インドから来ました。
なんともいえない結果だった。タカシの町に来ると変わったものが食べられる程度の認識だった。魔族の王宮にいたときにも感じたことだったが魔族は料理にあまり興味が無いようだ。
「賢者はいるか?」
薬屋ギルドへボブを尋ねてきた者がいた。
「はい。ああ、転生者の方。」
ボブはこの世界には珍しい黒い肌の人間だ。目の前の男性は負けず劣らず肌が黒いが、顔立ちはアジア系だ。
「お前が作ったスパイス食べた。満足は出来ないが美味しかった。料理作りたい。」
男はマリクと名乗った。インドからオーストラリアに留学していた大学生らしいが、校内の乱射事件から逃げようとして工事で掘られた穴に落ちたそうだ。
「私は戦うの向いていない。せめて美味しいもの食べたい。」
ボブは天幕を調達すると薬屋ギルドの横に屋台を出させた。マリクは薬屋ギルドの構成員ではないので中には入れないからだ。しかし、ボブが腐心していたスパイスの分類をマリクは一気に推し進めた。魔族は種族ごとに人間と味覚が違うこと、また一部の魔族にとって毒になるものや、人間には毒でも特定の種族は食べられるものなどがあることに当初驚いていたが、マリクは各種族に対する禁忌などを丁寧にまとめて書物にまとめた。マリクの屋台は繁盛し始めたが、マリクは金や銀で代金を受け取るのを避けているように見えた。
「なんでマリクさんはお金で受け取らないの?」
「強盗が怖いから。」
マリクは物々交換を主体に売買を行い、時には「カレー無料券」を発行していった。
「多分、カレー屋は儲かる。昔アルバイトしていたカレー屋儲かった。でも、儲かるの危ない。特にこの世界はお金は金貨や銀貨。少しだけ、必要なだけ持つ。」
ボブはスパイスを世界に売りたいと考えていたのに対してマリクは消極的だった。マリクは料理をさほどしていなかった料理素人のボブとは違い、元アルバイトとはいえプロの料理人だった。屋台を経営する中で各種種族ごとの味付けやノウハウを蓄積して、ボブよりも完成度の高いスパイスと料理を提供している。ボブはマリクが消極的なことに疑問を感じていた。
「マリクさん、そろそろ店を大きくしたら?」
「まだ早い。もう少し待つ。」
ボブはマリクが勉強熱心な努力家だと言う事も分かっていた。そして何かは研究しているようだ。ボブとシーナがマリクの店でいつものように食事をしていると、マリクが漏らした。
「ボブ、手先が器用な種族はいないか?」
マリクから何かを要求されるのは珍しかったので、ボブはツテを頼って調べると、山岳に住むノームという種族がかなり手先が器用らしい。彼らは人間とも魔族とも近しくない種族で、どちらも近寄らない土地で独自の生活圏を持っているという。
「ノームのところ行ってくる。」
「ウソ!?」
ボブはシーナと2人で旅支度をしてついて行く事にした。一部の良く出る薬は一旦市場に委託した。




