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動機不純ヒーローズ  作者: 古川モトイ
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ショウガ保存庫

 降ったり止んだりを繰り返している雨の中を5人はひたむきに進んだ。フードつきのマントを雨よけにして、湿気で汗ばむ不快な道中だ。しかし、5人は「魔族の罠に自らかかることで出来うる限り多くの情報を手に入れる」という強い意志で団結していた。先頭を歩く盗賊が歩みを止めた。


「あれがそうだ。今のところ俺たちが監視や尾行されている様子は無い。」

「ここからは『宝の地図に釣られてやって来た冒険者』を演じなければいけないのですね。」


神官が念を押した。全員が頷く。


「しかし、全滅するわけにはいかない。先頭はオレだ。」


盗賊を先頭に雨の野道を歩く。盗賊は折りたたまれたテントの柱を取り出した。これで床などをつついて落とし穴などを発見するそうだ。洞窟の入り口に接近する。洞窟の入り口にはこれ見よがしにロープが張ってある。盗賊はロープに引っかかると音がなる仕組みの鳴子だろうと分析した。松明に火をつけて学者が掲げる。そろりそろりと進みながら一行は洞窟の一番奥の部屋と思われる扉の前に辿り着いた。


「鍵が掛かっているかもしれないな。下がってろ。」


ドアノブのすぐ下に鍵穴がある。盗賊はその前にしゃがみこむ。そして、襟巻きで口と鼻とを隠すと眼鏡をかけ、さらに手鏡で鍵穴を覗いた。その上で器用に襟巻き越しに手鏡の曲がる柄を咥えて視界を確保すると、腰に巻いた道具袋から細く先が曲がった針金を2本取り出した。そして、不意に立ち上がると道具を片付け始めた。


「鍵は掛かってないが罠が掛かっている。恐らく先ほどと同じ侵入者をどこかに報せる鳴子のようなタイプだろう。こいつを鳴らさないのは骨が折れるが、手を貸してくれ。」


小声でそう言いながら工具を取り出した。木製の頑丈なドアのど真ん中にきりで穴を開け、そこをネジ穴として、道具袋から新たに出てきたドアノブのようなものを新たにネジで固定し始めた。


「転生者、この新しい方のドアノブと元あったドアノブをそれぞれ持って動かさないようにしてくれ。今からドアを外す。」


盗賊は小声で指示を出した。ボブとタカシの2人は狭いドアの前でいかにも窮屈そうにドアノブを握っている。盗賊はノコギリやらノミやらを取り出してドアの蝶番ちょうつがいを外し始めた。1時間ほどかかって扉を丸ごと外せる状態になった。


「ゆっくり…そうだ…」


元あったドアノブ側を支点にして外した蝶番側を手前に開いていく。ある程度開いたところで盗賊は扉の中に滑り込み何か細工をした。

「よし、もう扉外していいぞ。」


開く扉の内側にロープを張り、開閉で引っ張られたロープが鳴子を鳴らす原始的な装置だが、開けたら必ず鳴るため、「解除」というより「破壊」に近い方法で回避したのだ。ロープは今はドアではなくドアの枠に貼り付けられている。部屋の中に一歩踏み込んだ状態で盗賊は他の4人を制止した。そして、中を色々調べている。部屋は自然の洞窟に切り出した石やレンガのようなものでところどころ壁を貼ってあるようだ。微かに刺激臭がするが嫌なにおいではない。学者が小声で「この湿度の高さと冷たさ、匂いからすると、恐らくショウガの保存室だったのでは?」と耳打ちした。盗賊は特にドアにつながれていたロープの伸びる先を念入りに調べ始めた。壁の穴を通って別室に伸びているようで、壁の穴に万華鏡のようなものを突っ込んで様子を伺っている。しばらく覗くと、万華鏡モドキを懐にしまい、そして小声で報告した。


「フワフワゴブリンの野郎が中で居眠りしてやがる。鳴子が鳴ったら魔獣がこの部屋に放たれるらしい。そっちの面はそれぞれレンガの壁に偽装されている隠し扉だ。奥側の隠し扉から魔獣が出てくる。ロープが伸びてる手前の隠し部屋はフワフワゴブリンの仮眠室だな。フワフワゴブリンが手前の部屋で操作すると奥の壁が開いて魔獣が出る仕組みで間違いないだろう。」


パーティーは小声で話し合うと、学者が壁に近寄って中に聴こえるようにボブとタカシの聞きなれない言語で話しかけた。蛮族語だ。中からフワフワゴブリンのやや甲高い返事が聞こえて、手前の壁が横滑りして開いた。


「あっ」


ボブはゴブリンも驚くと「あ」と言うんだな…と思いながら盾で思い切り殴りつけた。あっさりのびたゴブリンを盗賊が縛っている。学者がゴブリンのいた部屋の中で色々調べている。


「結構厄介な魔獣を飼っていますね。普通にやっても倒せるとは思いますが、バジリスクは嫌ですね。」


石化の毒をもつ大トカゲであるバジリスクが隣の隠し部屋には飼われているようだ。そのバジリスクも装置もゴブリンも制圧した今、この洞窟に脅威は何もない。


「とっとと調べて、お宝を持って帰ることにしようや。」


盗賊は妙に陽気になった。学者もそれに合わせる。


「バジリスクに守らせている財宝ですから、結構期待できるんじゃないですか?」


恐らく盗賊が何者かの監視を察知したのだ。ボブは焦って気の利いたことをいわなきゃと思ったのだろう。「ピザ何枚買えるかな!?」と変なテンションで言った。


「ボブ、ピザはこの世界にはないよ、多分。」


思わずタカシが突っ込んだ。ボブは少ししょんぼりしている。


「箱を発見しました!」


神官に促されて全員が集まる。


「よし、下がってろよ…罠はない…鍵もないな。」


盗賊は中から金貨となめし皮にインクで書かれた文書を発見した。学者はそれを見て。


「街に持って帰って読める人間を探しましょう。何か他のお宝の話かもしれない。」


と嬉しそうに言った。


「さあ、帰るぞ!酒と飯とベッドが待ってる!」


盗賊に促されて全員で洞窟を出た。

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