精一杯
謁見を終えて大王と太子、賢者の三人は控えの間でお茶を飲んでいた。
「すいません、賢者さま。他がどうかは分からないんですが、わが国では賢者さまの方が王より地位が上なのです。」
ボブもさっき何となく気づいていたことを、フェーンが改めて、すまなさそうに説明する。
「当然だ、王は世界の理に認められてその土地を統治する者、賢者はその世界の理の代弁者で、世界そのものだ。王より偉いのはあたりまえ。」
「いや、なんか恐縮です。」
ジアス王は首を振った。
「歴代の王の中でも、生涯に3人もの賢者に会ってもらえる王はなかなかおらんのじゃないかな?ポー様、シャムロウ様、そしてボブ様。」
ボブはなかなか参っていた。まさか魔王よりも自分の地位が上だなんて思いもしなかった。
「ボブ様、せっかくわが国にお見えになったのだから、祝福やご意見いただけるのですか?」
「祝福?うーん。」
ボブは席を立ってテラスから王都を眺める。
「戦で傷ついた方が多いですね。フェーンさん、私の荷物ありますか?」
フェーンは自分で走ってボブの荷物を持ってきた。ボブは中をあさると傷薬が出てくる。それをごっそり抱えたままボブはマントを残して蒸発した。
「おお!」
ジアス王が驚きの声をあげる。ボブは何となくこの辺までが王都かなと思う範囲を駆け巡って怪我人らしき者を端から回復した。
(やっぱり、魔族の女性は美人多いな…)
風になって吹き抜ける間にどうしても美少女が目に入ってしまう。しかし、美しいものを見て美しいと思う感情以上の何かは湧いてこなかった。野に咲く花を見て美しいと思っても摘まない感覚と似ていたのかもしれない。
「目に付く範囲の怪我人はすべて治療しておきました。」
「そういうことじゃなかったんだけど、すごくありがとう。」
ジアス王がすごくお礼を言っている。
「なんか『この国に祝福あれ』みたいに言うだけでよかったんですが、この短い間にどこまで言ってたんですか?」
「城壁の内側は出来るだけ全部。でも急いで駆け抜けたから、あまりしっかりは見れてないかもだけど。あと、やっぱり食べ物に困ってます?」
ジアス王は素直に「うん」と答えた。
「ちょっと待ってて下さいね?」
そういうとボブはまたマントを残して消えた。




