賢者とボブ2
賢者はローブから出した片手でボブのワンドをひっくり返したり、振ったりしながら、しみじみと眺めている。
「性格が出るんじゃよ。」
この世界におけるワンドはおよそ、芯材に特別に染色された繊維の類を巻いて作るものだ。ボブは自分のワンドを眺める賢者の横に置かれた賢者のワンドが怪しく脈打っているように見えて身震いした。
「何度も新しく作り直すと良い。薬屋のワンドはモノがモノだけに市場で売るわけにはいかんが、古いワンドはギルドの倉庫にでも置いておけば、いつか誰かがありがたく使うじゃろう。」
「なるほど。」
「へえそうか。」
ボブもシーナも新しくワンドを作り直す発想はなかった。確かに、新しく作り直せば前より良いものが使える気がする。賢者はボブにワンドを返すと、今度は自分のワンドをつまみ上げ身震いしてローブの長く豊かな袖に納めた。
「好きなだけここにいるといい。ボブさんが求めるならば当世最高の術者となれるじゃろう…ワシは除いてだが。…いや、ここにいるのは良くないな。街を見下ろせる丘にワシがたまにバカンスに使う小屋がある。そこにいくのがエエじゃろう。もしよければそこを作業場にして、今ギルドで足りてない薬を調合してくれんか?相場どおりに代金は払う。」
「爺さんボブは他にやりたいことが…」
シーナが口を挟んだところをボブが制止した。
「やります。是非やらせてください。」
ボブは大きな体を情熱に緊張させて答えた。賢者は目を細めて微笑んだ。
「受付のヘンゾに仕事の内容は回しておくよ。」
賢者と呼ばれる老人は擦り切れた表紙の帳面をめくりながら部屋を出て行った。
「ボブ、最初の目的。」
「なんかごめん」
シーナがやや非難を帯びた目でボブを見る。ボブは思わず謝った。ボブはこの老人についていくと何か起きると言う根拠のない確信と、それに突き動かされた自分自身に驚いていた。シーナはボブの背中を2回バンバンと叩くと。「でかい背中」と言って部屋を出て行った。




