカなことに気づいた。ベルトを無理矢理絞ってズボンを引き上げる。


「さてと。」


周りを見回すと老シーナの声が聞こえた。


「お主は元の世界に返されたようじゃな?」


ベンチを見つけて腰掛けると、目を閉じて集中した。あちらに残してきた自分の左腕から、シーナの荷物に隠れている老シーナに話しかける。


「はい、まずいことになりそうですか?」

「いや、シーナがお前の子供を身ごもっていないかザワの連中は調べたかったようなので、数人、くびり殺しておいた。」


呆れた。


「師匠、本当に殺したんですか?」

「ワシの孫娘のまたぐら開いてなんかしようという不届きものを祖父のワシが叩き殺して何が悪い。ワシの本体もその内、シーナのところに合流する。しばらくは問題なかろう。マリクという男も落胆しておるがシャムロウが保護しておるようじゃ。それよりも、ザワの連中がシャムロウからボブを送り返した術を使って、そちらの世界に人間を送り返しておる。そちらの世界の転生軸があう場所で虐殺を行って、転生者を大量に召還するつもりじゃ。帰還者たちは多少弱まるがこちらの世界で得た力を行使できる。」


ボクは薄っすらと目を明けてため息をついた。


「ザワの連中は何考えてるんですか?」

「タカシの町の接収と、魔族の領土の切り取りじゃ。」


その会話に割って入った者がいた。シャムロウだ。


「すまない。人質を取られた。ザワの連中の悪しきたくらみには気づいていたがはねのけられなかった。」


老シーナが慰める。


「賢者が人質を奪還できなかったのが良く分からんが、術を悪用したのはザワの連中だ。さほど謝る話でもあるまい。」

「マリクという男は金貨の換わりになる券を作ると言う発想を早くから持っていた。それは私の入れ知恵ではない。」

「でしょうね。」


マリクが地球で言うところの紙幣を作ろうとしていたのだと分かっていた。ボブが分からなかったのは『なぜ金貨ではいけないのか』であって、それを教えたのはマリクだ。マリクはいずれノームの職人の力を頼っただろう。


「また、私は老いた。眠ったらなかなか目が覚めない。恐らく寿命も近い。事を荒立ててザワを滅ぼしたとしても、私の死後にノームたちがどうなるか分からない。」


シャムロウの老いた声を責める気にはなれなかった。


「シャムロウ、転生軸について教えてください。」


ボクはベンチから立ち上がると自宅に帰ることにした。自宅に帰ると母が片腕をなくしてげっそり痩せたボクを見て悲鳴を上げようとしたので、母を眠らせることにした。テレビの前のローテーブルの上のゴミを強引にどかすと、自分のスクールバッグから適当なノートを取り出し、シャムロウの言う転生軸の仕組みを書き写した。


「そんな仕組みになっとったのか。」


老シーナが唸る。


「おおお!緑の稲妻が!」


シャムロウが声をあげる。


「気にせんでええ、ワシじゃ。シーナのところに到着したんじゃ。ということでボブ、ワシは左腕を取り戻した。シーナも無事じゃ。タカシの町を守る大義名分はワシにはないが、孫娘に手を出そうとしたザワの街は許さん。ワシはこちらでザワを叩く。ボブはそちらに送られた害虫を潰せ。」


話が決まったところで会話は終わったが、厄介ごとが増えた。シャムロウの術は恐ろしく複雑で、ボクは転生軸がどこになるのか予測ができない。当然、シャムロウも老シーナも地球の地理は分かっていないため「どこ」という話が通じない。そう悩んでいると母親が目を覚ましそうだ。ボクは部屋に転がっているウォッカを見る。何とか使えそうな気がする。ウォッカのボトルのフタを開けると呪文を唱える。ウォッカボトルは緑に輝いて、ビンの中の緑の輝きが煙のように母親に向かっていく。


「ママ、ボクはずっと昔に交通事故で左腕をなくしたじゃないか?忘れたの?」

「…う…うるせえ…そんなことお前に言われなくても覚えてる…」


母親は暗示に寝言で答えるとまた眠りに落ちた。ため息をつきながら、家の中のものを漁ると、ドッグフードらしきものがある。犬も飼ってないのになぜだろう?これを使って母親の肝臓を正常な状態に治療した。


「まあ、親孝行ぐらいはしても怒られないでしょ。」


丈の長いフード付きのベンチコートを引っ張り出すと羽織った。


「とりあえず、ちょっと出かけてくるよ。」


ボクはそういって家を出た。

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