賢者の訪問
ボブは「やっぱり赤い絨毯なんだ」と妙に感心しながら、フェーン太子に連れられて誰も座っていない空の王座の前に進み出た。
「ボブ様、しきたりなのでここからしばらく頭を下げてはいけません。私は頭を下げますが、真似をせずにじっと立ってて下さい。」
ラッパが吹かれて「大王のおなり」との声が上がる。ボブはその場の全員が膝をついて頭を下げる中、言われたとおり立っていた。大王らしき大柄の魔族が王冠をかぶりきらびやかなローブに身を包んで姿を現した。ボブのほうを見て訝しげな顔をしながらも王座に座った。
「フェーン太子よく戻った。で、これは?」
フェーンが声を張った。
「大王陛下に謹んで申し上げます!賢者ボブ様であられます。」
「え、マジ?」
ざわついた。大王が玉座を降りてボブのところに駆け寄る。
「本当に賢者…さま?」
「大王陛下に謹んで申しあげます!ボブ様は真に賢者であらせられます!」
大王は自分の身なりを確認する。
「あーよかった!ワシ今日ちゃんとしてた!ボブ様はじめてお目にかかります!この地の王でフェーンの父でもあります。ジアスと申します。以後お見知りおきを。」
大王がぱっと頭を下げた。そして頭を上げるとフェーンに何か耳打ちする。フェーンはボブに小声で何か伝える。
「え!?マジで!?『ご苦労、王座に戻られるがよろしい。』」
大王は「ははあ!」と言ってぴゅーっと王座に戻った。ボブは困惑している。
「ねえ、フェーン、ボク大王陛下にこんなこと言っていいの?」
「賢者さまは『陛下』って言っちゃダメなんです!王か大王か何なら名前で呼ぶのです!」
ボブは少しずつ分かってきたことがあった。
賢者は大王よりも位が高いのだ。




