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動機不純ヒーローズ  作者: 古川モトイ
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事変

「やあ、賢者の街はどうだい?」

「全て賢者さまの思うままさ。」


これは「賢者の街」と呼ばれる町にやってくる人間と門番のありふれた挨拶だ。知ってのとおり老シーナが居留するカウンスですら賢者の街とは呼ばれていない。ボクの街こそが賢者の街だと、この世界の住人たちが認めているということだろうか。そしてボクは思ったよりも早くタカシの街を訪問することになった。初めてタカシの館に足を踏み入れる。こんな表現はあまりしたくないが、事実上のタカシが作ったハーレムだ。ポーもそこに来ていた。


「ボブ、見える?」

「『見える』よ。」


そこでポーと同じものをボクも見ていた。


「タカシという転生者は、『魔族』を分かってなかったみたいだね。」

「そうですね。」


おびただしい血が流れたのだろう。床や壁の血痕が黒く乾いている。ポーはボクにその館で起きた出来事が見えるようにしてくれていた。


「まず、魔族の娘の一人が…いや、何人かが、別の魔族の娘を食い殺して…」


ボクはそう言いながら館の中を歩いている。


「タカシがその殺害した娘を切り殺して…」


ポーによって示されたタカシの足跡を追っている。


「ここですがりつく魔族の娘を何人か…『食った側』の娘をさらに殺して…」


歩きながら鏡の前に立ったボクは石像のような血の気のない顔をしていた。ポーの本当に血の気のない顔のほうが幾分か生きているように見える。


「ここで自殺した…と。」


タカシの亡骸は別の魔族の娘によって火葬にされていた。そしてその娘もすでに火葬済みのようだ。


「人間たちが『魔族』と呼んでいる人々は、全く異なる種族で、種族間には争いや因縁の歴史もある。」

「はい。」


タカシはこの館に理想の世界を造ったつもりだった。一度は完成したのだろう。


「生き残った魔族の娘がいるが、ボブは話を聞くかい?」


逡巡した。


「…はい。」


何の意味があるか分からないが、聞くことにした。ひどく怯えた様子で魔族の娘が…見目麗しい女性が前にやってきた。


「怖がらないで。」


死体だらけのこの屋敷で一ヶ月以上途方にくれていたのだ。唇が荒れ、やせ細っている。しかし、タカシが選んだ女性だけあって美しい。


「話せますか?」


頷いて口を開いた女性の口元からは鋭い犬歯がのぞいていた。

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