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自称インキャぼっちは悩みの数だけ彼女がいるようです  作者: 史本 会
自称インキャは後輩女優に翻弄されているようです
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心の支え


「あの先輩」


「・・・」


「先輩!?」


「・・・」


「先輩ってば!」


「ん、あぁ悪いボーッとしてた」


「全くしっかりしてください先輩!」


「ごめんごめん」



俺の元気のなさに気づいたのか顔を近づけて俺の顔を見てきた。



「先輩何かあったんですか?なんか顔色悪いですけど」


「いや、なんでもないよ。ちょっと寝不足なだけ」



家族の件で戸惑いなどの精神的にくる部分はあったが、朝早く起きたせいで睡眠不足なのも間違いない。



「そうですか・・・でも先輩に何かあってからでは遅いので、私に相談してくださいね!」



寝不足という嘘は見抜かれていたらしい。演技を長年してきた百合子にとって俺の嘘くらいは見抜いていた。



「相談かぁ・・・」



小さく呟いたその声は風に流され百合子に届く前に消えていった。


そして2人とも黙り込んだ。



本当ならここで俺から相談をして静寂を断たなくてはいけないのだろう。

しかし今の俺にそんな強靭なメンタルはなかった。”自分のことは自分でなんとかしなくてはいけない”そう思っているのだ。



「あの先輩」



俺が黙り込んだ結果静寂を断ったのは百合子。



「今はいいですけど、終わったら話してくださいね」



百合子の言葉は色々抜けていた。具体的な質問をしたら、気まずくなってしまう。それが分かっているのだろう。



「あぁ終わったら話す」



俺も一言だけ返事をした。主語が抜けたこの会話は学校に着くまでは続かず、それっきりそのことについては百合子は触れてはこなかった。



先程の会話からしばらくして学校が見えてきた。歩き慣れたこの道も今日は少しだけ長く感じる。それでも隣に百合子がいて、学校につけば友達だっている。


昔はいなかった友達が今はいる。家族が家族でなかった今、友達との日常が続くことを俺は心の底から願った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「先輩また後で!」



そう言って階段を上って行った百合子を見送り、自分の教室に向かう。


長い廊下の突き当たり、それが俺の教室だ。



「おはようございます」



入ってすぐ、真っ先に声をかけてくれたのは鮫島さんだった。本当にこの人は優しいし、可愛いし、まじ天使!


けれど今日の俺は返すだけの挨拶も手を少し上げて済ました。


自分の席に座ってからうつ伏せになり眠りについた。


とても静かで、あたりは真っ暗。だけどそれが嫌じゃなかった。それはきっと・・・。



「ヨコッチ、ヨコッチ!ヨコッチ!!」



久々にそんな呼ばれ方をした。こんな風に呼ぶのは誰だっけ・・・?



目を開けてゆっくりと前を向いた俺の前には元気いっぱいの満面の笑みでこちらを見ている女子高生がいた。



「誰ですか・・・?」



急に目を開けたせいか、あたりがチカチカして顔がよく見えない。



「あのねヨコッチ。私がいなかったからって落ち込みすぎ!そんなに私に会いたかった?」



あぁこの声を俺は知っている。確かこいつはいつも前向きで明るくて、でも少し不器用なところがあって笑顔が可愛くて、素直じゃなくて、大きな事故に巻き込まれて、病院送りになってそれでも笑顔を絶やさなくてなんだかんだ優しくて・・・そんで俺のことを好きになってくれた人。


寝ぼけた目をこすり一人の名前を呼んだ。



「いろり?」


「そうだよバカッチ」



そのあだ名は聞いたことはないが、何が言いたいのかは伝わった。



「久しぶりいろり」


「うん、久しぶりヨコッチ」


「頭平気なのか?」


「なんかその言い方だといろんな意味が含まれてそうだけど、大丈夫だよ!」


「そっか、なら良かった」


「全くヨコッチって私がいないとこんなんになっちゃうの!?」


「いや、そんなわけないだろ。それに俺は元気だしな」



いろりのテンションに流され、俺も無理やりテンションを上げた。



「はいはい」


いろりはそれを適当に流したが、心配そうな表情で俺を見ていた。無理やり作った元気は見抜かれていたらしい。


百合子といい、いろりといい俺の嘘は簡単にバレている。俺の嘘が下手なのだと、ここに来て自分の性格に新発見をもたらした。

なにせ今まで嘘をつく相手もいなかったものでね。



「あっ!そうそう、今日から部活再開ね!」


「お、おう」



今は家に帰るのが一番怖い。だから部活があって心の底から良かったと始めて思った。



「鮫島さんも大丈夫そう?」


「はい、問題ありません」


「僕もいけるよー!」


「あんたは来なくてもいいけどね」


「なんでひどい」



唐突に現れた峯崎はいろりによって粉砕される。そんなやりとを見て少しだけ笑顔がこぼれた。


学校って楽しいな・・・。



「後半くん、何を笑っているのかしら」


野生の淵野先輩が現れた。

野生の淵野先輩の罵倒。

横田健二には効果がないようだ。


なんてあるゲームに例えて想像し、また笑顔がこぼれた。



「ヨコッチ何笑ってんの?きもーい」


「お前、キモいとは失礼な!」


「そうよ佐倉さん、後輩くんは既に”キモい”なんて一言では収まらないわ!」


「全くフォローになってません!」


「そうだよ、横田くんはそんなんじゃ収まらないよ!」


「お前は何を言ってるんだよ!」


「大丈夫ですよ。横田さんはきもくないですよ」


「ですよね!」


「はい、ちょっと変なだけです」


「鮫島さん・・・」



ツッコミを入れすぎて疲れてきた。でもこんな会話が楽しい。2ヶ月前まで無かったものが今はある。俺の周りには友達がいる。今の俺の心の支えになってくれてる。


みんなありがとう。本当に!そして鮫島さんまじ可愛い!!


そうしてこのクラスにはいろりが戻ってきて、少し前の雰囲気が戻ってきた。



ホームルームでもそのことを先生が説明し、いろりは今日から学校に復帰した。良かった本当に!


毎時間喋って喋って喋りまくった。

さらに昼休みになっても会話は止まらない。約1ヶ月弱話せなかったことを思う存分発散している感じだった。

と、いきなり話の内容が変わる。


「ねぇヨコッチ、あの子誰?」



いろりの目線が俺から廊下に移った。

俺もそれを振り返るようにして見る。


そこにはドアから顔だけ出した百合子がいた。


「誰って園田百合子じゃないか」


「あーあの子か」


こいつ部活の初の依頼人の顔を忘れていたらしい。


「お前なぁ」


「ヨコッチ、まだ付き合ってるの?」


「えっ!?」



突然振られた質問に対して言葉が詰まる。


「付き合ってますよ!」



と、いつのまに教室に入ったのかいろりの質問に百合子が答えた。



「へーまだ付き合ってるの」


「はい!」



おいおい、どういう状況だ。二人とも目が怖いし口調がきつい!


「あのお二人さん?」


「ヨコッチはちょっと黙ってて!」

「先輩は黙ってて下さい!」



どうやら二人の息はぴったりらしい。



「は、はい」



一言だけ返事をして二人の会話をしばらく眺めていた。


そうか、修羅場か!修羅場なのか!




大変だな俺!!と苦笑いをしながら思うのだった。






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