空からの入城
魔族の王都が見えてきた。ボブが前回ここに辿り着いた時はおびただしい数の魔族を屠り、血路を切り開いた末だ。王宮の塔の発着場にシンギュシティがふわりと降りる。
「フェーン太子のお戻りです!」
フェーンほど完璧ではないものの白い甲冑に身を包んだ衛兵たちが慌しくしている。シンギュシティはさも高貴な竜であるかのような顔をして黒い顔をつんと上げてすまして、係りの人間の世話を受けている。大きな羽箒で全身をなでてもらいながら、食事を始めているのだ。
「人間!?」
衛兵たちがフェーンに続いて降りたボブに当惑している。フェーンがその場の衛兵全員に伝わるように声を少し張った。
「国賓だ。丁重におもてなししろ。大王はおられるか。」
衛兵の一人が進み出て報告する。
「王宮内におられます。」
「謁見室においで頂くようにお伝えしろ。私はこの方と謁見室の続きの間で待つ。侍従長をよこせ。」
「ははあ!」
衛兵達は羽が生えていたり、角があったりと非常にバラエティにとんだ姿をしている。一人のハルバードを持った大柄な衛兵が駆け寄る。
「太子、お連れの方は武器は…?」
フェーンはその衛兵を片手で制した。
「無駄だ、この方が本気になれば武器など無くてもこの城は塵になる。」
ボブはそんなつもりは全く無かったので言われてぎょっとした。
「そんなことしないし!武器も持ってないよ!」
ボブはむしろ衛兵達のキビキビとした動きに見とれていた。前回来た時はひどい事をしたモノだと反省しきりだった。
「ボブ様、どうぞこちらへ。」
フェーンについてボブは王宮を歩く。
「ボブ様は気持ち悪いや。ボブでいいよ。」
「無理です。」
ボブも何となく断られるような気が、そんな気がしていた。
王宮は全体的に黒い建材で作られていて、通された応接室のようなところも黒い壁に黒い調度品が並べられていた。その椅子に腰掛けると、飲みなれたキノコのお茶が出された。フェーンに侍従が駆け寄り耳打ちする。
「ボブ様、父に会わせます。」
座ったばかりの椅子から立ち上がるとボブはフェーンについて謁見へ向かった。




