交易のはじまり
「ボー!ブー!」
「タカシー!戻ったよ!」
駅の周りの樹木は少々伐られて、領地の境を示す柵の類が急ピッチで作られ始めていた。ボブはタカシと話をすると連れてきた魔族たちはタカシの領土に隣接する形で家を建て始めた。タカシの領地内に住む必要はない。
「この草は売れます。買い取れますから、株を見つけたら半分は採集しても大丈夫です。半分残さないと生えてこなくなるので。」
ボブはタカシの領地内に掘っ立て小屋を立てて薬草の買取をはじめた。調合したり仕分けしたりしてキスタラに売る準備を整える。シーナが役人を連れて町へやってきた。
「タカシの街の専従販売者証、ギルドから貰ってきたよ。タカシの町の薬屋ギルド設立おめでとう。」
シーナはボブにギルドの看板も持ってきた。キスタラで使っていたものだ。
「キスタラのほうは新しく看板作ることにして、貰ってきたんだ。」
ボブは両手で看板を掲げると「ありがとう」とシーナにお礼を言った。小屋の入り口に看板がかかる。
「酒場が出来たんだ。お祝いしよう。」
天幕の下に木箱が並んでいる。机と椅子代わりだ。
「ボブさんいらっしゃい。」
いかつい2人の魔族が店を切り盛りしている。タルガルとガガンの2人だ。
「酒はこの前、全部飲んじまったから、今は茶しか出ないぞ。」
ボブとシーナは2人で出されたお茶を飲みながら、建設ラッシュのタカシの町を眺めた。
「狭いけど、しばらくはギルド兼薬屋で寝泊りでもいい?」
「別にどこでもいいよ。」
シーナが急に気づいた。
「あれ?ボブいつの間に左手はえたの?」
「ああ、さっき。シーナとあったとき。」
「ふうん。」
そう話していると、人間の領地側から荷車を引いた隊商が入ってきた。
「うわあ、聞いてはいたけど、本当に魔族が働いてるな。」
そこにタカシが走ってきた。
「武器持ってないか見せて!刃のついた武器は持ち込み禁止なんだ。」
そういって隊商の武器を取り上げる。
「街を出るときに、門のところで、この引き換え券出すと返してもらえるから。」
巨体のトロールがでかい棍棒をもって通りかかる。
「街の中にいる限りはあいつらが野獣や侵入者から守ってくれるから。」
「お、おう。」
隊商たちは緊張した返事をすると、街の中をうろうろしている。そして薬屋ギルドの看板を見つけて小屋に入っていく。
「あ、やっべ。ボクらの客ジャン。」
シーナが小走りに店に帰っていく。ボブは代金をテーブル代わりにしていた箱に置くと「いいのに」という声を聞きながら天幕から駆け出す。
「カウンスでここに来れば薬と薬草を仕入れられると聞いて、代わりに食糧を持ってきたんだ。」
シーナが首をひねる。
「誰に聞いた?」
「カウンスの賢者さま。」
ボブは怪しいと思ってシーナの荷物を調べると、シーナのものではない緑のワンドが出てきた。盗聴されている。これは賢者の片腕だ。シーナの動向からここで交易がはじまることを知ったのだろう。ボブは隊商たちと物々交換で食糧を得ると、これが結構な量だった。
「薬屋ギルドで食糧売るのは違う。面倒くさいし。ただでさえ狭い場所がもっと狭くなるし。」
シーナの苦言にボブも同意した。タカシを呼ぶ。
「タカシ!こっち来て!」
「みんな俺のコト呼ぶじゃん!」
タカシは疲れた顔で走ってきた。
「沢山食料手に入れたんだけど。薬屋ギルドではさばけないよ。」
タカシはしばらく考え込んでいる。
「市場が必要か。MMOとかでよく見るヤツ。」
タカシは市場を作るために去って行った。夕方ごろにはボブが連れてきた魔族の一人が臨時の所長に任命されて市場を作る計画が持ち上がっていた。




