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動機不純ヒーローズ  作者: 古川モトイ
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魔族の作戦

 魔族の軍勢は見えているだけで数千。そこにたった500人のならず者が突っ込んでいく。


「これだけ数の差があれば、敵に伏兵がいても気にならないな!」

「あいつらが本当に下級魔族だけじゃなかったら、今日の日没までに全員死体だ!」


軽口をたたきながら走り続けている。面食らった魔族たちが急いで弓を引く。


「タカシ!盾を出して!」

「ボブ!風の魔法だ!」


タカシはロングソードを鞘に収めると急いで盾を構えた。


「ツベッ!」


敵陣の号令と伴に無数の矢が放たれ空を覆う。先鋒隊は思い思いに魔法の防御壁や盾を構える。


「風よ!」


大柄なボブが体を震わせながらワンドを振り回すと矢を押し返す突風が吹いた。流石にそれによって放たれた矢が敵陣に返ることはないが、威力を失った矢は手で払える程に鈍った。


「こっちみてー!」


タカシが自分の盾をショートソードでガンガン叩く。知性に劣る下級魔族たちは統制を失ってタカシに襲い掛かろうと殺到した。


「うわー、こんなに来ちゃうんだ。」


まさか一気に100体ほどの魔族が押し寄せるとはタカシも思っていなかったらしく、身震いしながら奥歯を噛む。体を高速で回転させながらショートソードを真横に振りぬくと、剣先から衝撃波が放たれて、タカシに殺到した半径5mほどの魔族が吹っ飛ばされて宙を舞った。これには敵味方が度肝を抜かれた。タカシに殺到した魔族たちがはっと我に帰った。目の前で数十の同胞が一瞬で散ったのだ。


「炎の壁よ!」


タカシに殺到した魔族が今度は逃げようとすると地を走る炎の壁が取り囲む。炎の壁に突っ込むか、恐るべき剣の使い手タカシと対峙するかで、壁の中の魔族たちは恐慌状態に陥っている。外からは炎の壁で見えないが、焼けて絶命しながら壁の外に出てくる魔族の姿と、炎の壁の中から聴こえてくる断末魔の声とが戦場の魔族たちを震え上がらせた。炎の壁が消えるまで1分も無かったが、その中で立っていたのは転生者のタカシ一人だけだった。この戦術はボブとタカシが編み出したもので、この方法で様々な野生動物の群れを日銭に変えてきた。その対象が魔族になっただけだ。


「ボブ、まだまだいけるよ!」

「ボクもまだまだ大丈夫!」


ボブは自分に襲い掛かる下っ端魔族を盾で殴打しながらにこやかに応えた。そもそも純粋な腕力は巨漢のボブの方が強い。タカシは安心したように再び盾をショートソードで打ち鳴らす。その音を聞いた魔族たちは顔を歪ませながら抵抗を試みる。この音に吸い寄せられたらどうなるのか、先ほど見てしまったからだ。しかし、抵抗できずにおびただしい数の魔族がタカシの術に吸い寄せられていく。悲鳴を上げながら吸い寄せられる魔族たちの眼には悔し涙がにじんでいる。


「炎の壁よ!」


ボブが仕上げに炎の壁で囲む。炎の壁は触らなければどうという事はないが、触ったときのダメージはボブの魔力に比例している。下級魔族にとってはそれは即ち死と書いて即死だ。ボブはちょっとした変化をつけた。壁は時間と伴に狭まっていく。さっきよりも焼けて壁の外で倒れる魔族が増えた。壁が消えると、タカシが蛮族の血に染まったショートソードをその辺で倒れている蛮族の服の裾で拭きながら笑顔を見せた。


「今日も調子いいよ!」


このとき魔族たちの心の中で何かが音を立てて折れた。ボブとタカシの名前を当然彼らは知らないが、その2人の冒険者はこの数千の魔族の大部隊を1時間かからずに処理しきってしまうだろう。本当の恐慌が始まった。武器を捨てて我先にと下級魔族が逃げ始めたのだ。号令をかけていた魔族の隊長クラスがタカシに挑みかかるも、ボブに盾で殴られて気絶してしまった。これにて司令系統も崩壊し、両軍の激突は数分で魔族側が数百の損害を出して敗走して終了した。


「さあ、どんな罠だ。」


盗賊ギルドマスター補佐が自分の盾に刺さった質の悪い矢を抜きながら呟いた。戦場には先鋒隊500余り。当然、敵の狙いははるか後方の本隊であろうが、今ここで奥の手を出してくるのかを先鋒隊は見守るしかなかった。


「隊長!あちらの方角から監視されています!」

「見えてるよ。あちらさんどう出るかな?」


先鋒隊の結構な割合を盗賊ギルドの人間が占めている。罠の発見はお手の物だが、この戦場には爆薬の類は埋められていないようだ。盗賊ギルドマスター補佐が角笛を出して吹き鳴らすと、後方の主力部隊が先鋒隊を置き去りにして移動を開始した。敵の本拠地に向かうのだ。敵の監視が何か喚きながら角笛を吹いた。急に空間に黒い穴が開く。闇の門と言っても良いだろう。戦場を取り囲むように8箇所ほどの門が浮かび上がりそこから敵の軍勢が姿を現す。


「これって異空間を使った伏兵ってことですか!」


ボブに盗賊ギルドマスター補佐が答えた。


「そういうこったな。360度囲まれては全ての足止めは出来ない。本隊の背後に少々回っちまうが仕方ないだろう。すこしは連中にも見せ場を残してやらないと。」


ウソとも本気ともつかない軽口を叩きながら敵の中に突っ込んでいった。タカシはと言うと敵の出てきたゲートが気になるらしく、血路を拓きながら敵の出てくる流れを逆行していく。


「タカシ!待ってよ!」


先鋒隊は戦場の中央に囲まれて押し込まれながらも必死の抵抗をしていた。


「邪教徒よ屈せよ!」


例の筆頭神官が魔族と邪教徒のみを標的にする範囲魔法で敵の精神を蝕む。その場で動けなくなるものや発狂するもの、逃げ出す魔族が後を絶たない。それを尻目にタカシはとうとうゲートに辿り着き中へ入っていった。


「えー!?タカシ!!置いてかないで!!」


ボブが叫ぶとタカシはすぐに出てきた。


「この奥どこにも繋がってない。8つのゲートですらお互いには繋がってなかったよ。」

「一体どこに行こうとしたの!?」


ボブの問いかけにタカシは屈託の無い顔で「ショートカット無いかなと思って」と答えた。



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