荘園契約証文
ボブはずいぶん久々にキスタラにやってきた気がしていた。実際には2ヶ月なのだが、感覚的には6ヶ月ぐらいは過ぎている。キスタラの薬屋ギルドのノートの訪問欄に記帳して、荷物を下ろす。ボブとシーナが夕方ぐらいまで昼寝しているとこの街の専属薬屋兼ギルドマスターがやってきた。
「ボブ、タカシという転生者が探していたけどお前のことだよな?」
「多分そうです。」
ボブは街の酒場に出て、タカシがどこに居るか尋ねたが酒場の連中は知らないらしい。あきらめて薬屋ギルドに戻ってくると、タカシがギルドに尋ねてきていた。
「久しぶり。」
「ボブ?」
タカシは上等そうな鎧を着ている。ボブは大きなマントを羽織った姿だ。
「相変わらずでっかいけど…痩せたよね?」
「いや、少しね。」
そうして見合っているとシーナがナゾの温かい飲み物を手にして奥から出てくる。
「ああ、ごめんシーナ。」
「いや、これボクの分。」
ボブはシーナが持っているカップが一つしかないのを見て取ると「そういえばこの人はこういう人だった」と思い出した。手早く、タカシとボブの分の飲み物を用意する。
「ごめんねボブ。気を使わせちゃって。」
「いや、仕方ないよ。ギルドの人間じゃないとこっちは入れないんだ。」
タカシが座っているのは、ギルドの受付の前で、一般人はそれ以上奥には入れない。
「大丈夫、心得てるよ。」
ボブはギルドにおいてあった不ぞろいのカップ2つに温かい飲み物を用意した。
「これ、タカシ。なんかこの世界の人たちは良く飲むみたい。」
お茶という名のナゾの乾燥キノコ飲料だ。
「飲んだことあるから分かる。ありがとう。」
タカシはボブからカップを受け取ると両手のひらを暖めるように持った。
「魔族の領土を切り取る許可を貰ったんだ。」
タカシは突然切り出した。
「魔族の領土を奪い取ったら、その領土はボクが統治していいって約束を取り付けてきた。」
「タカシが!?」
「すごーい、荘園契約じゃん。」
シーナはタカシが取り出した証文を覗き込む。
「荘園契約って何?」
問いかけるボブにシーナが答えた。
「魔族の土地とか、未開の地を平定したら、何代かは自分で治めていいっていう契約を国と結ぶやつ。こんなこと今でもやるんだね。」
タカシは得意そうだ。
「転生者では初めてだって。はじまりの街の武術大会で優勝した賞品代わりに貰ってきた。」
「それ、すごいよ。」
ボブもタカシの広げた証文をまじまじと見つめる。
「ということで、やろうよボブ!」
「え、ボク?ああ、そうか。」
ボブは当初の目的をすっかり忘れていた。




