危ないお薬
駅前に出来た市場では地元で取れた山菜や果実、人間の領地から交易で持ち込まれた食料が並んだ。長屋が作られたので駅舎に住んでいた連中は全て長屋に引越しさせられて、酒場は駅舎の中に移った。そして酒場のあった天幕が市場というわけだ。
「じいさん、なんかアドバイスある?」
薬屋ギルドに飾られたグリーンワンドにシーナが話しかける。このグリーンワンドはボブに正体を見破られたカウンスの賢者でボブの師匠でもある老シーナの片腕だ。
「その土地で起きる自然災害についてよく調べておくことじゃな。あとは、交易が盛んになると金や銀が足りなくなる。そうしたときは一時しのぎじゃが塩が使えるぞ。」
老シーナはボブのように賢者の目を持っているから賢者ということに止まらず、本当に知恵者だ。ボブはタカシの領地内をくまなく調べて、治水の必要を感じてタカシに進言した。
「なるほどね。人足まわすから、ボブの指示でやってもらってもいい?」
力自慢のトロールや水仕事が得意なサファーギンが割り当てられた。ボブの指示をサファーギンが覚えてトロールと工事を進めていく。
「オレのことはエラスモって呼んでくれ。」
サファーギンの一人が水かきのついたてでボブに握手を求めてきた。
「よろしくおねがいします。ボブです。」
握手した手はひんやり冷たい。トロールのパワーがすごすぎて貯水池らしきものは1週間で完成した。
「大雨がくるとここに水がたまって街は安全です。多分。」
ボブはえらエラスモたちに礼を言ってふと考えた。考え事をしながらギルドに帰る。ギルドは拡張工事の真っ最中だった。
「どした?」
シーナが店番をしながら出迎えた。
「カウンスで失敗した下水。ここでは汲み取り方式なんだけど。」
シーナが首を振る。
「やめたほうがいいよ。じいさんから聞いた話から考えると、街が拡張するときにどうにもならなくなっちゃう。しかも、ここは魔族が多いから、トイレの大きさもまちまちだし。」
ボブは納得した。
「シーナの言うとおりだ。あと、この辺に向いてる農作物ってなんだろうね。」
そう話していると、外からブーブー聞こえてきた。珍しく争う声だ。ボブは駅舎の中のタカシの執務室に顔を出す。ブーブー行っているのはオークかと思いきや、普通に縛り上げられたイノシシだった。
「イノシシ殺すな!」
「イノシシ殺さなきゃ何食べるんだよ?」
「イノシシ飼って太らせる、殖やす、食べる!」
何頭かのイノシシを生け捕りにしてきた猟師たちと、それを見ていたオークたちが言い争っている。タカシとボブが同時に「あー」と言った。
「タカシ、これ畜産のことだよ。」
ボブがそういうと、タカシは懐からお金を取り出した。
「幾らいる?」
オークはタカシから資金を貰うとイノシシを猟師から買い取り、ボブの提言で、貯水池に近い場所を割り当てられた。オークたちはその土地にさっそく杭を打ってイノシシをつなぐと養豚場らしきものを作り始める。ボブはその作業が面白そうなのでシーナと見に行く。オークたちはロープでつないだ番のイノシシにナゾの草を燻した煙を嗅がせている。
「やばい、これイノシシに効くタイプの催淫薬だ。」
とりあえず、他のオークと一緒に風上に回りこむ。
「でも多分人間には効かないかな。」
シーナとボブは他のオーク同様、ボーっとイノシシの交尾を眺めていた。




