リキ、人生初のレースがスタート!
――リキの、初めてのレースが、スタートした。
スタートから、
一気に、周りのランナーが、飛び出したが、
リキは、釣られて、早くなり過ぎないように、
冷静さを保ったまま、無理はせずスタートした。
かかんに、前田アヤは前の方の集団についていく。
――この5kmのコースは、
殆どが、平坦のフラットなコースで、
スピードは出しやすく、タイムは狙いやすい。
ただ、単調な景色が続くので、
疲れてくると、精神的にキツくなってくる。
――葵は、リキより、後ろを走っている。
――そのままレースは、進み、2km。
少しづつ、前田アヤのペースが落ちて来た。
――そしてリキがアヤを抜かした。
――現在リキの順位は全体の20番くらい。
600人以上、出場しているレースで、
中々の走りだ。
そして、3km過ぎ。
徐々に、ペースを上げていた、
葵が、リキに追いついた。
そのままレースは進み。
4km過ぎで、葵と、リキが並走。
前田アヤが、少し後ろを走っていた。
しかし。
ここから前田アヤの逆襲が始まる。
一気にペースを上げると、
葵と、リキに並び、いきなり抜かした。
「何だあいつ!?さっきまでペースが落ちていたのに」
アヤのスパートに、葵だけはついて行き、
また、抜かし返す。
リキは、ペースが上がらず後退。
しかし、葵が抜かせば、またアヤが抜かし返す。
アヤが抜かせば、葵が抜かし返す。
意地の張り合いだ。
アヤは絶対に、葵には、負けたくなかった。
――「だって」
それは、アヤが、小学校4年生の時の事だった。
当時、小学校の同級生に、好きな男子がいて、
その子に、想いを伝えようか悩んでいた。
そしてその事を、葵にも相談してた。
でも、その男子は、葵に、告白をした。
葵は、断ったが、
私よりも、葵を選んだ事が、悔しかった。
それからは、対抗心を持つようになり、
葵にだけは、絶対に負けたくないと思うようになった。
中学もわざわざ私立を受験して、
葵とは、別の学校に行った。
――だから。
「だからあいつには。負けたくない。負けたくない」
――アキは、最後のラストスパートをした。
だが、葵もスパートで対応する。
――そして、少しづつ、葵が引き離していく。
「クソ。負けたくない。絶対に、負けたくない。
腕を振れ。足を動かせ。辛いのは今だけ」
――アキは懸命に走るが、葵のスピードには、
敵わなかった。
――そして、後ろのリキにも抜かされる。
「よしっ!抜かした、後は葵だけ」
――しかし、葵はもう一度、
ギアを上げ、そのままゴールした。
次に、リキがゴール。
最後に、少し離れて、アキがゴールした。
「クソ。負けた。葵にだけは、負けたく無かったのに」
――1人でうなだれている、
アキに、葵は近づいた。
「何よ?馬鹿にしたければ、馬鹿にすれば?
あなたには、恋も、陸上も、負けたのよ」
――アキは自暴自棄になった。
アキ。私はいつも、
本番で結果を出す事が、出来ずにいた。
自分の弱さ。粘りの無さが嫌だった。
でも、いつも、あなたと走る時は、
良い走りができる。
そして今日、私は、一皮、剥けられた気がする。
だから、ありがとう。
やっとあなたに勝てた。
「チッ。今まではあなたに勝てたのに。
速くなったね……。
でも、次は負けない」
――そう言いながら
葵に、握手を求め、2人はガッチリ握手をした。
――次はまたレースで。
「リキ君。掲示板見に行こうよ?」
うん。もう出てるかな?
――雪山葵 18分36秒623人中19位
――大山リキ 18分40秒 623人中22位
――前田アキ 18分48秒 623人中26位
――葵は女子の部で1位だった。
葵、速いな!
俺は、課題も沢山見えたけど、
初めての大会楽しかったよ。
葵また出ような。
「そうだね。リキくん。また出よっか笑」
「今日、良い走りができたのも、
リキ君が近くにいてくれたから、
安心できた。だから、リキ君。ありがとう」
――葵は心からリキに感謝した。
いや、こっちこそ。いつもありがとね。
「あっ!そうだ。リキ君。
帰る雰囲気になってるけど、10kmも、
走るんでしょ?」
――リキは急いでスタート地点に行った。
――5kmの疲れもあったが、
粘りの走りで、10kmを42分で走り切った。
「リキ君。お疲れ様。
最後、本当にキツそうだったね」
うん。5kmの後に、10kmはキツイね。
でも、これが成長に繋がる気がする。
俺はもっと強くなれる。
「うん。リキ君はもっと速くなる。
そして私も、負けない、一緒に成長しよう」
そうだね。今日は負けたけど、次は勝ってみせる。
「負けた?」
「あっ!そう言えば」
うん?どうしたの?
「私が勝ったら、1つ言う事きいて貰うんだったね」
――リキ君。私のお願いは……