ザワっていうのね
薬屋ギルドでは例のそばかすの女性がフラフラ歩き回っていた。寝起きのようだ。
「どうされたんですか?」
女性はボブに視線を向けずに
「寝起きの運動。」
返事をした。
「じいさんが朝が弱いボクに教えてくれた健康習慣。」
「はあ」
ボブはしばらく狭いギルドの中をグルグル歩き回る女性を見ていた。
「そういえば、私、ボブって言うんですが」
「シーナ」
またもボブを見ないで返事をした。そもそもシーナと名乗った女性は目がほとんど開いていない。眠いのだろう。しばらく無言で歩くシーナをボブも無言で見ていた。
「本作るなら材料が必要だね。お金持ってる?」
ボブは急に話しかけられて戸惑いながら「そこそこ」と答えた。
「キスタラの市場にそんな品物あるかなあ?」
「ないの?」
シーナは歩くのをやめてボブのほうを向きなおした。
「分からないけど、少し探してなかったら、別の街に買いに行くしかない。」
「はじまりの町?」
シーナは少し首をひねった。
「それはザワのことかな?転生者にとってはあそこがはじまりの街なのか。なるほどね。あそこはダメだよ。軍の拠点ってこと以外に、あんまり見る所がないところだから。」
ボブは言われてみると確かにそうだと思った。
「最初からカウンスに行っても良いかも知れない。ボブ、カウンスに行こう。向こうの方が薬屋ギルドも大きい。…私の爺さんもいるし。」
「お…おう。」
シーナは荷物をまとめ始めた。
「ボブは身を守る武器とか持ってるか?」
「いや、グリーンワンドだけ…でも、一通りの魔術は使えるんだ。赤いワンド…レッドワンドがあれば。」
ボブはそう言いながら魔法のレベルは引き継いでいるのだろうか?と少し不安になった。
「それは心強い。あんなものは魔術師ギルドに行けば安く売ってもらえるから1本買おう。」
シーナが微笑んだ。ボブも無表情でいるのが申し訳なくて不器用に笑顔を作った。




