「秘密の特訓」が始まる!!!
――月曜日。葵との、「秘密の特訓」の日がやってきた。
練習を終え、夕食を食べて終わってから、
20時に葵の家に集合となっていた。
そろそろ時間なのでリキは葵の家へ向かった。
LINEで「着いたよ」と連絡すると、
すぐに葵が出てきた。
「リキ君。こんばんは。とりあえず上がって」
「え、今から練習するんじゃ?」
「いいから」
――お母さん、リキ君が来たよー。
葵の声に反応してすぐに、玄関まで出てきた。
「あら、こんばんは。あなたがリキ君?」
「はい。そうです」
葵のお母さんは40歳位だろうか?
笑顔が印象的な優しそうなお母さんだ。
「いつも葵と仲良くして貰ったり、
今日も一緒に練習して貰ったり、ありがとうございます」
「お母さん、挨拶は良いからそろそろ行こうよ」
「そうだね葵」
「えっ。車使うの?」
「リキ君、今日は競技場のトラックで練習するから、
車で行くんだ」
リキ達3人は競技場まで、葵のお母さんの運転で向かった。
車内では、葵と、リキについての話題が多く、
葵のお母さんもどんどん質問もしてきて、
会話も多くできた。
「着いたね」
葵がそう言うと、車を降り、
荷物を持って、受付へ向かった。
中学生は50円になります。
付き添いの大人の方なら、無料で大丈夫です。
「50円って安い」
思わず、リキと葵は一緒に顔を見合わせて驚いた。
競技場に入るとアップを始め、
動的ストレッチと流しをしていざスタートだ。
「そうだと葵、今日の練習メニューってどうする?」
「うん。1kmを全力に近いペースで2本」
「その後に、2kmを、1km3分20秒ペースを目標に2本走る予定」
「後、今日はレペだから、2kmは400Mで繋ぐけど」
――レペとは設定の距離を、全力か全力に近いペースで走り、
一定時間完全に休息を入れて、
また、同じペースで走る練習である。
「じゃあ、走ろっか」
「うん」
――それじゃあ1本目スタートします。
葵のお母さんの掛け声と共に2人はスタートした。
「葵の1kmのベストは3分8秒」
「なので3分10秒を狙う」
リキが前を引っ張り、葵も付いていく。
400の通過が76秒。
丁度、3分10秒ペースと良い感じだ。
600Mを通過しラスト一周。
葵が前に出る。
「レペは完全休息取れる。追い込まないと」
葵はスピードを上げそのまま1本目を終えた。
3分09秒!
「じゃあ、5分休憩しよっか」
「おう」
完全休息が取れると言っても、
座ったりすると動けなくなるので、
歩きながら休む事も多い。
「葵、良い感じだな」
「引っ張って貰えると追い込めるから助かる」
――二本目行きます。
二本目は何と、葵がスタートから前に出た。
「何!?」
リキは驚いた。
「おい。飛ばし過ぎだ」
400Mの通過が、74秒。
しかし葵のスピードは落ちない。
「辛いけれど、肺はきついけれど、ここからが大切。
腕を振れ、足を動かせ、笑え、楽しめ」
葵は笑いながら走った。
ラスト400M、ここでリキが前に出る。
何もリキは言わなかったが、
「おい!葵、付いて来い」
そう言っているようだった。
「ここで離れない。辛いけれど後400も無い。付いてく」
葵は懸命に力を出した。
少し最後はリキから離れるものの、
3分08秒と自己ベストと同じタイムで走り切った。
「葵、お疲れ」
「リキ君ありがとう。でもまだ2kmも残ってるから」
5分休憩を入れると、2kmがスタートした。
リキが前を引っ張り、葵も付いていく。
一本目は設定通り、6分40秒で走り切った。
ここから400Mで繋ぐ。
「このペースで走って400Mの繋ぎはきついな」
息が完全に整わない状態で二本目がスタート。
リキがまた前を引っ張り、葵も付いていく。
しかし徐々に疲れが見え始め、葵が600M程から離れる。
「葵こっからだぞ。疲れても気持ちは切らすな!」
――こっから負けたくない。
「いつも弱い自分に負けていた。殻を破るには今しか無い」
葵は腕を振った。
リキには付いては行けない。
しかし葵の目はまだ死んでいない。
葵の1kmの通過は3分25秒と少し遅れた。
「少しペースは落ちたけれどここから、
設定よりは遅くなっても、最低でもペースを維持する」
葵は前だけを向いた。
「辛い。辞めたい。肺も限界。足もガクガク」
「だけど。だけど」
葵は走り続けた。
ラスト400M。
「今日の練習はこれが最後」
「力を出し切れ」
葵はより気合いを入れた。
「やばい」
「死にそう」
だけど、葵は走った。
ラスト200M。
「腕は重いし、足も動かない。だけど切り替えろ」
葵は一気に切り替えてスピードを上げた。
「負けない。負けない。負けない」
そして葵はゴールした。
6分47秒。
「葵、設定こそ超えたけど、最後も気持ちの入った、
良い走りだったよ」
「ありがとう」
葵の表情には充実感が漂っていた。
「ただ悔しいね。もっと強くなりたい」
葵はまた前を向いた。




