監視拠点
翌朝、見張りの1人がボブとタカシを起こした。
「出発だ。」
ボブもタカシも「そろそろ風呂に入りたい」と思いながらキビキビと動いた。追跡者は3チームに分かれている。ボブとタカシと元から行動を伴にしている盗賊が真後ろ。残り2チームは右側と左側を囲んでいる。完全に囲んで尾行しているため、見失う危険はほぼない。だから、かなり距離を開けた尾行が可能だ。即ち、発見されづらいということだ。
「昨夜のうちに判明した事だが、俺たちが今追っている魔族はレッサーデーモンと呼ばれる階級のヤツだそうだ。冒険者で言うとレベル30ぐらいの強さだろう。」
ボブとタカシは顔を見合わせた。互いにレベル40を超えて久しい。
「分かっている。俺ですらレベル30はとうに超えている。オレたちからするとだいぶザコを泳がしている事になる。…もしかすると、魔族はあまり強くないのかもしれないな。」
ピイと猛禽類の泣き声が響いた。
「左を先行している味方からの合図だ。何か見つけたな。」
間も無く左の隊からの伝令が来た。
「小さいが連中の拠点を見つけた。」
「まあ、ここら辺りは言ってみれば連中の領地内だから何があってもおかしくはない。あそこに見える高台に全員を集めろ。」
盗賊が指示すると伝令は走っていった。ボブとタカシも盗賊と高台を目指す。
「よし、見張りもいないな。」
高台に上がる途中、報告があった拠点が見えた。頑丈さがとりえのような小屋の前に荷馬車のようなものが停めてある。つながれている動物は水牛のような見た目をしている。
「なるほど、駅か。」
盗賊が呟く。ボブもタカシも「駅ではないだろう」と思ったが、鉄道が登場する以前から駅はあったことを二人は知らない。高台の上には追跡に参加していた盗賊たちが集まってきた。
「この高台から監視してあの駅の様子を伺う。この駅より先に領土内に入り込むには戦力も情報も物資も足りないが、ここで極力情報収集をする。まずはやつらに勘付かれないような監視拠点を作る。意見のあるヤツはいるか?」
「この場所は向いてないと思います。あっちの岩場の方が…」
盗賊たちが意見を交換し始めた。小1時間、協議の結果、監視拠点は目立つ高台を避けて手前の林の中に作り、見張り役だけが高台へ交代で登ることになった。ボブとタカシは当然、見張りの役には立たないので林のほうで拠点が出来るのを見ていた。テントを低木で目立たないように偽装し、テントの周りには雨よけの溝を掘る。1人の盗賊が煙が目立たない場所を選んで竈を作った。
「盗賊ギルドには伝令を出した。そのうち増援が来るぞ。」
しかし、事態はその日のうちに動いた。




