曇り空
特に最初の転生ではボブは自分のレベルアップを意識的に行っていて、レベルが上がる瞬間も体感していたが、薬屋になってからその実感が薄かった。しかし、ここに来て高品質な薬を量産することで、ボブは久々に高効率のレベリングを実感していた。これはどうも転生者に特有の感覚らしいこともボブは分かり始めていたが、薬屋レベルはこうして上がるのだと今さらながらに理解した。
「ボブ、どんどん腕上がってるね。」
「うん、そうみたい。」
農園の管理に来るギルドの人間はボブのところに材料を持ってきて、完成品を持って帰る。ボブはほとんど小屋から動かずに延々と薬作りに没頭していた。依頼される薬の内容はだんだん変わっていく。徐々に高度な調合が依頼されることで、ボブの薬屋レベルはすごい速さで上がっていく。
「爺さんはこれが分かってたのか。ボブは才能があったってことなんだな。」
シーナは特に嫉妬する様子もなく、一心不乱に働くボブを半ばあきれた顔で、半ば嬉しそうに見ている。ボブが働き続ける間、食事を作ったり、こまごまと働いていた。
「いやー、さすが爺さんだな。」
「やっぱり、凄い人は凄いんだね。」
「そうだな、爺さんは凄いからな。」
「賢者様って呼ばれるだけのことはあるね。」
ボブとシーナは日が沈んだらとりあえず作業をやめることにしていた。際限がないことと、調薬の工程で「一晩寝かせる」的な工程も少なくないからだ。日没前になると、その「寝かせる」モノを急いで揃えて、日が沈む頃には食事をして寝支度をする。どれほど時が過ぎたか分からなくなった頃、賢者本人が丘を登ってきた。ボブに気づくと大声で叫んだ。
「ボブさんや!曇りの日、太陽はどこにある!?」
ボブは満面の笑顔で叫んだ。
「どこにもありません!なぜなら見えないから!」
賢者は両手を高く突き上げて歓喜に叫んだ。
「その通りじゃ!お主は賢者への道を歩み始めたのじゃ!お主こそ長い間捜し求めたわが弟子じゃあ!」
ボブは賢者がなぜ初めて会ったあの時、賢者が太陽の事を聞いたのかずっと考えていた。そして、レベルが上がる中で、初めてこの世界が、自分が元いた世界と本質的に違うことが分かったのだ。
「どういうこと!?えっ!?じいさんが弟子を取るの!?」
シーナが困惑している。その顔は半ば嫉妬した、半ば嬉しそうな顔だ。ボブはシーナを抱えあげて。
「間違ってなかった!」
と言うとべしょべしょと泣き始めた。




