ボブとタカシの出会い
2人が出会ったのは王宮の前庭だった。多くの転生者が集められているその場所でお互いに共通点を感じたのだ。他の転生者たちは水洗トイレも給湯器もスマホないようなこの世界にすっかり幻滅していた。出会う人は全て洗ってない家畜のような臭いをえぐい香料で塗りつぶしたやはりえぐい臭気を放っていた。その世界の中でボブとタカシは期待感に満ちた目をしていたのだ。
「キミは外国人?」
タカシがそう話しかける。ボブは
「ボクから見るとキミだって外国人だし、ボクらは皆、異世界人だ」
と大きな体をゆすって笑った。タカシから見るとボブはずいぶん縦にも横にも大きかったし、ボブから見るとタカシは小さいし細かった。でも、お互いが何となくどんな境遇からこの世界にやってきたのか分かった。
「なんか、どこもかしこも臭いね。」
タカシがそういうとボブもうなづいた。
「でも、自然だ。排気ガスも妙なクスリを燃やした煙もない。…酒臭いヤツはいるみたいだ。」
「うん、ボクは良い所だと思う。」
お互いにうなづいた。これから何があるかは分からないが、元の世界では逃れられないと思っていた悩みは全て置いて来た。
ー冒険者指導教官のところへ行って下さい。ー
ボブとタカシは顔を見合わせた。
「何か聴こえたね。」
タカシもうなづく。2人は広場の中ほどに頭の上で光る矢印が浮いている男性を見つけた。
「分かってきた。ボクはタカシ。」
「ボクはボブだ。」
戸惑いながら握手をすると2人はガイドに従って指導教官の元へ向かった。