タカシのたくらみ
ゴルフの呼びかけに応えてタカシが歩み出る。ブラックドラゴンは先に飛び降りたゴルフを気にしているのかやや慎重にホバリングして地上に下りた。そして少し興奮した様子できょろきょろしている。その背中から白い甲冑のフェーンと呼ばれた魔族が降りる。
「望みどおりこのフェーン、我、眷属の代表として、この所領に関する全権を持ってやって参った。」
「タカシといいます。ありがとうございます。」
フェーンは背が高い。ボブと同じぐらいだろうか。背の低いタカシと相対するとかなりの身長差だ。タカシのことを上からじろじろ眺め回している。タカシも、フェーンの頭から横向きにカーブして張り出した水牛のような角を眺めながら次になんと言おうか言葉を考えているようだ。
「メイス…一昔前まで奴隷狩りに使われていた武器だが…その武器を使って血を流さずに戦っていると言うことか。魔族を一人も殺さずにここまで来た、貴殿の目的はなんだ。」
「ぶっちゃけると、人間と魔族の戦いの起こらない土地を作って、いい思いをしようと思ってる。」
フェーンは片眉を上げた。
「『いい思い』?」
「ボクがこの土地を所領にしたら、人間と魔族の両方が入り込めるようにルールを作る。魔族の世界の物資と、人間の世界の物資が交換できるようになる。ボクの土地からそっちへは人間は行けない。逆に魔族はボクの土地からあっちへは行けない。」
フェーンは色々と思いをめぐらせているようだ。
「貴殿に何の得がある。」
「ボクと後ろに居るボブは転生者だ。ボクは元いた世界では取るに足らない人間で、誰かに尊敬されることなんて無かった。ボクはこの世界で魔族にも人間にも尊敬される人間になるんだ。武器を剣に持ちかえれば…人間の世界の英雄にはなれるかもしれない。でも、魔族を殺さずに領地を作れば、この世界の偉人になれるかもしれない。」
フェーンは納得したようだ。そして腰に佩いた長剣を抜いた。
「なるほど、そしてその無茶な夢を実現するだけの武力を持つと…貴殿はそういいたいわけだな転生者。」
タカシが制止した。
「まって、ここで戦うと駅舎が壊れる。」
フェーンはぎょっとしたようだ。
「そんなにか!?…確かに、私も全力で魔法を使ったら駅舎ぐらいは消し飛ぶか…冷静だな転生者。」
フェーンは剣を治めた。
「しかし、我々は基本的に武力しか信用しない。あちらの高台で勝負でどうだ。私と決闘して勝てば納得しない同胞は居ない。」
タカシは頷くと、メイスを担いで高台に向かった。フェーンはその後ろを大またで歩いてついて行った。




