「本物」のランナー。
――いよいよ本日は、月例マラソンだ。
――朝の7時30分に、リキの家の前に集合だ。
「リキくん。おはよう」
――葵がいつもの明るい声で、声をかけて来た。
葵、おはよう。いよいよだね。
「そうだね。今日は、リキ君にも、
アヤちゃんにも負けない!」
「約束覚えてるよね?
私が勝ったら、1つ言う事を聞いてもらうから」
それは、葵が勝手に言ってるだけだろ?笑
でも良いよ。どーせ俺が勝つし。
「なにそれ。腹立つー。絶対負けないんだから」
――そして2人は笑った。
――会場までは、歩きで15分位だ。
「それじゃあ、行こっか」
そうだね。
――歩きながら葵と話した。
「リキ君、今日は初めての大会だけど、
緊張してる?」
うん。緊張してるよ。でも、こんな気持ちは初めて。
凄い楽しみだし、やってやろうって感じ。
「流石リキ君だね」
「私、大会とかだと、いつも通り走れない事も、
多いけれど、今日は何だか、上手く走れる気がする」
――会場に到着した。
「うわー。今日も凄い人だねー。
とりあえず、ブルーシートに、荷物置いとこう」
「リキ君は、初めてだから、登録受付しないとね。
私も、エントリー料金払うから、一緒に行こう」
――葵に言われた通り、リキは、受付に向かった。
紙に、書かれている項目に、
チェックを入れて、
初回の、エントリー料金を払い。
受付は完了した。
「あなたの、ゼッケン番号は、18065番ですねー。
これからは、このゼッケンを使って、
この大会に出て下さい」
ありがとうございます。
「良かったね。これで後は、走るだけだ」
「5kmは9時30分からのスタート。
10kmは、10時10分からだねー。
まだ、8時前だから少し時間あるね」
そっか。後、1時間と少しで、スタートか。
緊張してきたー。
「大丈夫だよ。リキくんなら、
あっ!そうだ。今の内にゼッケンつけときな!」
分かった。
――ブルーシートに、荷物を置き、
ゼッケンを付けている時。
「あれ、葵、久しぶりじゃん」
――長身の、黒髪、ロングヘアーの、
女性が葵に声をかけて来た。
「アヤ久しぶり」
「あっ!こちら陸上部の同級生の、大山リキ君。
この子が、この前言ってた、前田アヤね」
初めまして、前田アヤです。
――そう言うと、アヤは、葵の顔をみて、
ニヤリと笑ってこう言った。
「もしかして彼氏さん?」
――葵は驚き、顔を赤くした。
「ちっ……違うよ。今はまだ、そんな関係じゃない」
へぇー。「今は」って、事は、結構、意識してるんだ。
「やめてよ。リキくんの前でそんな話」
「怒るよ……?」
――そう言うと、葵の表情は険しくなった。
ごめんごめん。冗談でしょ?
もー。昔から変わってないなー。
今日も、私が勝つからね。
あなたには負ける気がしない。
――アヤは宣戦布告した。
「あなたには、確かに負け続けて来たけど、
今までの私とは、違うって所見せつけてやる」
――そう言うと2人は睨み合った。
――リキはそのやり取りを、見て震え上がった。
おーい。アヤ何してんだよ。
――1人の男がやってきた。
おい。顧問が呼んでるぞ?
「あっ!天空」
この子紹介するね。
「剣川天空って、言うの。
今年は、2年生だけどもう、
3000mの標準記録を突破して、全国を決めてる。
勝手に説明するなよ……
ほら行くぞ。
――天空は、頭を下げると、アヤを引っ張って行った
全国って凄いね。全国大会とかはいつ頃あるの?
「8月にあるね。標準記録を突破したら、
出れるんだけど、まだウチのチームは誰も、
決まってないね」
そっか。その中で、
全国大会出るなんて、
本当、凄いランナーなんだろうな。
「うん。本物のランナーだよ。
3kmは、9時からだからだから、
アップもしないと行けないし、見れないね」
――時間が経つまでは、ゼッケンをつけたり、
葵と話をして、時間を過ごした。
「もう、8時50分位だね。少しアップしとかない?
私、レース前は、20分位、ゆっくり走るんだけど、
良いかな?」
20分もアップするの?
「うん。20分位走ると、体もかなり温まるし、
何より集中モードに切り替えられて良いから」
分かった。
――今日のレースのコースは河川敷なので、
河川敷を走ってアップする事にした、
「9時からはレース始まるし、
逆走して、戻って、それを繰り返そう」
了解。
そして、アップも完了し、
会場に戻ると、
3kmは、既に続々と選手が、ゴールしていた。
――掲示板に行き、紙に書いてあるタイムを見ると、
剣川天空の名前があった。
「一位、剣川天空。タイムは、8分52秒」
――3000mは、9分で走れたら、
県でもトップレベルだ。
それなのに2年の6月でこのタイムは、
既に、全国でも、トップクラスの実力だ。
「凄い。世の中にはこんな凄い人がいるんだ」
「でも俺だって、来年には追い越してやる」
リキくん。そろそろ10分前だよ。
スタート地点に並ぼう。
――そして時間になった。
オンユアマーク! パーンーー!!!!
ピストルの音と共に、レースはスタートした。