金子の過去があきらかに!葵の面談。
「大した選手じゃ無かったんだ」
―――金子はこの一言から話し出した。
「小3からサッカーをやってて、良く走ったりしてて、
学校でも走る事は1番だったから、
中学では陸上部に入って、
そこで長距離走を始めた」
「練習は休まずやってたし、自主練もしてた。
でも、練習では上手く走れても本番では、
結果を出さなかったんだな。
力んでしまって、ペースを上げ過ぎてしまったり、
力が入り過ぎて上手くいかなかった」
「監督や周りの冷ややかな目線や、
頑張っても結果を出せないしんどさ。
自分への情け無さで、とてもしんどかった」
「俺は大学卒業まで長距離走をやってたけど、
大会じゃ活躍する事も無かったし、
ダメダメなランナーだったんだよな」
―――リキは初めて知らされた、金子の過去に驚いた。
そう言えば葵に似てるな。
―――思わずリキは声に出してしまった。
「葵?」
いえ、何でも。
「そうだな。確かに葵と同じかもな。
あいつもこの前の地区大会じゃ、
いつもの走りをできなかったしな」
でも、葵の実力は本物ですよ。
「あぁ、それは知ってる。だから県大会でも、
葵にはエースを任せようと思っている」
―――金子は葵を信頼していた。
「そうだリキ、最後の質問だが、
お前はどんなランナーになりたい?」
誰にも負けないランナーです。
―――リキは即答した。
「誰にも負けないって事は、
あの剣川にも、負けないって事だよな?」
そうです。今年は叶わなくても、
来年は、絶対追い越してやる。
そして、全国で1番のランナーになりたい。
いや、なります。
「リキ、お前は凄い奴だな。
お前ならできる。いや、一緒に叶えよう」
はい!
―――リキは金子と握手をした。
「じゃ、リキ戻っていいぞ」
「練習は明後日から再開だ」
はい!!!
―――リキは金子と距離が、
縮んだような気がして、嬉しかった。
「さて、帰るか」
―――リキは帰りながら考え事をしていた。
「最初は陸上は中学までだと思ってきたけど、
どんどん成長する事が楽しいし、
自分自身が、どこまでできるかをもっと、
試したくなってきた」
「確かに、起業して社長になりたくて、勉強を始めたし、
その目標が無くなった訳じゃ無い」
「でも、好きな事で稼いで生活できたら最高だよな」
―――リキは来年、3年生と言う事もあり、
少しづつ進路についても考え始めている。
「俺はどんな風に生きたいんだろう」
―――翌日、金曜日。県大会まで後28日。
この日は葵が、面談だ。
「よしっ!じゃあ、次は雪山葵、入ってくれ。
はい。
―――面談が始まった。
―――リキの時と同じく色々話をし、
最後の質問の時間になった。
「なぁ、葵。最後に1つ質問いいか?」
はい。
「どうしたら本番で結果を出せると思う?」
自分自身を信じる事です。
今までやってきた事を信じて、
自分を見失わず、走る事。
それができたら結果も出るはずです。
―――葵は即答した。
「でも、中々結果が出せてないよな。
俺も現役の頃は、全然結果を出さず苦しんだ。
練習や自主練習を頑張っても、
結果を出せないのって辛いよな」
はい。でもそんな自分を変えたいんです。
走っていると出てくる、弱い自分。
負けそうな時に、そこでいかに踏ん張って、
前を向けるか。その力を鍛えていかなきゃ、
私はこのままです。
「そうだな。でも走ってる時は確かに1人だ。
でもクサイかも知れないけど、
仲間の支えがあるからこそ、
葵も走れるんだよな。
葵は自分自身の事で、一杯一杯に、なってるんじゃ無いか?」
確かに……
走ってる時もチームの事を考えてるつもりで、
自分自身の事ばかり考えてました。
「もっと練習の時みたいにリラックスして、
走れると良いかもな。
練習の時は仲間がいるから、
どこかでリラックスできてたんだな」
確かに。
「なぁ、葵、走る事は楽しいか?」
―――楽しいか。あまり考えても見なかった。
走るのは大好きです。でも楽しいと言ったら分からない。
勿論、楽しいと感じる時もあるし、
結果が出ると達成感もある。
でも、ダメな時、結果が出せない時、
自分のやってきた事を、
否定された気分になって、しんどくなります。
「その気持ちは良く分かる。俺もそうだった。
でも、練習では結果を出せてるのに。
何故、本番だと上手く走れないんだと思う?」
それは多分、結果を意識し過ぎて、
力んだり、力が入ったりしてしまうから。
結局、頭で色々考え過ぎてるのかも。
「確かにな。それじゃあ県大会まで、
葵に課題を2つ与える」
2つ?
「そうだ。1つは走る事を楽しむ事。
そして2つ目はペース配分を意識して、
ペースの感覚をつける事だ」
「この2つが身に付けば、実際のレースでも、
結果を出せる可能性が高くなる」
はい。
―――楽しむ事か。考えても見なかったな。
監督ありがとうございます。
何だか県大会では良い走りができそうな、
予感がしてきました。
―――葵はいつもの笑顔で笑った。
「良い笑顔だ。葵の力は皆が認めている。
後は殻を破れるかどうかだな」
はい!先生。
―――県大会まで28日。葵は変わる事ができるのか!?




