凡人と非凡の共通項
シーナがポカーンとして自分の祖父を見ている。
「ワシの術の秘密に気づいたのは今までボブさんだけじゃ。まあ、おいそれと薬屋がワンドを取り出す必要もないが。」
ボブは額を掻きながら答えた。
「でも、その手品はボクには一生使えないでしょうね。」
「これは持って生まれた業のようなモノだからのう。」
ボブは耳でも目でもない何かの器官が世界に吹く風の気配を感じているような気がしてきた。その風をかき回せば、何でも自分の手が届く範囲ならできる気がする。しかし、まだボブの中でそれは具体的ではなかった。
「とにかく、ボクが生まれた元の世界の仕組みがほとんど通じないことが分かりました。」
賢者は首をひねった。
「むしろ驚くほど似とるんだと思うぞ?話を聞く限り、物を投げれば下に落ちるそうじゃ。」
シーナがあきらめ顔で発言した。
「多分、ボクには理解できないけど、それが普通じゃないの?」
「落ちる仕組みは違う。ボクの生まれた世界ではモノは自然に落ちるんだけど、こっちの世界ではモノは…なんというか…自然に落ちるんだ。みんなが落ちようと思ってる。引き止めることは出来るけど。」
シーナがため息をついた。
「まあ…お二人が本物の賢者だってことは良く分かった。二人はご飯食べる必要はあるの?」
「それはあるよ。」
「あるぞ。食欲はわれらが持って生まれた共通の欲望じゃ。」
シーナは納得した様子だ。そして手振りで二人を小屋へ追いやる。扉を開けるとシーナが用意した食事の匂いが小屋の外まで漏れ出してきた。




