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動機不純ヒーローズ  作者: 古川モトイ
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命知らず

 敵がトンコロに持たせた地図の場所には敵の偽装された本陣が配備されていた。キスタラの盗賊たちの中でも選りすぐりの斥候が本陣を偵察した結果、低級な魔族たちが陣を展開していて、決して数は少なくないという。


「頭数だけ揃えて遠目には大軍勢に見えますが、全く主力ではありません。実際に戦えば、あっという間に踏み潰せる連中です。しかし、恐らく周囲には伏兵や投石器みたいな兵器が隠れているんだと思います。もしかすると火薬が埋没しているかも。」


ボブとタカシの参加している先鋒隊にはここで作戦の概要が話された。


「という事は我々は囮に突っ込むってことですか!?」


兵士達に動揺が走る。


「だから、この先鋒隊には手練れが揃えてあるんだ。囮と知った上で突っ込み、敵の計略を看破して、オレたちの後ろに控える本隊が敵の本拠地を目指して進軍するときに、恐らく我々が引きつけている敵の真の本隊を足止めして、我々の本隊の背後を突かせないようにする…それが今回の我々先鋒隊の大まかな任務だ。」

「なるほど。どうりで、冒険者が多い隊だと思った。キツい戦いは覚悟の上だ。やってやるぜ。」


キスタラの一般的な兵装とは明らかに異なるいでたちのヒゲの男がそう言って手ごろな岩に腰をかけた。


「転生者の方には私の回復魔法は効果がありませんが、そうではない方は私の見える範囲にいてください。間に合う限り回復します。」


例の神官を先頭に20人ほどの神官の小隊が先鋒隊の兵士たちを励ます。


かぶとの緒、靴紐くつひも、剣の下げ緒、とにかくヒモの類は隣同士で全て入念にチェックしろ。戦場で切れたら命取りだ。切れかかっている物は補給官に申し出て交換しろ。刀剣は一度は鞘抜いておけ。鞘が張り付いているときがあるぞ。弓の弦を外しているものは弦を張れ。手持ちの矢が少なかったら補給官に声をかけろ。いしゆみは矢を番えてもいいが、一度引いたら発射準備の号令がかかるまでは必ず下を向けて移動しろ。」


タカシはショートソードを抜き放った。普段はロングソードを使っているが、盾とショートソードも持っている。そうして各々が装備のチェックをしている中でひときわ異彩を放つ武器を持っている者がいた。長い柄の先に桃色に塗られた頭をつけた金槌を持っている重装備の戦士だ。背丈はボブより高く、鍛え抜かれた屈強な体をしている。


「すいません、なんですかその武器は?」


屈強な戦士は気さくに答えた。


「ピコハンと呼ばれている魔法の武器だ。古い技術で作られている。殺傷能力は低いが上手く頭に当てれば一撃で相手を昏倒させる武器だよ。本来は家畜を扱うのに使う小さなモノらしいが、一応、こうして戦場用に大型のモノを作れる職人もいるので、入手して以来、愛用しているんだ。一応、トドメを刺すために手斧も持っているが、まあこれだけいればトドメは他の誰かが刺してくれるだろう。」


そうこうしているうちに時間は正午を過ぎた。


「魔族には夜目が利くものが多い。夜になれば我々は不利だ。進軍を開始する。後ろに控える本隊のために出来るだけ派手にやるぞ!進め!」


陣太鼓が打ち鳴らされて先鋒隊はジリジリと前進した。大きな四角い盾を構えた兵士の後ろに弓矢を持った弓兵たちが隠れる。敵の蛮族の幾人かが痺れを切らして投げた石が転がってきた。


「弩の射程に入ったぜ!」


冒険者の1人が鋭く声をあげる。先鋒隊を率いている盗賊ギルドリーダー代理が手を振る。弩を構えた数人がすばやく敵の陣営に矢を打ち込んだ。かなりの距離を放物線を描いてとんだ矢は、魔族の何人かを絶命させたようだ。遠い敵陣営から興奮した声が聴こえる。


「こちらの弓の方が射程が長いが、敵も弓を持っているぞ!注意しろ!」


盾を押し出した兵士たちが寄り一層盾の後ろに慎重に身を隠した。弓矢が一斉に引き絞られ敵陣に降り注ぐ。一層、敵の陣営の興奮は高まる。


「ありったけ打ち込め!いや、待て敵陣が少し下がったぞ。盾押し上げろ!」


先鋒隊の全員が、罠に向かって進んでいる事を自覚して緊張している。敵陣の魔族の1人が立ち上がり、巨大なひも状の投石器でよく磨かれた丸い石を投げてきた。こちらの陣営に、直接は届かないまでも、平坦な地面を良く転がり、盾を構える兵士を一人吹っ飛ばして転がってきた。咄嗟にボブが手を出す。サッカーボールほどの丸石が止まった。


「字が書いてあるな。誰かこの文字が読めるヤツ!」


神官の1人が駆け寄ってきた。


「ええと『こしぬけ、我々の同胞は逃げも隠れもしない。お前たちは全てメス。』と書いてあります。本隊が突撃してこない事で焦っているのでしょう。まあ、当然、魔族は我々の本隊を罠にはめたいはずですからね。」


盗賊ギルドマスター補佐が少し考えていると冒険者の1人が。


「どうせオレたちは先鋒隊なんだから突っ込んじゃえばいいでしょ?敵の裏の手を出させないことにはどうにもならないし。」


と妙に腹の据わったことをいった。全員心が決まったようだ。


「突撃ぃー!!」


先鋒隊500人が一斉に走り始めた。

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