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動機不純ヒーローズ  作者: 古川モトイ
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ボブのたくらみ

「やはりお前らか。」


トンコロの家を狙った2人の魔族、タルガルとガガンとが駅へやってきた。


「眠りの術、棍棒使い。そんな人間、お前たち以外に考えられない。ゴルフから話を聞いて来たんだ。国を作るらしいな。」

「そんな大げさなものじゃないよ。」


タカシが謙遜している。ボブはその様子を見ながら魔族の好む香辛料の調合を試みていた。この調子でいくと、この場所の専従販売権はボブのものになるだろう。ボブは最初は魔族たちにカレーライスを流行らせようと夢見ていたが、同じようなスパイスは存在しない上に、魔族の味覚が人間とそもそも違うらしい。それも魔族は複数の種族の複合なので、種族ごとにも味覚が違うようで、各種族ごとに売れ筋の香辛料のノウハウを手に入れて一儲けしようと企んでいるのだ。


「ボブ、コイツは多分オレたちコボルド向きじゃない。オレたちはもっと鉄臭いモノが好きだ。こいつは多分トロール向きだよ。辛いから。」

「やってみるよ。鉄臭いのがいいのか。」


ボブは目の前のコボルドを賢者の目で見る。鉄臭いものとは言いながら、そんなに鉄分を採っていい生き物ではないようだ。近い香りの何かを探そうと、自分のカバンをあさっている。この賢者の目は物体の見た目ではなく本質を見抜く目で、トイレを我慢しているヤツを見つけたり、代々禿ている家系の若者を見抜いたりできる。


「これか。」


ボブは黒い丸薬のような草の実をとりだしだ。薬研で粉にしてコボルドに味見させてみる。


「なにこれうまいじゃん。すげーなボブさん。」


ボブはこの草の実の産地を思い出しながら、「とてもコボルドが住むような土地じゃないな」と考えた。この草の実は人間は料理に使わない。沼地で取れる「はらくだし」だ。しかし、賢者の目で見る限りコボルドには毒にも薬にもならない。要するに料理に使えるということだ。


「『コボルドのスパイス』…と。『人間は食べるな』…と。」


ボブの持ち込んだノートにメモを取る。結局、ボブは自分の本は作らなかったが、今ここで別の形のモノが完成しつつある。そんな作業をしていると遠くの空に黒い影が見えた。


「へー、ブラックドラゴンか。」


ボブが見上げてそういうと、タカシも同じ空を見上げて視線をさまよわせた。


「ドラゴン?どこ?どこ?」

「あれだよ、あれ!」


ボブが指差す方向にタカシもやっとその影を認めたようだ。


「すっげ!」


そうして見上げていると、ブラックドラゴンが口に何か溜め込んでいるようだ。


「ああ、ブレスはいてくる気だね。」


ボブはそういうとマントのフードを深くかぶりその場から掻き消えた。


「え!ボブって消えるの!?」


タカシが驚く声を尻目に、ボブは一気に上空まで昇る。そして、ドラゴンの口を抑えてしまった。驚く黒いドラゴンの背中には真っ白な甲冑を着た細面の若い男性とゴルフが乗っている。


「どうした?一発お見舞いしてやれ。その人間とやらの腕前を見てやろう。」


白い甲冑の男はブラックドラゴンを促すが、口が開かなければ何も吐けない。ボブは少しかわいそうなので口を抑えるのをやめると、堰を切ったように大きな炎が口からあふれた。ブレスというより口からあふれてこぼれたような無様な炎で、ボブは地面に落ちる前に全てたたいて消してしまった。


「既に人間の結界の中か!?」


ボブはそれを聞いて「結界はいいアイディアだな」と考えた。ただ、ボブは知らない術だ。きっとどこかに専門家が居るだろう。ブラックドラゴンがすべるように駅の前に下りると、ボブは再びマントの中に姿を現した。別に、マントは自分の術が人に見えなくする遮蔽物なので、物影ならどこでも良いのだが、このマントは高かったので、どこかに置き忘れて失くすのがいやでこうしている。そんなボブのマントに関するこだわりはさておき、ブラックドラゴンに乗って帰ってきたゴルフはじたばたと地面に下りると


「白太子フェーン殿下のおなりだぞ。」


と呼ばわった。

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