シンギュシティのお仕事
「私が幼年期に教えを請うた方も賢者でした。竜人族のポー様という方です。」
「へー、そうですか。」
ブラックドラゴンの背には二人乗りの鞍が設けられている。
「ポー様は偉大なお方だ。お前のような転生者とは違うんだ。」
ブラックドラゴンが喋った。
「おい、シンギュシティ、賢者さまになんて口きくんだ。」
「やっぱりドラゴン、喋るんですね。乗せてもらってごめん。ありがとう。」
「いや、仕事だし、ちゃんと給料貰ってるから。」
ブラックドラゴンはシンギュシティという名前らしい。ボブにお礼を言われて照れている。
「まあ、2人乗せて飛べるドラゴンはそう多くないし?白太子さまをお運びする大任を任せられるって言ったらオレかな?」
「いや、本当に凄いよ。シングシティさんってお呼びしても?」
ブラックドラゴンはますます得意げだ。
「賢者さまなら特別にそう呼んでもいいけど、一応、シンギュシティ近衛竜騎隊長って名前があるんだぜ?」
そういってブラックドラゴンは首から下がった金色に輝く紋章を見せた。
「こら、調子に乗るなシンギュシティ。ところで大変失礼ながら気になったんですが、賢者さまの左腕が無いのは…その?」
フェーンが恐縮しながら質問する。ボブは感心した。
「タカシですら気づかなかったのに、フェーン殿下は凄いですね。これはまあ、ちょっと置いてきたと言うか。」
「やはりそうですか。私の師匠だったポー様もしょちゅう片手をどこかに置いてくるんです。」
シンギュシティが「え?そうなの?」と呟く。気になるようだ。
「ボクの師匠も、机の引き出しの中とかに片手置いたまま外出とかしてたみたいです。師匠が言うには賢者の備えの一つだと言ってました。」
フェーンはため息をつきながら話す。
「私も賢者を目指したんですよ。ポー先生について一生懸命学んだんです。だからボブ様も日が沈んだ後の太陽はどこにあるか分からないんですよね?」
「はい、そうです。よく知ってますね。」
フェーンは口をへの字に曲げる。
「先生に教えてもらったので知ってるのですが、理解が出来ないんですよ。理解はしてるんですが、実感が無いんです。先生は『見えないところは信じない』ことが賢者だと言ってました。私は信じちゃうんです。日が沈んだら地平線の向こうに隠れていて、朝になったら反対から昇るって。」
「ボクも信じてますよ。信じてますが、ボクが信じてるのは『反対から太陽が昇る』って確信している世界の期待感ですね。」
フェーンはそれを聞きながら頷くと。
「なるほど!でも、それが感じ取れて居たら私も今頃、片腕どっかに置いて来てますね。」
と笑った。




